受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

そこが知りたい

2026年5月号から転載

そこが知りたい 「志望校選び」四つのアクション

中学受験をすることを決めても、志望校が決まっていないと、目標がなかなか定まらず、意識も高まりません。しかし、それぞれ異なる特色や魅力のあるたくさんの学校のなかから、親子共に納得できる「わが子にぴったりの志望校」を見つけるのは、とても大変なことです。そこで、今回の「そこが知りたい!」では、志望校選びのポイントとそのためのアクションをご紹介します。

ACTION1知る 学校の特徴を理解する

志望校選び 四つのアクション

中学・高校の6年間は、授業を通して知力を高めるだけでなく、心と体が大きく成長を遂げる大切な時期です。どのような環境で6年間を過ごすかは、その後の進路や人生に大きな影響を与えるでしょう。それだけに、労を惜しまず、念入りに検討を重ねて志望校を選ぶべきといえます。たくさんの中学校や高校などのなかから、お子さんの可能性を伸ばしてくれる学校を見つけるためには、まず何から始めればよいのでしょうか。

志望校選びのためのアクションは次の四つに分けて考えるとよいでしょう。まずは、それぞれの学校の特徴を「知る」ことです。そこで、中学校の特徴をタイプ別に分類しています。各項目から、お子さんに合っていると思えるタイプを選んで組み合わせることで、「私立」の「進学校」で「共学校」などといったように、具体的な学校像が見えてくるはずです。学校を知るための情報源も確認しておきましょう。冊子では『さぴあ』のような進学情報誌や、サピックス小学部が企画・編集する学校案内『中学受験ガイド』(6月中旬発売予定)、各学校の学校案内パンフレットなどがありますが、最近は各学校のホームページやSNSが充実していますので、気になる学校のサイトは随時チェックしてください。

私立・国立・公立

私立の学校は、教育理念や校風、カリキュラムなどに、それぞれの個性がはっきりと表れています。大学受験対策よりもアカデミックな授業を重視する学校もあれば、先取り授業や各種の講習・補習を行って大学受験に備える学校もあります。ご家庭の教育方針に合っており、受験する本人も「このような環境で学びたい」と思えるようなところを選べば、有意義な学校生活が送れるでしょう。

先生の異動が少ないのも私立の特徴です。6年間続けて同じ先生に教えてもらえる場合もあります。卒業後に母校を訪ねたとき、私立であれば20年たっていても恩師に再会できる可能性があります。

一方、国立の学校は、多くの場合、大学の教育系の学部の付属校として設置され、経済的な負担が軽いだけでなく、一般的にレベルの高い授業が行われています。ただし、筑波大学附属のように、併設の高校に進学するためには、内部試験などの審査(8割程度が進学)を受けなければならない場合やそもそも併設の高等学校がない場合もありますので、この点は注意が必要です。

そして、全国的に増えているのが公立の中高一貫校(中等教育学校や併設型の一貫校)です。私立の中高一貫校と同様に、6年間を通したカリキュラムが組まれています。ただし、高校募集のある学校では中学校の間は、学習指導要領に準じた進度で、高校では中高一貫生と高校入学生とは同じクラスになります。

付属校・半付属校・系属校・進学校

付属校は、併設された大学に有利な条件で進学できるのが大きな魅力です。受験勉強にとらわれることなく、クラブ活動や学校行事、興味のある勉強に打ち込むなど、ゆとりある学校生活を送ることができます。

半付属校は、形式的には付属校でありながら、他大学への進学にも力を入れています。このタイプの学校は、中学・高校に進学してからの進路変更にも柔軟に対応できるというメリットがあります。卒業生の多くが、併設大学以外に進学しているという学校も少なくありません。なお、大学進学の際には、併設大学への被推薦権を保持したまま他大学を受験できる学校もあれば、他大学を受験する場合は、内部進学の権利を放棄しなければならない学校もあります。学校によって対応が異なるので、あらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。

一方、系属校は大学と提携関係を結んでいる学校です。付属校と異なるのは、大学とは別の学校法人が経営しているという点です。ただ、実態は付属校と似ている場合もあります。代表的な学校は、早稲田実業学校、立教女学院、明治大学付属中野などです。なお、提携している大学に推薦で進学できる割合は、学校によって異なり、ほぼ100%という学校もあれば、50%程度の学校もあります。この点はしっかり確認しておきましょう。

これらに対して、大学を併設していない、またはしていてもそこへの進学者がほとんどいないのが進学校です。国公立大学や医学部に進学させたい、あるいは、高校卒業後の進路は、中学・高校での学びを通じてじっくり考えたいというご家庭にとっては、進路に制限のない進学校のほうがよいと思われます。

男子校・女子校・共学(別学)校

一般的に、男子校・女子校には歴史の古い学校が多く、伝統が受け継がれているのが特徴です。これに対し、共学校・別学校には、比較的新しい学校が多く、昨今ではグローバル教育を重視する学校や有名大学の付属校・系属校が多い傾向にあります。男子校・女子校から共学校に移行する学校もかなりあります。

なお、別学校とは、男女それぞれの成長のスピードや特性を考慮し、「一定期間、授業は男女別に行い、校内行事やクラブ活動、委員会活動については男女が協力して行う学校」のことで、国学院大学久我山、桐光学園などが挙げられます。

キリスト教系・仏教系

私立校には、キリスト教系(カトリック系・プロテスタント系など)や仏教系など、宗教を人間教育の基盤としている学校もあります。礼拝の時間を設けるなど、宗教教育を行っているところもありますが、生徒や保護者に信仰が強制されるわけではありません。多くの場合、その学校の宗教・宗派に関係のない生徒もたくさん在籍しています。キリスト教系の学校には、語学教育を重視しているところも多く、英語以外にフランス語などを学べる学校もあります。

都心型・郊外型

立地条件を考慮すると、大きく都心型と郊外型とに分けられます。都心型の学校は、通学には便利ですが、敷地が狭小な学校がかなりあります。一方、郊外型の学校は、広大な校地や充実した施設を持つところが多く、伸び伸びとした生活を送れるものの、自宅からのアクセスが悪いと、通学に時間がかかってしまう場合があります。6年間通学することを考え、自宅からの距離や交通手段を詳しく調べたうえで選びましょう。ただ、受験生本人に「この学校に通いたい」という強い思いがあれば、周辺の環境や多少の通学時間の長さは問題ではないかもしれません。

なお、都心型・郊外型にかかわらず、自宅から徒歩圏外の学校の場合は、大きな災害が起こったときに、交通機関がストップし、帰宅が困難になる恐れがあります。それを踏まえ、多くの学校は、生徒が数日間、学校にとどまることになっても十分に対応できる備えをしていますが、具体的にどんな備えをしているのか、きちんと確認しておくことも大切です。

伝統校・新興校

伝統校は、戦前に設立された旧制中学・高等女学校などの流れをくんでいたり、キリスト教や仏教の精神を基礎に創立されたりするなど、長い歴史を誇る学校です。独自の校風を形成しており、卒業生のネットワークが各界に張り巡らされているという強みがあります。

一方、比較的歴史の浅い新興校のなかには、進学指導に力を入れて大学合格実績を飛躍的に伸ばしている学校や、全国レベルで活躍しているクラブのある学校などが存在し、さまざまな特色を出しています。歴史が浅いということは、これから入学する生徒がその学校の歴史をつくっていけるということでもあります。

自由な校風・規律ある校風

基本的には生徒の自主性を最大限に尊重するという自由な校風の学校もあれば、生活指導や学習指導に力を入れている規律ある校風の学校もあります。ただし、自由な校風とは、生徒一人ひとりに自由に伴う責任を求める学校だということです。一方、規律ある校風の学校でも、生徒の自主性を伸ばす方針であることには変わりありません。いずれの場合も、受験生本人の性格に合うかどうかをしっかり見極める必要があります。

わが家の志望校選び/チェックシート

該当する項目に○を付けましょう。

わが家の志望校選びチェックシート

ACTION2見る 親子で学校に足を運んでみる

興味のある学校が何校か見つかったら、家族で足を運んで、学校見学会などのイベントに参加してみましょう。興味がある学校のホームページは定期的にチェックし、イベントの告知を見逃さないようにしてください。

『さぴあ』では本誌とホームページで、受験生や保護者の方などを対象としたさまざまなイベントを紹介しています。『さぴあ』本誌では、「学校行事スケジュール」(今月号50・51ページ参照)のページを、『さぴあ』のホームページでは「学校行事/学校説明会」のコーナーをご覧ください。

学校説明会

学校の教育方針などを説明するイベントです。主に保護者の方を対象として、校長先生をはじめとする複数の先生から、その学校の教育方針・校風・カリキュラム・クラブ活動・入試などについての説明を聞くことができます。校内の様子や、先生・在校生の雰囲気を確認できる絶好のチャンスといえるでしょう。また、オンラインの場合でも、保護者からの質疑応答のための時間を設けている学校もあります。そうした機会も積極的に利用しましょう。

サピックスでは、内部生の保護者の方を対象に、学校別に説明会を開催しています。一般の説明会以上に内容の濃い話が聞けると、例年好評を得ています。在校生、時にはサピックスの卒業生が学校の様子を紹介したり、受験勉強についてアドバイスしたりすることもあります。詳しくは、今月号52・53ページと、小学部ホームページのマイページをご覧ください。

合同説明会

複数の学校が参加して開かれる学校説明会です。同じ地域の学校、男子校・女子校、ミッション系の学校など、何らかの共通点がある学校が合同で開催します。1回だけの参加で、多くの学校の情報を得られる貴重な機会です。

体験授業・オープンスクール

主に受験生本人を対象に、授業や施設・設備を公開したり、模擬授業やクラブ活動の体験会を催したりするイベントです。土・日曜や祝日、夏休みに行われることが多いので、興味のある学校のイベントにはぜひ参加してみましょう。参加するには事前の申し込みが必要な場合もあります。気になる学校があれば、ホームページなどでこまめに確認してください。

文化祭・体育祭

それぞれの学校の最大のイベントといえるのが、文化祭・体育祭です。在校生たちが力を合わせて取り組む行事なので、学校の個性を感じることができます。文化祭では、校内の雰囲気や在校生の様子、体育祭では生徒たちの盛り上がりやチームごとのまとまりなどに注目してみましょう。来校者に対することば遣いや接し方、在校生同士の会話などからも、その学校の教育姿勢を感じ取れます。

文化祭などの開催中に入試相談コーナーを設けている学校もあるので、利用するのもよいでしょう。

ACTION3聞く 気軽に講師に相談を

情報を集めて、それぞれの学校を比較したり、実際に学校説明会や文化祭などに足を運んだりしても、なかなか志望校が絞り込めないというケースは少なくありません。逆に多くの情報を得たことで、かえって「迷いが増えた」という声もよく聞きます。

そんなときに頼りになるのが、受験指導に関する豊富な経験とノウハウを持つサピックスの講師陣です。講師たちはふだんの授業を通して、お子さんの学力はもちろん、性格や特徴も把握しています。それに基づいて、どの学校が合っているかを保護者には気づきにくい視点からも判断してもらうことができ、今後に向けてのアドバイスも受けられます。志望校選びに悩んだり、迷ったりしたときは、サピックスの講師に相談してみましょう。講師はけっして無理強いすることはなく、保護者の方とお子さんの希望に沿ってアドバイスをします。

ACTION4話し合う 最終決定は家族全員が納得する形で

中学受験に挑むのは受験生本人ですが、年齢や経験などを考えると、本人だけで志望校を選ぶことには危うさもあります。保護者の方がお子さんをリードして、ご家族全員が納得して決めるのが理想的です。

とはいえ、最近ではお子さん自身が「この学校に進学したい」と決意して、サピックスに入室するケースも増えています。もし、お子さんがそのようなタイプであれば、本人の意思を尊重してあげてください。その場合でも、話し合いの主導権は保護者の方が握るという形がベターです。

中学受験は「親子の受験」ともいわれます。志望校選びは、お子さんはもちろん、保護者の方にとっても、将来を考える良いきっかけになります。お子さんのこれからの人生について、家族で真剣に向き合うことは、中学受験以外の部分でも役に立つ貴重な経験になるでしょう。

志望校選びでは、
言語化・数値化しづらい部分も大切に

志望校を選ぶにあたって何を重視するかは、ご家庭によってまったく異なります。学校のタイプや教育方針、カリキュラム、進学実績など、ご家庭なりの軸があると思いますが、言語化や数値化が難しい部分にも目を向けていただきたいと思います。

それは「空気」です。特に私立は各学校が独特の空気を持っており、同じタイプの学校だと思って見に行くと、雰囲気がまったく違った、ということもよくあります。ぜひ、学校を直接ご訪問いただき、在校生の雰囲気や生徒同士・先生と生徒の距離感などを感じ取ってください。そこにわが子をあてはめてみたとき、楽しそうに笑っている姿が想像できるところは、お子さまの進学先候補として考えられる学校です。そして魅力的な学校群が見つかったら、実際にお子さまを連れて行きましょう。「この学校でこれをやりたい」「こんな先輩たちと過ごしたい」というあこがれは、受験勉強の何より大きな原動力となります。

なお、志望校にあえて序列をつけないことも考えてみてください。第1、第2、第3…ではなく、当たりしかないくじが平面に並んでいるイメージです。「この学校はここがすばらしい」というように、加点法で考えていくと、受験パターンも組みやすくなりますし、納得のいく受験にもなりやすいと感じています。

志望校選びに悩んだとき、迷っているときは、いつでもサピックスの講師にご相談ください。ご家庭と塾とで見せる姿が大きく違うお子さまも珍しくありませんので、新たな発見があるかもしれません。お子さまに合う志望校を、一緒に考えましょう。

教務本部 本部長 加藤 宏章