さぴあ仕事カタログ
スポーツをする人の体を、専門知識と技術で支えるのがトレーナーの役割です。トレーナーにはどのような種類があり、めざすにはどうしたらいいのでしょうか。早稲田大学スポーツ科学学術院の教授としてトレーナーをめざす学生を育て、2021年の東京オリンピックでは、サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)のフィジカルコーチも務めた広瀬統一先生にお聞きしました。
トレーナーは
どんな仕事をしているの?
トレーナーとは、スポーツ選手がベストな状態で競技できるよう、コーチや医師と連携しながら、健康管理やけがの予防、コンディションの調整などを行う職業です。かかわるスポーツや役割によって、「アスレティックトレーナー」「ストレングストレーナー」「メディカルトレーナー」「コンディショニングトレーナー」「パフォーマンストレーナー」「フィットネストレーナー」など、いろいろな呼び名があります。また、わたしがなでしこジャパンなどで務めたフィジカルコーチも、トレーナーの職種の一つです。
このようにトレーナーの種類はさまざまで、その仕事内容は互いに重なり合う部分もありますが、広い意味でとらえると、スポーツをしている人の体を支える仕事だといえます。その支え方には、大きく分けて次の三つがあります。
(A)【体を鍛える】身体能力を向上させるために、トレーニングのメニューを作って指導するのが主な仕事。ストレングストレーナー、フィジカルコーチなどが担当します。 (B)【体を整える】それぞれのスポーツの特性に応じたテーピングやストレッチ、アイシングを行うなど、けが予防のための指導やトレーニング、けがの対応や応急処置に携わるのが主な仕事。アスレティックトレーナーなどが担当します。 (C)【体を治す】けがをした人の運動機能を回復させ、復帰をサポートするのが主な仕事。メディカルトレーナーなどが担当します。
早稲田大学 スポーツ科学学術院
博士(学術)広瀬 統一 教授
現在は資格を持っていなくても、体を鍛えたり、整えたりするトレーナーとして仕事をすることはできます。しかし、契約する競技団体などによっては、NSCA(National Strength and Conditioning Association)の認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、JSPO(日本スポーツ協会)の公認アスレティックトレーナーなどの民間資格が条件として求められることがあり、近年、その傾向が強まってきています。また、(C)の体を治す仕事をしているトレーナーの場合、行う仕事の内容により、理学療法士・柔道整復師・鍼灸師といった医療分野の国家資格が必要になります。なかには複数の資格を持って活躍しているトレーナーもいます。当然ですが、資格を持っていたほうが仕事に就きやすくなります。
トレーナーの活躍場所は?
スポーツチーム、スポーツジムやフィットネスクラブ、高校や大学の運動部などで主に活躍しています。働き方としては、チームに所属する人や、フリーランスとしてチームと契約し、いくつかのチームを掛け持ちしている人もいれば、スポーツジムなどの社員として働いている人や、自分でフィットネスクラブを経営している人などもいます。また、体を治す仕事をしているトレーナーは、病院に勤務するケースが多く見られます。
今後は、いわゆるトップアスリートばかりでなく、スポーツをする一般の人々からのニーズも増えていくでしょう。実際、週末に皇居の周りを走るランナーたちが、月に数度、トレーナーのサポートを受けるといった動きも出てきています。
トレーナーになるには?
体育系・医療系の大学や短大、大学のスポーツ科学系学部や健康科学系学部、専門学校のトレーナーコースなどで学び、前述した資格を取得するのが一般的です。たとえば、JSPOの公認アスレティックトレーナー資格の場合、日本スポーツ協会の承認校で必要な単位を取得すれば、受験資格が得られます。早稲田大学スポーツ科学部のトレーナーコースも、その免除適応コースとなっています。また、NSCAの認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト資格を取得するには、4年制大学を卒業していること、救急救命の資格であるCPR(心肺蘇生法)およびAED(自動体外式除細動器)の認定を保持していることなどといった条件を満たしたうえで、資格試験を受験します。
トレーナーに求められる資質は?
トレーナーにはスポーツの経験がある人が多いのですが、スポーツ経験がなく、高校の部活でマネージャーをしていたなどという人もいます。必要なのは、専門知識、技能、コミュニケーション能力、人や物事に誠実に対応する態度、「どうしたらもっと良くなるか」と常に工夫をするような探究心です。人を支えるためには利他の精神も必要ですが、自己犠牲の精神が強過ぎると長く続かないので、人の役に立つことで自分も幸せを感じられる人が向いていると思います。
トレーナーの仕事に興味を持った小学生の皆さんは、常に「なぜ?」と考えることを大切にして、自分が好きなことを楽しみながら続けてください。
トレーナーコースでは、スポーツ医科学の基礎知識に基づいて、スポーツ障害の予防、リコンディショニング(競技に復帰するまでどうサポートするか)、トレーニング、コンディショニング(どうやったら体の状態が良くなるのか)など、具体的な実践技法について学びます。NSCAのストレングス&コンディショニングスペシャリスト、およびJSPOの公認アスレティックトレーナーの資格取得に必要となる基本的な知識と技能が学べるカリキュラムがあり、所定の科目を履修すれば、受験資格を得ることができます。
トレーナーコースで学んだ学生の進路として多いのは、次の四つです。
卒業後に資格を取得し、トレーナーとして仕事をする
大学院で学びながら資格を取り、修了後にトレーナーの仕事に就く
専門学校に入学し、理学療法士・柔道整復師・鍼灸師などの資格を取ってから仕事をする
アメリカの大学院に進学し、アメリカのトレーナーの資格を取得してから仕事をする
- 「第68回 スポーツのトレーナー」:
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