注目の一冊
『人間と昆虫のこれからを考える』
益虫、害虫、普通の虫?
人間と昆虫の関係は
こんなにも広くて深い
人間と昆虫の間には長いつき合いの歴史があります。人類が農業を始めたときから、人は作物を食い荒らす農業害虫に悩まされ、またペストなど感染症を媒介する吸血昆虫からは、繰り返し大きな災いを被ってきました。しかしその一方で、人は古代から養蜂や養蚕を行い、ミツバチやカイコから大きな恵みを得てきました。昆虫とのつき合いが進化した現代では、天敵昆虫を用いた生物農薬や、幼虫を用いた病気治療法が開発されるなど、人間と昆虫との新しい関係性が生まれています。
「人間の活動によって地球環境が危機的な状況に陥っている時代に、生態系の一員である多様な昆虫とどうつき合っていけばよいかを改めて考えたい。それにはまず昆虫を知ることが重要だ」と語る著者。生物学的に見た人と昆虫の違いから始まり、人間と昆虫がどうつき合ってきたか、その広くて深い関係を、虫嫌いの人でも読めるようわかりやすく教えてくれます。多様性を持つ生物として、社会のなか、生活のなか、そして新しい時代のなかで人間と共に生きるものとして、多方面から見た昆虫の知識が詰まっています。昆虫を通して見る世界は想像以上に広く、わたしたちが考えなくてはならない大きなテーマだとわかります。
『おおかまきりのなつ』
昆虫界のハンターも
生き抜くのはひと苦労なのだ
オオカマキリは狩りの名人。幼虫のときは、クモやカエルなどの餌食になってしまいますが、成虫になれば立場は逆転します。大きな前足でガチッとはさみ込めば、トンボだってセミだって逃げられません。とはいえ油断をしていると鳥にパクッ。危険はいっぱいです。
ふ化したときから成虫になり、次の世代に命を引き継ぐまでのオオカマキリの一生を、狩りの姿を中心に描いています。いかつい三角頭、大きな目玉、不気味に広げた赤い口を持つ、迫力満点の昆虫界のハンターも、食うか食われるかの厳しい世界を生き抜いているのです。
『馬に乗って本をとどけた女性たち
希望を運んだ図書館 』
本を届けることは
希望を運ぶこと
馬に乗って山奥の険しい道を通り、流れの激しい川を越え、時には雨に打たれながら、学校や家々に本を届ける。アメリカが深刻な不景気だった時代、山あいの町や村に本を届けていた女性たちがいました。文字が読めない人には読み聞かせをし、文字の読み方を教え、行く先々に知る喜び、学ぶ喜びを届け、未来への希望を持てるようにしました。
1930年代にアメリカで実際に活動した、騎馬図書館員たちの物語が絵本になりました。巻末には当時の写真も掲載。馬にまたがった彼女たちのりりしい姿が印象的です。
『みんなの居場所』
一人でいたらあかん
一人だと思ったらあかん
父と二人暮らしの玲央の夕食はほとんど毎日、スーパーのお弁当。ある日、いつものようにスーパーに行くと、見知らぬおばあさんに声を掛けられました。「一人でご飯を食べるんなら、うちに来ない?」と。誘われるままについて行くと、「ひだまり」という看板のあるお店から、カレーのいい匂いがしてきました。
玲央のほか、フィリピン人の継母を持つ陸、祖母と妹の世話をするまひるの3人が主人公。事情を抱える3人が、子ども食堂と出合うことで、人とのつながり、社会とのつながりを知り、元気を取り戻していきます。
『さらわれたふたりと少年使節』
時は大航海時代、
少年は南蛮船で海を渡った
1582年、「天正遣欧使節団」の少年たちを乗せた船が、長崎からローマに向けて旅立ちました。その船内に、故郷の山中で幼なじみのハナと共にさらわれた、シロウがいました。その足は重い鎖でつながれていました。
故郷で平和に暮らしていたシロウがある日突然、奴隷となり、ハナを探しながらポルトガルまで旅をします。イエズス会の神父や使節団の伊藤マンショとの交流、初めて見る外国の町の活気、奴隷市場で目にした衝撃など、少年の目を通して当時の社会の様子が伝わります。歴史の勉強にもなるスペクタルドラマです。
『自己決定の落とし穴』
自分で決めること、
その複雑な心理の背景を探る
「自分で決めていいよ」と言われると迷ってしまう。そんなことはありませんか。人は生活のなかでいろいろな決定をしています。単に好き嫌いで決めるわけではありません。周りの人や状況を考えて決めています。それが時には面倒になったり、重荷に感じたりすることもあります。
自己決定を推進する社会で息苦しさを感じるのはなぜか、自己決定を推進するとどんな不具合が起きるのか、などについて社会学を用いて検討していきます。進路決定にもやもやした思いを持つ人に、響くことばが見つかるかもしれません。
先生お薦めの一冊
中野校校舎責任者
『新版 昭和史 戦前篇 1926-1945』
今につながる昭和
当時を生きた人々の
空気感を知ってほしい
明治期、近代国家をつくろうとがんばっていた日本が、世界の強国ロシアとの戦争に勝ったのが1905年。日本が開国して約40年後のことです。これで近代国家が完成したと思いきや、その40年後、日本は世界を相手にした戦争で敗戦。そして講和条約締結後に新しい国づくりを始め、経済大国になったかと思えば、その約40年後にバブルが崩壊します。がんばって倒れて、がんばって倒れて。このサイクルを考えると次の40年後はどうなっているのか…。
これは本書の冒頭に書かれている話です。わたしが10年ほど前に初めて読んだとき、この部分にひかれ、そこから一気に読んだのを覚えています。バブル崩壊から数えると40年後は2032年。6年生ならそろそろ大学生になっているころです。そう考えると興味が湧いてきませんか。
戦後の日本がどのようにできてきたのかを知ることはとても大事です。その歴史的な営みのうえで今の社会も今の法律もできています。特にその時代の空気感を知ることは大事です。歴史はその時代の普通の人たちの空気感でできあがっているものだからです。この本は当時のエピソードや著名人の日記などを紹介しながら、そうした当時を生きた人の空気感を伝えてくれます。わたしも授業でよく、この本のエピソードを紹介しています。
語り口調で書かれているので読みやすいです。内容は中学入試に出てくるようなものではなく、受験を終えてから入学までの間に「少し骨太のものを読んでみたい」と思う歴史好きの人に最適です。保護者の方にもお薦めです。『昭和史 戦前篇』のほか『昭和史 戦後篇』『B面昭和史』『世界史のなかの昭和史』の全4冊の新版・昭和史シリーズです。