受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2025年7月のBooks

 Booksコーナーでは、小学校低学年から高学年までを対象とした読み物や、保護者の方向けの図書を、新刊中心に紹介しています。学習の合間などに、ぜひ読んでみてください。

『僕たちは我慢している』

  • 藤岡陽子=作

  • COMPASS=刊

  • 定価=1,980円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

「今がんばらないと後悔する」 彼らは自分で決意し 未来に向けて歩き出した

注目の一冊

 私立の名門中高一貫校に通う道人は、中学では野球部のエースでした。高校でも野球を続けるつもりでしたが、父が白血病で入院したため、学費の安い国立大学をめざして勉強に専念することにします。中学からの野球部の仲間、英進と揮一は高校でも野球を続けていましたが、英進は総合病院の後継者として期待されているのに成績が悪く、医学部受験のために野球部をやめようと決意します。一方、揮一は、高3の夏まで野球を続けますが、引退後、目標を見失って勉強に集中できずにいました。そしてもう一人の主役、中学のころから勉強一筋で学年トップの香坂もまた、家族の事情を抱え進路に悩んでいました。
 大学受験に向けて歩き始めた難関校の高校生たち。それぞれが置かれた状況のなかで、家族や仲間の思いを背負いながら、何かをがまんしながら前に進もうとする姿を描きます。物語のなかで形を変え、人を変え何度も出てくるのは、「何のために学ぶのか」という問い掛けです。大学に行く意味を見いだせない揮一は香坂の知人に言われます。「私学の授業料を親に出してもらい、大学受験の塾にまで通っている。それを幸せと思えなければ何が幸せなのか。今がんばらないと後悔するぞ」と。
 将来を思って立ち止まっている人に向け、「先のことはこんなふうに考えればいいんだよ」と背中を押してくれる物語です。

まえとうしろ どんなくるま? 5
のうぎょうのくるま』

  • こわせ もりやす=作・絵

  • 偕成社=刊

  • 定価=1,540円(税込)

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

畑や田んぼではたらく かっこいい車が大集合

 車を前から見ただけでその役割がわかりますか。後ろからではどうですか。たとえば農作業をするトラクター。後ろは土を耕す機械、肥料をまく機械など、作業ごとに違う機械を付けるので、そのたびに姿が変わります。
 はたらく車の前から後ろから、そして横からじっくり見て楽しめるシリーズ、その5巻目は農業の車です。田植え機、ポテトハーベスタ、コンバインなど、農作業で活躍する車が大集合。どれも細部までていねいに描かれ、車がどのように仕事をするかがよくわかります。野菜作りやお米作りにも興味が湧いてきます。

『緑の葉っぱのパン』

  • 最上一平=文

  • 北見葉胡=絵

  • 新日本出版社=刊

  • 定価=1,760円(税込)

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

お父さん、約束だよ、 またパンを焼いてね

 女の子のお父さんは腕のいいパン職人でした。ところが夢をかなえてお店を持ったばかりのとき、爆撃にあってお店がなくなってしまいました。女の子とお母さんは、戦火を逃れて街を離れることになりましたが、お父さんは街に残ることにしました。「またパンを焼いてね」と約束して、女の子は見送りに来たお父さんと別れました。ところがその瞬間、思いもよらないことが起きました。
 パンを焼くときの幸せいっぱいの温かさと、砲撃を受けた街のぞっとするような冷たさ。平和への願いが強く伝わってくる絵本です。

『なんとかなる本
樹本図書館のコトバ使い④

  • 令丈ヒロ子=著

  • 浮雲宇一=絵

  • 講談社=刊

  • 定価=1,485円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

友だち関係のピンチは 「コトバの術」が解決!?

 カリンは合唱コンクールの練習が苦手。実行委員のチナが「みんなでがんばろう!」と言うたびにいらいら。ついに「チナはがんばろうって言い過ぎなんだよ!」と言って、クラスのみんなを敵に回します。悩むカリンの前に現れたのは奇妙な本。気がつくとカリンは不思議な図書館の中にいました。
 不思議な図書館の司書、ヨウヒが「コトバの術」で、子どもたちの悩みを解決します。とはいえ術で解決したかと思いきや、物語は二転三転。ことばの大切さ、難しさが伝わります。もやもやした悩みを抱える子どもたちが主役の4話を収録。

『もしもハチがいなくなったら?』

  • 横井智之=著

  • 岩波書店=刊

  • 定価=968円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

おいしい野菜や果物を 食べられるのは虫のおかげ

 リンゴ、スイカ、トマトなどの農作物のうち約75%は、昆虫などの動物が花粉を媒介することで生産されています。その仕事ぶりを金額に換算すると、地球全体で1年間に約33~82兆円もの価値があります。しかし、人口が増え続け、より多くの農作物が必要になるなか、作物の生産を支える昆虫は減少しています。
 本書では作物の生産に欠かせない昆虫の代表として、ハナバチに注目。その花粉の集め方や運び方、種類、作物とのかかわりなどを説明し、花粉を運ぶ「送粉者」の重要性と保全の取り組みの必要性を訴えます。

『「好き」を一生の「強み」に変える育て方』

  • 落合ひろみ/落合陽一=著

  • サンマーク出版=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:保護者向け

「楽しがる心」を育てる AI時代の子育てとは

 AI時代を生き抜くうえで重要なのは、「純粋に楽しみたい、という根源的な好奇心を育てること」だと語る落合陽一さん。一方、その母のひろみさんは子育てでは「やりたいようにさせたけれど、始めたら最後までやらせるようにした」と言います。
 本書はメディアアーティストで教育者でもある落合陽一さんと、海外企業でのキャリアを持つ母のひろみさんが、子どもの可能性の伸ばし方について語ります。勉強や受験、英語教育のほか、インターナショナルスクールや留学についてのアドバイスもあり、科学と実践に基づく説得力のある子育て書です。

『すごいゴミのはなし』

  • 滝沢秀一=文

  • Gakken=刊

  • 定価=1,430円(税込)

社会の一員として知っておこう ゴミの量、中身、捨て方 ゴミが映し出す社会のこと


白金台校校舎責任者

 燃えるゴミは、水分を絞って出さなくてはならないことを知っていますか。生ゴミに水分が残っていると臭いの発生源になるだけでなく、焼却する際に燃えにくく、より多くのエネルギーが必要になります。それだけ多くの二酸化炭素が排出され、多くの税金がかかるのです。わたしは水分を絞るべきであることは知ってはいましたが、きちんと実行できていませんでした。しかし、この本を読んでからは水分を絞るように気をつけています。
 この本は、お笑い芸人で現役のゴミの清掃員でもある著者が、今起きているゴミ問題について、回収エピソードを交えて楽しくわかりやすく説明しています。ゴミというと社会科では3Rやマイクロプラスチックなど、主に環境問題のテーマとして出てきます。この本にもそうした話が出てきて学習に役立ちます。それだけでなく、ゴミが散らばらないように袋の口をしばって出すなど、ゴミの出し方のマナーも重要なのだということにも気づかせてくれます。自分たちが出したゴミを清掃員が収集してくれます。清掃員がいなければゴミは街にあふれ、衛生状態も悪くなって病気の発生源になります。こういう仕事をしている人がいて社会が成り立っているのです。みんながそれを意識できるようになれば、一人ひとりの行動が少しずつ変わって、世の中も変わっていくのではないかと思います。
 実例や写真がたくさん紹介されているので、用語や年代を覚えることが苦手な人も、この本なら興味を持って読めると思います。ゴミを通して、今まで知らなかったいろいろなことに気づかせてくれる本です。

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