受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

職場見聞録

2026年8月号から転載

職場見聞録 住宅メーカー

住宅メーカー

わたしたちの生活に欠かすことができない住宅。こんなに大きくて頑丈なものをつくるために、どのような人たちが、どんなふうに働いているのでしょうか。一戸建てやマンション、アパートなどさまざまな建物をつくる住宅メーカーにはどんな仕事があるのか、大和ハウス工業 広報企画部東京広報グループの藤原寛人さんにお聞きしました。

土地探しから設計、
施工までを担い
マイホームの夢をかなえる

住宅の外観 ダイニングキッチンの内観 街づくりの様子

住宅メーカーは、暮らす人の安全・安心・快適な住まいの実現のために、多くの人が協力して仕事をしています。住宅展示場のモデルハウスでは、最新の性能を備えた住宅の中に実際に入って、暮らしのシーンをイメージできるようになっています。大和ハウス工業では、住宅の提供だけではなく、商業施設や物流施設に加え、暮らし全体を支える街づくりも手掛けています

お客さまの思いを形にする仕事

大和ハウス工業株式会社 広報企画部 東京広報グループ 藤原寛人さん

大和ハウス工業株式会社
広報企画部
東京広報グループ
藤原 寛人さん

住宅メーカーの仕事の基本は、いうまでもなく「家づくり」です。住む人が安心して暮らせる住宅を提供するために、多くの人がかかわっています。

最初にお客さまに「どんな家をつくりたいか」と要望を聞いて、「こんな家ができる」と提案するのは営業の仕事です。希望に沿って、土地探しから始めることもあります。営業は住宅メーカーのなかで最も人数が多い職種です。

設計と、建築現場の監督は、特に専門的な知識や技能が求められる仕事です。設計士は、お客さまの要望に沿って住宅の設計図を作成し、実際に建てたときのイメージがわかるようにパースも作ります。建築の現場では、現場監督が作業や工程を管理し、職人に指示を出します。これらの職種に就くためには、大学や専門学校の建築学科などを卒業することが必要です。

企画・開発・研究を担当する部署では、これからどんな住宅が求められるかを考えて、新たな工法や住宅に関する新しいサービスなどを開発します。

変化が激しい現代でますます需要が高まっているのが、環境に配慮した住宅です。大和ハウス工業の戸建住宅は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)をはじめとする環境に配慮した住宅や、「断熱等級6」を標準化するなど、高い断熱性能と省エネ性能を実現しており、年間を通して快適な住空間を提供します。

また、当社独自の「Σ型デバイス」により、地震に強い構造で安全・安心な暮らしを提供しています。さらに、大開口や天井高2.72mによる開放感のある空間も特長です。

時代や環境に合わせて、お客さまが求める最適な住まいを提案しています。

※パース…建物の外観や内部を立体的に描いた完成予想図

対面でのコミュニケーションが大切

住まいに対して求めるものは、それぞれのお客さまによって異なります。その思いをくみ取って形にしていくのが、わたしたちの仕事です。そのために最も大切になるのが、コミュニケーションだといえます。お客さまにとって、一生に一度の買い物になるケースが多いので、ご提案をする際には、お客さまがどういった思いを持っているのかを引き出す。そして、一緒に家づくりをしていく姿勢が欠かせないものと考えています。

今の小学生は、インターネットを通じての交流が多いかもしれません。だからこそ、対面でのコミュニケーションがとても大切になってきます。小学生のうちから、周りの人にあいさつをしたり、感謝の気持ちを伝えたりするという、人として基本となる行動を身につけることが、仕事をするうえでも役に立つと思います。

住宅メーカーの主な職種

営業

営業の仕事風景。お客さまと打ち合わせをする様子

お客さまの要望を聞いて、規格住宅、セミオーダー住宅、注文住宅など、条件や予算に合わせて、プランの提案を最初に行う仕事です。土地探しから始めることもあり、幅広い知識やさまざまな役割が求められます

設計

設計の仕事風景。パソコンで住宅プランを作成する様子

お客さまの要望を聞き取って、安全性・機能性・デザイン性を考慮したうえで、法令を満たすように住宅の設計図を作成します。パースも作り、お客さまにイメージを伝えます。設計図が完成したら、建築現場とやり取りをして確認や調整を行います

現場監督

現場監督の仕事風景。建築現場を確認する様子

着工から引き渡しまで、建築現場全体を統括する仕事です。工程・品質・安全・原価を管理しながら、多くの職人や業者を指揮して、お客さまの要望どおりの住宅を完成させる役割を担います。資材や人員の手配、お客さまとの打ち合わせなどを行います

企画・開発・研究

企画・開発・研究の仕事風景。構造部材を確認する様子

より安全・安心な住宅をつくるための施工技術、快適な住まいを実現するための設備やシステムなどを企画・開発・研究する仕事です。住宅に対してどのようなニーズがあるかを検討し、住む人が安心して過ごせるような技術を実用化します

快適防音室&静音室「音の自由区」

快適防音室の内観。楽器演奏の様子 快適静音室の内観。静かに勉強する様子

「音を自由に、音から自由に」をコンセプトにした防音室と静音室。音量を気にせずに、楽器を演奏したり、映画などを楽しんだりしたい人に最適です。また、静かな空間で仕事や勉強をしたい人にもお勧めです。外壁はもちろん、窓やドア、換気扇などに防音仕様を施し、その性能はお客さまの用途や空間に合わせて、三つのグレードから選べます

住宅メーカーで働くって、
どんなこと?

前半ページでは、家をつくるために多くの人がかかわっている住宅メーカーの仕事の内容やその役割を紹介しました。ここでは、実際に設計の仕事に携わっている小峰碧純さんにご登場いただきます。どんな仕事をしていて、どういうときにやりがいを感じているのでしょうか。

大和ハウス工業株式会社 東関東支社 住宅設計部 千葉中央設計課 小峰碧純さん

回答者
大和ハウス工業株式会社
東関東支社
住宅設計部
千葉中央設計課
小峰 碧純さん

どんな仕事をしているの?

設計の仕事は、お客さまの「こういう家にしたい」という要望を伺い、住宅の設計図を作成して形にするものです。聞いたままを形にするだけではなく、安全性や機能性を考え、時にはお客さまのイメージを超えるような、驚きや喜びがプラスされる設計ができるように心がけています。

一般的な30坪(約100㎡)ほどの家を設計するには、3か月程度の期間が必要です。最初にお客さまとプランの打ち合わせをして、部屋の間取りを決定します。その後に設備の様式や色などを選んでいきます。それぞれどのようなものにするかを決めたら、確認を進めて、最終的に現場で工事ができるような設計図を作っていきます。

設計図が完成したら、工事担当者に図面を渡して工事が始まります。その間も、ほかの家の設計を同時並行で担当します。設計以外に、建物を建築するための書類を国に提出するなどの申請業務も行っています。わたしは常に10件ほどを担当し、年間で30~40棟程度の家を設計しています。

小峰さんの仕事道具

ノート、タブレット、電卓、三角スケールなどの仕事道具

気づいたことはすぐにメモを取れるよう、ノートやタブレットは肌身離さず持ち歩いています。建ぺい率などを計算するときには電卓を使います。設計の図面を正確に測るときなどに使う三角スケールも必須アイテムです。

※建ぺい率=建築面積を敷地面積で割った割合

仕事のやりがいは?

最もやりがいを感じるのは、お客さまに設計のプランを喜んでもらえたときです。仕事をするなかでいちばん頭を使うのが、このプランを考える作業です。設備などをどうやって組み込むかを想定しながら、空間を上手に活用できるようにプランを練っていきます。

せっかく大和ハウス工業を選んでくれたのだから、普通の家では終わらない、何か当社らしいポイントをつくりたいという思いが強くあります。お客さま自身が意識していなくても、こだわりのポイントをつくって伝えることで、その家にほかとは違う付加価値が生まれると思うからです。

たとえば、お客さまから「室内を明るくしたいから、大きな窓がほしい」と要望があったときに、単純に窓を大きくすると、外観のバランスが悪くなってしまうことがあります。そうした場合は、「このほうが外観のバランスが整いますよ」と違った提案をする代わりに、スペースに余裕を持たせたり、壁紙の色を変えたりして、明るい雰囲気は損なわないように工夫します。そうした提案をお客さまが受け入れて、建てた後にも「こうしてよかった」と言ってもらえたときは、設計士としての醍醐味を感じます。

常に完璧な図面作成を心がけていますが、現場で設計図通りにいかないことは珍しくありません。そのときに解決策を考え、お客さまにご迷惑が掛からないようにするとともに、同じことを繰り返さず、次に生かそうと切り替えるようにしています。

お客さまとノートパソコンで住宅プランを確認する小峰さん
お客さまとVRプレゼンシステムで住宅プランを確認する小峰さん
設計の最初の段階では、お客さまと打ち合わせを重ねてパースを用意します。お客さまの要望をいかに設計に組み込むか、また、望んでいる以上のものをプランとして提案できるかも腕の見せどころです。提案するときには、性能の高い「VRプレゼンシステム」を活用し、プランを立体図で見せて、お客さまのイメージが湧きやすいようにしています。別の案やカラーに変更するときも、その場で対応することができます。

どうして住宅メーカーに入ったの?

最初に建築に興味を持ったのは中学生のときです。サッカーのクラブチームで活動していたのですが、遠征でドイツへ行ったときにケルン大聖堂を見学して、その雰囲気に感動したのがきっかけです。帰国してからは、神社や美術館などの建物を見ることが多くなり、本格的に建築に興味を持つようになったのです。

高校卒業後は日本大学理工学部海洋建築工学科に進学。海の上で風力発電を行う洋上風力や、海や川の近くの景観と調和するための建築デザインである親水空間などを学びました。普通の建築とは少し視点が違うところがおもしろかったのですが、大学の課題で実際に設計をしていくなかで、いちばん楽しかったのが家の設計だったのです。「自分で自分の家をつくりたい」という願いも強くあったので、住宅メーカーへの就職をめざすことにしました。

住宅を設計するうえで大切にしているのは、コミュニケーションが生まれるつながりです。屋内と屋外とのつながり、部屋の中での人と人とのつながりなどが、どうしたら自然に生まれるかを考えて取り組むようにしています。

子ども時代の経験が今につながっていると感じるのは、体力とコミュニケーション能力をつけたことだと思います。わたしは小学生のときにいろいろな習い事をしていました。二つのサッカーチームに所属しており、水泳や駅伝の大会にも出場していました。忙しい毎日が当たり前になっていたので、体力がかなりついたと思います。そして、それぞれのコミュニティーで多くの人と話す機会があったため、コミュニケーション能力も磨かれて、今に生きていると実感しています。