おしえてピグマはかせ
「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回は、日本人が大好きなマグロのお話です。世界中の海に広く生息するマグロは大型の回遊魚。休むことなく常に泳ぎ続けるといわれます。なぜ泳ぎ続けるのでしょうか。
マグロはどうして泳ぎ続けるの?
泳ぎをやめると呼吸が止まる!?
昨日、デパートでマグロの解体ショーを見たよ。マグロってすごく大きいんだね。 | ||
わたしも見たことがある。あんなに大きい魚が群れで泳いでいるなんてすごい! | ||
マグロは回遊魚だからね。種類にもよるけど、移動範囲が広く、クロマグロなどは日本沿岸から太平洋を横断してアメリカ西海岸まで回遊するんだよ。 | ||
回遊魚ってどういう魚なの? | ||
季節や成長に応じて、餌や産卵の場所を探しながら、広い範囲のほぼ一定の経路を移動する魚だよ。マグロのほかには、カツオやアジ、サバ、サンマなども回遊魚だよ。 | ||
マグロって、泳ぐのをやめると死んじゃうって聞いたことがあるよ。 | ||
すぐに死ぬわけではないけど、止まると呼吸ができなくなるのは本当だよ。魚は人間と違ってえらで呼吸するよね。えらをぱたぱた動かして、口からえらに海水を通し、水に溶けている酸素を吸収しているんだ。多くの魚は筋肉を使ってえらを動かすけど、マグロにはえらを動かす筋肉がないから、口を開けて泳ぎ、そこから勢いよく入ってきた海水をえらに当てて、溶けている酸素を取り込んでいるよ。 | ||
じっとしていたら、酸素を取り込めないってことか。だから泳ぎ続けるんだね。 | ||
泳ぎ続けていないと沈んでしまうという理由もあるようだよ。マグロのからだは密度が高く、海水と比べて比重が大きいんだ。それに浮袋もあまり発達していないからね。 |
疲れない体力の秘密は筋肉にある
夜も寝ないでずっと泳いでいるんでしょう。疲れないのかしら。 | ||
普通の魚は夜になると、岩陰のような目立たないところに入って眠るんだ。マグロはじっとしていることはできないけれど、眠らないわけにはいかないから、少しスピードを落として、泳ぎながら睡眠をとっているといわれているよ。それができるくらいだから、マグロは泳ぐのが大得意。種類にもよるけど、最大速度は時速80㎞に達するそうだよ。 | ||
高速道路を走る車ぐらいのスピードだね。 | ||
そういうからだのつくりをしているからね。流線形の泳ぎやすい形になっているのも一つの理由だけど、ひれにも秘密があるよ。背びれも、胸びれ、腹びれも、からだにある溝やくぼみに収納できるんだ。ひれが外に出っ張っていなければ、その分、水から受ける抵抗が少なくなって、泳ぎやすくなるよね。 | ||
ひれを出したりしまったりできるのは便利ね。 | ||
運動能力が落ちないようにする工夫もあるんだ。魚は変温動物で、普通は周囲の水温と同じくらいの体温になるけど、マグロは高い体温を保てるよ。魚には「血合筋」という、長く泳ぐときに使われる筋肉がある。マグロは、ここにある「奇網」という組織が発達しているよ。奇網は動脈と静脈が接している部分。そのはたらきで、海水で冷やされた血が流れる動脈と、運動で温められた血が流れる静脈がスムーズに熱交換を行い、体温を海水より高く保てるんだ。そうすると、筋肉が活動しやすくなって、高い運動能力が保てるよね。 | ||
「血合」って魚の皮の近くにある黒っぽいところだよね。焼き魚にもあるよ。 | ||
そうだね。血管が集まっているから黒っぽく見えるんだ。マグロの筋肉そのものにも特徴があるよ。泳ぎ続けるには大量のエネルギーが必要で、そのためには大量の酸素が必要だよね。マグロの筋肉は、酸素を蓄える色素たんぱく質「ミオグロビン」を多く含んでいる。それが、マグロのような赤身の魚の特徴だよ。 | ||
「赤身の魚」「白身の魚」ってよく聞くけど、じゃあ赤身の魚のほうが、白身の魚より筋肉をよく動かすってことなの? | ||
ヒラメやタイなどの白身の魚の多くは、岩の間や砂の中などにすんでいて、長い時間泳ぎ続けることはないんだ。多くの酸素を必要としない分、筋肉中に含まれるミオグロビンが少ないから、身が白いんだよ。 | ||
魚の身の色にはそういう理由があったんだ。 | ||
一般に赤身の魚は長時間泳ぐのに適した筋肉を多く持っていて、白身の魚は餌をとるときや敵から逃げるときに素早く動くのに役立つ筋肉を多く持っているんだ。 |
●魚の呼吸の仕方
保護者の方へ
マグロが外洋を広範囲に泳ぎ続けられる理由の一つは、高い体温を保つ機能があることです。このため、捕獲するときは、逆に体温が上がり過ぎないよう、漁師さんたちは最大限の注意を払います。暴れ回って体温が上がると、筋肉がお湯を掛けたような状態に変質してしまうからです。これを「焼け」といいます。焼けてしまうと身はぱさぱさになり、お刺し身にもできないほど品質が落ちてしまいます。ふだん何げなく食べている魚にも、生態による特性があり、そのための漁獲や保存の苦労があることがわかります。
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