受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校File

(「23年11月号」より転載/23年10月公開)

獨協中学・高等学校

所在地:〒112-0014 東京都文京区関口3-8-1
東京メトロ有楽町線「護国寺」駅より徒歩8分、「江戸川橋」駅より徒歩10分、東京メトロ副都心線「雑司が谷」駅より徒歩16分
TEL:03-3943-3651
www.dokkyo.ed.jp

充実した系列校推薦制度で
医学部を含む進路の選択肢を広げる

 創立140年を迎えた獨協中学・高等学校は、ドイツの社会制度を日本に移入するために設立された獨逸学協会を母体とする男子の伝統校です。系列の獨協大学には推薦基準を満たせば人数制限なく進学できるほか、獨協医科大学には獨協埼玉高校と合わせて約10人の系列校推薦枠が用意されているのも強みの一つ。獨協高校の卒業生であり、獨協医科大学の第1期生でもある校長の上田善彦先生に、教育の特色について伺いました。

昔から医学部志望者が多く集う
ドイツ語に特化した唯一の学校

校長 上田 善彦 先生

広野 まず貴校の沿革を教えてください。

上田 1881年、日本にドイツの社会制度や文化を移入しようという明治政府の国策の一環として、獨逸学協会が設立されました。1883年には、同協会が学校をつくることになり、西洋哲学者の西周先生を初代校長に迎えた獨逸学協会学校を開校。これが本校の前身です。西先生は「知育・徳育・体育」の「三育」を教育の柱に掲げ、人格形成を重視した学びの実現に尽力されました。

広野 当時は第一高等学校(現在の東京大学教養学部)に多数の卒業生を輩出していたようですね。

上田 はい。特に三部(医科)には強かったようです。当時本校は第一外国語としてドイツ語を教える日本で唯一の学校でした。当時の医学部入試はドイツ語が課されるのが一般的でしたから、本校の教育に魅力を感じ、医学の道を志す者がこぞって入学したということなのでしょう。

広野 昔から医師志望者が集まる土壌があったのですね。

上田 しかし、第二次世界大戦でドイツが敗れると、志願者が激減し、本校は存続の危機に立たされました。そんななか「母校を再建したい」と立ち上がったのが、本校の卒業生で、元文部大臣の天野貞祐先生です。1952年に第13代校長に就任すると、みずからの信条である「学問を通じての人間形成」を掲げて、抜本的な学校改革に取り組みました。そのときに確立された教育姿勢は、現在の獨協の礎とも呼べるものです。さらに理想の教育を追い求めた天野先生は、1964年に獨協大学を創設し、初代学長に就任。そして、OBの悲願であった医学部創設を実現するべく、1973年には栃木県に獨協医科大学を設立しました。

ドイツ語教育のネットワークを生かし
本格的な語学教育と異文化交流を実践


病理学の専門医でもある上田校長先生による、高2・3対象の「医学基礎講座」を開講

広野 現在もドイツ語教育やドイツとの交流は続いているのですか。

上田 ドイツ語は高校から選択科目として履修できます。多い学年では全体の約4割が選択しています。ちなみに本校は、ドイツ語を学ぶ高校生をドイツ外務省が支援する制度(PASCH)のパートナー校です。PASCHからドイツ語教育に最適な教材を提供されており、授業内容への的確なアドバイスも受けられるので、世界標準のドイツ語教育が展開できるというわけです。

広野 そのほかにはどんな国際交流の機会がありますか。

上田 中3から高2の希望者を対象にした約10日間のドイツ研修旅行をはじめ、イギリス・コッツウォルズでのホームステイや、イエローストーン・サイエンスツアー、ハワイでの修学旅行などがあります。先日は、本校が力を入れている環境教育に関心を持ったドイツのエコレア・インターナショナルスクールから11名の生徒が来校しました。本校は「緑のネットワーク委員会」と呼ばれる生徒組織が、屋上菜園や、ヘイケボタルが生息するビオトープの管理などを行っています。生徒は、来日したドイツの学生たちに、環境保全の取り組みについて説明をしたほか、歓迎会ではドイツ語による歌も披露しました。単なる研修という目的ではなく、環境教育を目的とした交流だったので、その経験は、国を超えた相互理解を深めるうえで大いに意義があったと感じています。

高大連携の取り組みを充実させ
目的意識の高い生徒を育てる

サピックス小学部
教育情報センター本部長
広野 雅明

広野 高大連携の取り組みについて教えてください。

上田 たとえば、中1の道徳では「獨協を知る」というテーマ学習を行いますが、その集大成となるのが獨協大学訪問です。獨協学園史資料センターや図書館に足を運び、学園の歴史に触れると同時に、キャンパス内を歩く大学生の姿を目にして、大学生活へのあこがれを醸成させます。また、中3になると獨協医科大学の見学会があります。大学教授による模擬講義や、ドクターヘリの見学、卒業生との座談会などを通じ、自分の将来と向き合うきっかけにしてほしいと考えています。

広野 医学部をめざす生徒にとっては貴重な機会ですね。校長先生みずから医学について話をする特別講座もあると伺いました。

上田 わたしも獨協医科大学の卒業生で、長年、病理学に携わってきた医療人です。その視点で「医師とは何か」といった基本的な事柄から、検査や診断のやり方までの実践的な内容を紹介する集中講義を昨年から実施しています。また、高校では日本医科大学付属病院や順天堂大学医学部附属練馬病院などで行う見学会もあります。参加した生徒たちは、ふだん触れる機会のないドクターカーを見て、「こんなところでオペができるのか」と目を丸くしていました。昨今、明確な目的意識のないまま医学部に進学する学生が増えていることが問題視されています。そういった事象を減らすためにも、今後もさらに獨協医科大学とのつながりを強化し、さまざまな動機づけの機会を創出していきたいと考えています。

広野 2022年度入試からは獨協医科大学への系列校推薦制度が始まりましたね。

上田 獨協埼玉高校と合わせて約10名の推薦枠があります。本校からは、2022年は6名、2023年は11名がこの制度を利用し、進学を果たしました。獨協医科大学の一般選抜は、定員57名の枠に毎年2000〜3000人の志願者が集まる非常に狭き門です。その点、系列校推薦の倍率はそこまで高くはないので、医学部を志す生徒にとっては非常に有利な制度だといえるでしょう。

広野 医学部をめざす生徒たちへのサポートはありますか。

上田 高3の選択科目に「医系小論文」という医学部志望者向けの小論文と面接の対策講座を設けています。学校内で医学部対策が完結できるよう、進路指導部が中心となってサポートしています。一方で、ひと口に医学部といっても、大学によって強みが違うので、「この研究をするならここ」「この科をめざすならここ」というように、大学選びについてのアドバイスも行っています。

広野 大学の特色を把握した進路指導ができるのは、長年にわたり実績のある貴校ならではの利点といえますね。医学部以外の進路についてはいかがですか。

上田 早稲田大学のキャンパスで、教授による特別講義を聴講できる「早稲田大学見学会」や、国公立大学を志望する生徒のための進学ガイダンスなどを開催しています。学校に蓄積されたデータを細かく分析・活用しながら、生徒一人ひとりの進路実現を支援しています。

広野 それはとても心強いですね。最後に、受験生とその保護者の方にメッセージをお願いいたします。

上田 本校は、あいさつや基本的な生活習慣の定着といった人間教育を大切にしている学校です。わたし自身、獨協の温かい校風で育った経験を振り返って、「ここで学べてよかった」と感じることがたくさんあります。これからも心の教育を重視し、生徒たちに「ここで学べてよかった」と思ってもらえるような学校をめざしていきたいと考えています。

Information

学校説明会などの情報はこちらよりご確認ください。
https://www.dokkyo.ed.jp/admissions/briefing_list

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