江戸城と町割り
「わーい、この両国国技館の隣の建物が『江戸博』だね。常設展示室は5階と6階で、そこに資料がぎっしり詰まっているよ。今日はリニューアルした展示を中心に見ていこうよ」
「了解! 最初は『江戸ゾーン』だね。わっ、いきなり昔の日本橋の実物大模型が現れた! これは橋の北側半分の復元で、天井近くのスクリーンに、刻々と変わる空の映像が投影されるようになったんだ。すてきな演出ね」
「日本橋を渡った先には、白いのれんが下がっているよ。くぐってみると…、おーっ、江戸城、大名屋敷、商人や職人といった町人が居住した町人地の縮尺模型だ! これらは配置を変えて、以前より見やすくしたんだって」
「大名屋敷と町人地は、人口密度の差がすごいなあ。どちらの模型も年代は17世紀半ば、縮尺は30分の1だけど、町人は大名屋敷1軒分の面積に、ひしめき合って住んでいたんだね」
鳥居モチーフのモニュメントを新設
JR「両国」駅から江戸博へと続く西側アプローチには、新たに鳥居をモチーフにしたモニュメントが設置されたんだ。これらはただの鳥居ではなく、側面のLEDパネルに現代の東京から江戸へと時代をさかのぼるイメージ映像が投影されるんだ。ここを通れば、タイムトンネルをくぐるような気分が味わえるよ。
町の暮らし
「今度は庶民の生活についてだよ。あ、『時の鐘』だ。時計というものが普及していなかった昔は、こうした鐘を鳴らして、みんなに時刻を知らせていたのね」
「こちらは、江戸時代のアパートともいえる棟割長屋の復元模型だ。角の四畳半の部屋だけは、リニューアルして中に入れるようになったのか。部屋には収納もないし、庶民は本当に狭いところで暮らしていたんだね」
「町には行商人が行き交っていて、長屋にも売りに来たのね。この行商のコーナーには、アサガオ売りが追加されたの? なるほど、当時は園芸ブームで、花売りも多かったんだ」
「リヤカーのような木製の荷車『大八車』もあるよ。米俵や酒樽など、重いものはこれで運んだんだね」
出版と情報
「江戸時代は大きな戦争や内乱がほとんどなくて平和だったから娯楽が増え、読み書きを習うようになって、いろいろな書物が出版されたんだ。これは大衆向けの書店ともいえる絵草紙屋の復元だね。歌舞伎役者や力士の錦絵(木版画)が並んでいるよ」
「錦絵ってカラフルで、ポスターみたい。高い印刷技術があったことがわかるね」
「あれは屋台の復元模型だね。館内には以前からすしの屋台とそばの屋台があって、今回は天ぷらの屋台が加わったんだって」
「天ぷらが当時は手軽なファストフードだったなんて意外だよね」
江戸の四季と盛り場
「見て、江戸を代表する盛り場の一つ、両国橋の西詰(中央区側)の縮尺模型だ! これも以前とは配置を変えて、360度どこからでも見られるようになったんだね」
「両国橋の模型には、表情豊かな人形が約1500体も飾ってあるよ。季節の設定は夏で、隅田川には花火見物の船なども浮かんでいる」
「この巨大な復元模型は、今でも盛大に行われる神田祭の山車だね。昔の祭列の様子は、300体の人形を使った縮尺模型で再現しているよ」
芝居と遊里
「江戸時代の娯楽といえば、歌舞伎も大人気。これは芝居小屋『中村座』の正面部分の復元だね。『内部を見たい』という来場者の声に応えて、中に通路が作られたんだ」
「細い通路を進むと…。あ、効果音用の楽器『鳴り物』の紹介だ。こういう太鼓や鉦などを使って、舞台を盛り上げていたんだね」
「芝居小屋の構造については縮尺模型でも確認できるよ。廻し舞台の床を回転させるときは、床下で裏方さんが装置を動かしたんだね。かなりの力仕事だ」
「わあ、有名な歌舞伎の演目『助六』をイメージした展示だ! 舞台上に等身大の役者の人形が飾られているよ」
文明開化東京
「ここから先は『東京ゾーン』だ。この『服部時計店』の復元模型も新展示。改修前にあった『朝野新聞社』を作り替えたもので、今の銀座4丁目の商業施設『和光』の昔の姿なんだって」
「服部時計店下の展示テーマは『文明開化』だね。これは明治政府が整備した『銀座煉瓦街』の縮尺模型。当時の記録をもとに、銀座界隈で起こった事件を再現して、模型にちりばめているんだって」
「あら? 床下にも明治時代の社交場『鹿鳴館』の縮尺模型が設置されているんだね。あっ、人形たちが踊り出した! これは楽しい仕掛けだなあ」
「行灯、石油ランプ、電灯の明るさの比較展示もおもしろいな。西洋化が進んだこの時代、日本人の生活は本当に大きく変わったんだね」
市民文化と娯楽
「浅草にある日本最古の遊園地『花やしき』は、明治中期から昭和初期まで動物園でもあったのか。これは新たに復元した動物園時代の門なんだ」
「わっ、門のそばの檻の中には、トラの模型が入っているよ。このころは猛獣を飼育している施設は珍しかったから、花やしきには毎日たくさんの人が詰めかけたんだね」
「浅草は当時の娯楽の中心地で、ほかにもさまざまな施設があったんだ。この模型は『凌雲閣』。『浅草十二階』と呼ばれた、高さ約60m、12階建ての八角柱のレンガ造りの展望塔だけど、関東大震災で倒れてしまったんだね」
「電気館は1903年にオープンした日本初の常設映画館だよ。この時代の映画はまだ無声だったから、人々は舞台のそでで登場人物のセリフや状況説明をする活動弁士の語り(解説)を聞きながら物語を追ったんだって」
モダン東京
「関東大震災後の東京には、西洋風の建物が増えたのね。『同潤会代官山アパートメント』もその一つ。鉄筋コンクリートの復興集合住宅で、ここにあるのは新しくつくられたものなんだ」
「室内は昭和前期をイメージしたもの。畳敷きでちゃぶ台や和ダンスなどのほか、椅子とローテーブルも置いてあるよ。当時の暮らしぶりがわかるね」
「こっちの『円太郎バス』も新展示だよ。これは関東大震災で壊れて使えなくなった路面電車の代わりに導入された、日本最古の公営乗合バスの実物なんだね」
「わずか11人乗りの急造バスだったけど、円太郎バスは復興期の東京で大活躍。現在の都営バスの源流になったということで、2020年に国の重要文化財に指定されたんだ」
現代の東京
「最後は『現代』のコーナーだ。ここはいわば立体年表。「高度経済成長期」といわれた1960年代から10年ごとにブースを設けて、社会の動きや流行したものなどを、実物資料を交えて紹介しているぞ」
「今回のリニューアルで2010年代のブースを追加したのね。この年代の出来事として、スマートフォンの普及やハロウィンの定着などに触れているよ」
「どのブースにも学校給食のサンプルや地下鉄の路線図などが展示されている。給食は彩りもよくなったし、地下鉄はどんどん広がっていった。時代の変化がよくわかるな」
「左端のブースは空っぽだ。あと5年もすれば、ここに2020年代の資料が加わるんだね。どんな展示になるのか楽しみ!」
見学を終えて…
「すごいね、ここはまるでタイムトラベルの基地みたい! 館内には原寸大の建物の模型がずらりと並んでいたじゃない。縮尺模型や実物資料もたくさんあったし、本当に昔の町を歩いている気分になれてわくわくしたよ」
「ぼくもだよ。それから要所要所に体験展示が置いてあって、それで自由に遊べたのもよかったよね。千両箱を持ち上げたり、大名駕籠に乗り込んだりできて。とにかくここは広いし、いろいろなコーナーがあって、何時間いても飽きなかったよ」
「『江戸東京博物館』は東京都の施設でね。開館したのは1993年だけど、2022年から大規模なリニューアル工事に入って、この3月31日に再出発したばかりなんだ。展示品や装飾品、モニュメントの追加はもちろん、バリアフリー化や図書館の改修なども行われて、より充実した施設に生まれ変わったんだ」
「そういえば3階の『江戸東京ひろば』は、日が沈むと収蔵品のイメージ映像を投影するようになったんでしょ? 次は夕方に来て、それも見てみたいな」
「そうだね。ちなみに館内のレストランとカフェも改修されて、江戸博ならではのメニューも食べられるんだけど…。どう? 寄ってみるかい?」
「もちろん! あとは1階のミュージアムショップものぞこうよ。お土産も買いたいもん」
ミュージアム・ラボ
展示室の一角には「体感・体験」用のラボも設けてあるんだ。こちらは二つのスペースに分かれていて、一つは大正時代に建てられ、1937年に改築された一般住宅の移築・復元。もう一つはワークショップなどを行う空間だよ。貴重な体験ができるから、このコーナーも忘れずにチェックしてね。
リニューアル記念特別展
「洋館 明治の夢と挑戦」8/23(日)まで開催
現在、1階の特別展示室では、「明治の洋館」をテーマにした特別展を開催中。大工の棟梁が手掛けた擬洋風建築、外国人建築家による本格的西洋建築など、さまざまなタイプの日本の洋館を、貴重な資料とともに取り上げているんだ。8月23日までの開催なので、見たい人はお早めに。
INFORMATION
東京都江戸東京博物館
●開館時間
9:30 ~ 17:30(土曜日は9:30 ~ 19:30)
※入館は閉館の30分前まで
●休館日
毎週月曜日(祝日または振替休日の場合は翌日休)、年末年始
●常設展観覧料
一般800円、65歳以上400円、大学生480円、高校生300円、中学生以下無料
※特別展は別途料金がかかります
所在地:東京都墨田区横網1-4-1
TEL:03-3626-9974
H P:www.edo-tokyo-museum.or.jp
交 通:JR総武線「両国」駅西口から徒歩3分、東口から徒歩7分、都営大江戸線「両国」駅A3・A4出口から徒歩1分