受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

第63回 学芸員

イメージ画像 今回はさまざまな博物館で活躍する学芸員の仕事を紹介します。高い専門性と学識が求められ、人気職種でもあるため、就職は非常に狭き門の学芸員。めざすには、どうしたらいいのでしょうか。さまざまな博物館の垣根を超えて、博物館の振興を担っている日本博物館協会を訪ね、ともに学芸員の経験を持つ澤井恵子さんと原秀夫さんにお聞きしました。 イメージ画像

学芸員は
どんな仕事をしているの?

公益財団法人 日本博物館協会
事務局 事業担当学芸員

澤井 恵子 さん

学芸担当
原 秀夫 さん

 学芸員は博物館に勤務して、資料の収集、整理、保存、管理、展示、調査研究、展覧会の企画、来館者に向けて解説や教育普及などを行います。なかでも大切なのが、何らかの専門分野(たとえば歴史、美術、動物、植物、天文など)を持ち、その研究をすることです。そのため、学芸員には研究者としての能力も求められ、論文などを執筆して発表する機会もあります。しかし、学芸員は研究だけにとどまらず、集めた資料がどういうものなのかを調べて記録し、それを一般の人々に伝え、次の世代に残す役割も担っています。そこが大学や研究所などに勤務する研究者との違いです。

 学芸員が集め、管理している資料は、博物館において一般の人々に公開します。学芸員は常設の展示だけでなく、テーマを決めて特別展も企画し、その展示会場の設営や広報活動といった業務にも携わります。

博物館には
どんな種類があるの?

科学館・美術館 歴史博物館 動物園・水族館etc...  学芸員の活躍場所である博物館ですが、日本には5500館以上が存在し、その種類はさまざまです。何を専門に集めて研究しているかにより、総合博物館、歴史博物館、民俗資料館、科学館、美術館、動物園、植物園、水族館などといった分類ができるほか、公立博物館(都道府県立、区立、市立など)、民間施設が運営する私立博物館というような設置者による分類もできます。

学芸員になるには?

学芸員になるまで

学芸員になるまでの図  学芸員の資格取得に必要な科目が履修できる大学・短大は、国内に292校ありますが、そこで指定の単位を取得して資格を得ても、卒業後すぐに学芸員として就職できる人はまれです。しかし、なりたい気持ちを保ち、行動を続けていれば、長期的に道が開けることもあります。学芸員の資格を取って博物館でアルバイトをした後、展覧会を企画する会社でその準備に携わり、そこでのキャリアが認められて、大きな博物館の学芸員になれたというような例もあるそうです。

 学芸員は研究職ですから、それぞれ自分の専門分野を持っていなければなりません。たとえば、大学で歴史について学んだ人は博物館の学芸員に、天文学を学んだ人はプラネタリウムのある科学館の学芸員に、それぞれなれる可能性があります。

 そのうえで、学芸員になるための国家資格を取得する必要があります。それにはいくつかの方法がありますが、学芸員になるための講座を設置している大学や短大で、博物館に関する所定の科目を履修して、指定単位を取得するのがいちばんの近道です。それ以外には、文部科学省が年に1回行う学芸員資格認定試験に合格するという方法もあります。この試験には、筆記試験によって認定する「試験認定」と、これまでの学識や業績の審査によって認定する「審査認定」の2種類があり、それぞれについて、いろいろなケースの受験資格が定められています。

 こうして学芸員資格を取得したとしても、実際に学芸員として職を得るには、各博物館の採用試験に合格することが必要です。学芸員の採用は、欠員が出たときのみ行われるのが一般的なので、非常に狭き門であることは間違いありません。そのため、なんとしてでも学芸員になりたい人は、学生時代から希望の分野の博物館でアルバイトをして、自分が学芸員志望であることをアピールしておくのもよいでしょう。また、学芸員を補助する役割の「学芸員補」として勤務をして経験を積んだり、大学院で研究を続けたりしながら、学芸員の採用が行われるチャンスを待つ人もいます。このように、学芸員になるための能力と、なるために努力を惜しまない情熱が必要とされます。

 「わたしは大学で水墨画の研究をしていましたが、学芸員としての専門は、書道を中心とする日本の古美術です。自分の専門をあまり狭めずに、広がりを持たせたほうが、学芸員として就職しやすくなります」(澤井さん)

学芸員に求められる資質は?

 学芸員には好奇心にあふれた人が向いています。特定の事柄を深く学ぶエネルギーも重要ですが、それを取り囲むすべてに関心を持ち、それらがどうつながっているのかを人々に説明できることも、学芸員の大切な資質の一つです。また、自分の学んだことを自分だけのものにせず、広く人々に伝えていこうとする気持ちも大切です。みんながどのようなことに興味を持っているかをキャッチし、それに合った情報を提供できるような発信力は、特別展の企画にも大いに生かされるでしょう。

 さらに、特別展を開催する際は、同じ博物館で働く仲間をはじめとする、多くの人々の協力を得て展覧会を作り上げるので、自分の意見を言えるだけではなく、周りの人の意見も受け入れながら物事を進行できなければなりません。そうした意味でも、コミュニケーション能力は大事です。

 「わたしの専門である天文分野を例にとると、“宇宙はどうやってできたのか”といった最先端の研究しかしない人は、あまり学芸員に向いていません。一般の人が興味を持つのは、“帰り道に見えるいちばん光っている星は何?”といった身近な出来事が多いですから、そういうことを含めた天文学全般が好きな人は向いていると思います」(原さん)

 学芸員に興味を持った小学生の皆さんは、関心のあることや好きなことがあったら、それについてたくさん調べて、学び続けてください。見たり聞いたり考えたりしたことが、いずれつながってくるでしょう。

「第63回 学芸員」:
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