受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

Books

2026年5月号から転載

Booksコーナー

Booksコーナーでは、小学校低学年から高学年までを対象とした読み物や、保護者の方向けの図書を、新刊中心に紹介しています。学習の合間などに、ぜひ読んでみてください。

注目の一冊

『真昼にも星が光ると知ったのは』

「障害があったら
対等の友だちになれない」
本当にそうなの?

夏鈴は人づき合いが苦手です。変なことを言うので、周りからは変わっていると思われています。そんな夏鈴に茉白という親友ができます。ある日、茉白と街に出掛けた夏鈴は、電車の車内で白杖を持っている人が、席を譲られて座った途端にスマホを見ている姿を見ます。障害者になりすましているなら許せない。そう思って駅前でその人を探していると、白杖や車いすを使っている人を何人か見かけ、障害のある人が自分の町にもたくさんいることを知るのでした。

白杖を持つ青年に疑念を抱いたことから、目が見えず耳が聞こえない人に興味を持ち始めた夏鈴。祖母を通して手話の会に参加し、知らなかったことに気づいていきます。一方で自分が幼少期にある診断を受けていたことを知り、悩みます。いくつもの要素が折り重なるように絡み合い、物語に厚みを加えていきます。

夏鈴のストレートな物言いにはらはらさせられながらも、真っすぐであるがゆえの戸惑いやもどかしさ、切なさが伝わってきます。障害を持つ人とその家族の思いをていねいに描く一方、「障害とは何か」だけでなく「自由とは何か」「幸せとは何か」「友だちとは何か」など、さまざまに問い掛けてくる物語です。

あそべるひらめく きせつの図鑑』

生き物、食べ物、行事まで
季節の楽しみが満載

春が過ぎ、梅雨が終われば季節はもう夏。ヒマワリのように、太陽のパワーで植物がぐんぐん伸びる季節です。カブトムシやクワガタなどの虫も元気に動き回ります。セミの抜け殻を探して観察したり、ツユクサで色水を作ったり。雨の日は、葉っぱの上に落ちた雨粒を観察してみるのも楽しいものです。

春夏秋冬。季節ごとに天気や草花、虫や鳥、旬の食べ物、行事などを紹介するとともに、その季節ならではの遊びを教えてくれます。季節ごとの楽しさを知ることで、豊かな自然に親しめるように工夫された一冊です。

『宇宙でウンチ
みんなの知らない宇宙トイレのひみつ

宇宙でもウンチができる
これはすごいことなのだ

1960年代、人類が月面着陸をめざしていたころ、宇宙船にはウンチができるトイレがありませんでした。透明なビニール袋の中にウンチをして、そこに薬品を入れて処理していました。でもウンチ袋を閉じるのが難しく、かたまりがぷかぷか浮いてくることも…。

今なら笑い話のようなことが、当時の宇宙船の中では実際に起こっていました。宇宙で快適に使えるトイレを開発するのは、大変なことだったのです。夢とロマンあふれる宇宙の、知られざるトイレの歴史を教えてくれる、ユニークで楽しい絵本です。

『おやつのおぼうさん
おすそわけで子どもたちを笑顔に!

子どもの貧困と
食品ロスを同時に解決

松島靖朗さんは古いお寺のお坊さん。同時にNPO法人「おてらおやつクラブ」の代表として、お寺にお供えされたお菓子を、おやつを買う余裕のないひとり親家庭などに「おすそわけ」する活動をしています。それは「子どもの貧困」と「食品ロス」を同時に解決するためです。

人を助けるとはどういうことか。松島さんがお坊さんになってから考え続けてきた答えが、この取り組みでした。お寺の息子として生まれたものの不登校、引きこもり、退学など、波乱万丈の半生を歩んできた松島さんの活動を紹介します。

『異聞 今昔物語』

今読んでも新鮮な魅力
1000年前の説話集

京の都で独りたくましく生きる草太はある日、魚を釣りに行った池で、粗末な衣を着た坊さんに出会います。坊さんは草太に、老人の姿をした不思議な水の精の話を聞かせてくれました。

平安時代後期の説話集『今昔物語集』に収められている話を、草太の物語のなかにちりばめてわかりやすく紹介しています。もののけの話、観音様に救われた話、尊いお坊さんの話、盗人のお話など、趣の異なるさまざまな話が登場します。昔の人々を楽しませてきた不思議な世界観が、今も読む人の心を豊かにしてくれます。

『宇宙にヒトは住めるのか』

実現は目前!?
研究が進む宇宙での生活

もし月面で新鮮なイチゴやトマトが収穫できるとしたら、食べてみたいと思いませんか。仮定の話ではありません。すでに日本の研究施設では、栄養価の高いおいしい野菜が、月面を想定した植物工場で栽培されているのです。

月面農場だけではありません。宇宙で快適に住める家造り、宇宙空間における健康維持、さらには宇宙での出産など、さまざまな研究が進められています。宇宙生活のために進められている研究の最前線を、わかりやすく紹介します。宇宙での生活が、現実的なものとして見えてきます。

先生お薦めの一冊

晴海校校舎責任者

『僕の生きる道』

時間には限りがある、だからこそ
やれるだけのことをやってほしい

本書は2003年に放送されたテレビドラマのノベライズ本です。ドラマを見て感動したので本を読み、今も折に触れて読み返しています。主人公は中村秀雄という高校の先生です。平穏無事な人生を歩んできましたが、28歳で受けた健康診断の再検査で余命1年と宣告されます。最初は自暴自棄になりますが、思い描いた人生を生きてこなかった後悔から、今を大切に生きようと思い直す、そんな物語です。

中村先生は授業中に1冊の本の話をします。「持ち主はこの本を読もうと思って買いました。しかし読もうと思いつつ1年がたちました。読む時間がなかったのではなく、読もうとしなかっただけです。そこに気づかない限り何年たっても読むことはないでしょう」と。受験も同じです。「この1年でやれるだけのことをやりましょう」と。中村先生の「1年」ということばの重さ。時間は有限だということ。当たり前のことですが、それまであまり意識していなかったので、とても引き込まれました。

わたしは受験生のとき成績が足りなくて、めざしていた第一志望校をあきらめようとしていました。もう1年しかない、無理だと。そのとき塾の先生に、「インクの減りが見える赤いボールペンを使って受験勉強をするように」と言われました。「インクがなくなったときにめざしている学校が開けてくるから」と。そのとおりにやり続けたら入試の3日前にインクがなくなり、合格できました。そのとき使ったボールペンは今も持っていて、保護者会のときにはそれを見せながらお話をしています。主人公が絶望的な状況下でも夢や希望を持ち、自分らしく生きる道を歩こうとする物語です。高学年、特に受験学年の6年生に読んでほしいと思います。