受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

そこが知りたい

2026年10月号から転載

そこが知りたい 中学受験の選択肢の一つである 「公立中高一貫校」の疑問にすべて答えます

公立中高一貫校は、難関大学への合格実績で一定の成果を残している学校もあり、中学受験の選択肢の一つとして定着しています。ここでは、首都圏の公立中高一貫校の特徴、私立や国立の中高一貫校と大きく異なる入学者の選抜方法とその対策について紹介します。

難関大学への確かな合格実績
学費の安さも魅力の一つ

公立中高一貫校の入学者を選抜する適性検査は、毎年多くの児童が受検しています。現在、首都圏(1都3県)には全部で23の公立中高一貫校があります。

安定した進学実績も魅力ですが、公立中高一貫校の魅力の一つは、学費の安さです。公立中高一貫校の場合、中学校に当たる最初の3年間は義務教育のため、授業料は無料です。高校授業料の無償化が進む今も経済的負担が軽く、私立と同じような中高一貫教育を受けられるという点は、大きなメリットといえるでしょう。

私立校を第一志望にしている受験生が、公立校を併願することも多くなっています。また、私立校は受けず、公立中高一貫校を第一志望にして、もし不合格なら地元の公立中学に進学させるという方針のご家庭もあります。

私立と同様、公立中高一貫校の人気に影響を及ぼすのは、難関大学への合格実績です。今春の東大への合格者数(過年度卒業生を含む)を見てみると、都立小石川中等教育学校が25名、都立武蔵高等学校と神奈川県立相模原中等教育学校がそれぞれ9名の合格者を輩出しています。

●首都圏1都3県の公立中高一貫校
(2026年度現在)

開校年 学校名
2003年 埼玉県立伊奈学園中学校(伊奈町)※
2005年 都立白鷗高等学校附属中学校(台東区)
2006年 千代田区立九段中等教育学校(千代田区)
都立桜修館中等教育学校(目黒区)
都立小石川中等教育学校(文京区)
都立両国高等学校附属中学校(墨田区)
2007年 さいたま市立浦和中学校(さいたま市浦和区)※
千葉市立稲毛高等学校附属中学校(千葉市美浜区)
*2022年度より千葉市立稲毛国際中等教育学校に移行
2008年 千葉県立千葉中学校(千葉市中央区)※
都立立川国際中等教育学校(立川市)
都立武蔵高等学校附属中学校(武蔵野市)
2009年 神奈川県立相模原中等教育学校(相模原市南区)
神奈川県立平塚中等教育学校(平塚市)
2010年 都立大泉高等学校附属中学校(練馬区)
都立富士高等学校附属中学校(中野区)
都立三鷹中等教育学校(三鷹市)
都立南多摩中等教育学校(八王子市)
2012年 横浜市立南高等学校附属中学校(横浜市港南区)
2014年 川崎市立川崎高等学校附属中学校(川崎市川崎区) ※
2016年 千葉県立東葛飾中学校(柏市)※
2017年 横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校附属中学校(横浜市鶴見区)※
2019年 さいたま市立大宮国際中等教育学校(さいたま市大宮区)
2021年 川口市立高等学校附属中学校(川口市)※

※高校募集あり

学校ごとに打ち出された
特色のある取り組みに注目

では、公立の中高一貫校は、実際にどのような教育を行っているのでしょうか。主な学校の教育方針や特色のある取り組みを見てみましょう。

都立小石川中等教育学校や都立両国高等学校・同附属中などは、充実した国際理解教育が魅力といえます。海外での研修のほかに、留学生とのディスカッションなど国内での国際交流プログラムもあり、高い語学力とグローバルな視点が養われます。

都立立川国際中等教育学校では、一般の生徒と帰国生・在京外国人生徒とが同じクラスで共に学んでいます。日常的に異文化理解を深められ、カリキュラムでは英語を重点教科としています。2022年4月には附属小学校が開校。附属小学校からも中等教育学校へ進学します。

また、都立武蔵高等学校・同附属中や千代田区立九段中等教育学校は、6年間を通して、生徒のキャリアデザインを支援する態勢を整えているのが特徴です。「職場訪問・体験」「進路講演会」を行うなどして、中学生のうちから将来への意識や関心を高め、主体的に進路を選択するよう促しています。

都立南多摩中等教育学校では、学年ごとにテーマを持ち、系統的なフィールドワーク(探究活動)を実践しています。1年生(中1)は「地域探訪」、2年生(中2)は「モノ語り」、3年生(中3)は「科学的検証活動」、4・5年生(高1・2)は「ライフワークプロジェクト」がテーマです。

日本の伝統文化を積極的に取り入れた教育を特徴とするのは、都立白鷗高等学校・同附属中です。中学の授業では地域を巡り、高校では地元の伝統的な行事に参加するなど、地域との連携により、伝統や文化に触れる貴重な機会を設けています。

●首都圏1都3県の公立中高一貫校
サピックスからの合格実績

学校名 24年 25年 26年
都立桜修館中等教育学校 17名 8名 12名
都立大泉高等学校附属中学校 1名 2名 5名
都立小石川中等教育学校 41名 30名 45名
都立立川国際中等教育学校 1名 1名 1名
都立白鷗高等学校附属中学校 4名 1名 2名
都立富士高等学校附属中学校 3名 2名 6名
都立三鷹中等教育学校 2名 7名 2名
都立南多摩中等教育学校 0名 1名 1名
都立武蔵高等学校附属中学校 6名 5名 6名
都立両国高等学校附属中学校 7名 4名 1名
千代田区立九段中等教育学校 8名 8名 6名
神奈川県立相模原中等教育学校 4名 4名 7名
神奈川県立平塚中等教育学校 0名 0名 1名
川崎市立川崎高等学校附属中学校 2名 1名 0名
横浜市立南高等学校附属中学校 4名 8名 9名
横浜市立横浜サイエンス
フロンティア高等学校附属中学校
5名 6名 1名
千葉県立千葉中学校 19名 26名 21名
千葉県立東葛飾中学校 13名 13名 20名
千葉市立稲毛国際中等教育学校 21名 25名 16名
埼玉県立伊奈学園中学校 1名 0名 0名
川口市立高等学校附属中学校 2名 1名 7名
さいたま市立浦和中学校 9名 6名 1名
さいたま市立大宮国際中等教育学校 2名 1名 1名
23校計 172名 160名 171名

総合的な思考力が問われる「適性検査」
「報告書」との配点の割合は
学校により異なる

公立中高一貫校が、私立の中高一貫校と大きく異なるのは、入学者の選抜方法です。公立の場合、私立や国立で課される「学力試験」ではなく、「適性検査」が行われます。出願時に提出する「報告書(調査書)」も点数化され、「面接」が課される学校もあります。

国語力をみる検査と、大問ごとに算数・理科・社会の内容が中心になる検査があることが多く、さらに理科や算数の検査を追加で実施する学校もあります。一部の学校では英語も出題され、リスニングの問題などが出題されています。

都立中高一貫校の合格は、報告書の点数と適性検査の点数を合わせた合計点で決まります。報告書と適性検査の点数の割合は、学校によって異なります。報告書の点数を全体の2割とする学校、3割とする学校、また、適性検査Ⅰ・Ⅱに加えてⅢを独自に用意して、その配点を高くしている学校もあります。

また、埼玉県と千葉県の公立中高一貫校では、一次・二次の2段階で選抜が行われます。なお、神奈川県立の中等教育学校では、2023年度からマークシート方式が導入されました。

このように、選抜方法が特殊であるため、私立や国立の中学との併願ができるのかという点が気になるところです。しかし、サピックスで学んでいるお子さんなら、適性検査に対しても、ふだんの学習と過去問演習で十分に対応できるので、それほど心配する必要はありません。むしろ、私立の併願校を選ぶ際、「出題傾向が適性検査に似ている学校」にしようとすると、選択肢を狭めてしまうことになります。選抜方法や出題傾向を優先して学校を選ぶのは本末転倒です。学校の理念や教育内容、在校生の雰囲気などから、お子さんに合った学校を選ぶべきでしょう。

合格へのスケジュール

●入学者の選抜方法

入学者の選抜方法

公立中高一貫校の受検に向けて
どのような準備が必要なのか

適性検査の特徴と、求められる力

首都圏にはさまざまな特色を持った公立中高一貫校が、多数存在しています。そのため、私立中学における志望校の選択と同様、学校主催の説明会や公開イベントなどへ積極的に参加することで、受検を検討する学校が、「お子さまの成長が期待できる場所か」「ご家庭にとって魅力的な環境か」を、まずは十分に確認することが重要です。

また、公立中高一貫校の場合、入学者の選抜においては「適性検査」「作文」「面接」「報告書(調査書)」などを組み合わせた、総合的な学力を問う入試となっているため、その対策について漠然とした不安を持たれる方も多いようです。まずは、このような点を踏まえたうえで、大きな配点を占める「適性検査」の特徴を三つに分けてご紹介します。

①高度な知識は要求されないが、幅広く偏りのない知識が求められている。 ②図版・写真などの資料が多数盛り込まれ、教科の枠組みにとらわれない柔軟な出題形式となっている。 ③与えられた条件を踏まえて的確に図示したり要約したりするなど、多様な形で表現する力が問われている。

言い換えるなら、「さまざまなものを複雑かつ総合的に判断する力」が求められているといえ、具体的には次の五つが挙げられます。

①読解力…与えられた資料を丹念に読みとり、正確に把握する力。 ②分析力…読みとった複雑な内容から、共通点・相違点を導ける力。 ③思考力…導き出した情報を論理的につなげ、柔軟に発想する力。 ④運用力…生み出した新たな発想を応用して、適切に構成する力。 ⑤記述力…他者の視点を踏まえ、みずからの考えを明快に表現する力。

意識すべき学び方と、客観性を養う添削指導

このように列挙すると、かなり高度な力量が要求されていて、その対応に難しさを感じるかもしれません。しかし、この五つの力は「現在の中学受験において要求される必須の力」であり、サピックスで学んでいるお子さまたちにとっては「常に授業のなかで鍛え上げ、育み培っている力」だといえます。そのため、一見遠回りに見えますが、合格する力を高める基本的な姿勢としては、特別な何かをいち早く実践するというより、授業のなかで習得が期待される内容を、たゆまず身につけていくことだといえます。

そして、日々の学習で常に意識したいのは、学んだものを単に机上の学問で終わらせないよう、日常生活のなかで常に「学び」の視点を持てるよう心がけるということです。サピックスの授業では、そうした力を育める教材構成、そしてお子さまへのかかわりを行っていますので、ご家庭ではそのような「学習で興味を持ったもの」に触れられるよう、目配りいただければと思います。

また、「適性検査」は出題形式が記述中心の学校があったり統計資料・写真図版を運用したりと特徴的なので、過去問を解くことでの「一定の慣れ」は必要だといえます。ただ、十分な基礎学力が身についていない状態では消化不良で終わるだけなので、早い時期からの取り組みはお勧めできません。過去問を解き始める目安はおよそ、6年生の9月以降だとお考えください。

出題も資料活用が多い記述型であるため、お子さまが自己採点することは難しい場合も多いので、過去問について「添削指導」を受けることは非常に有効です。たとえば、授業を担当している我々講師であったり保護者の方であったり、添削内容について率直な意見を伝えることで、お子さまはみずからの主張が客観性を持っていたか、さまざまな資料をうまく活用できていたかを、適切に評価することが可能となります。

「適性検査」は、日常の話題からの気づきを得て解答する場合も多いため、日ごろから新聞であったりニュースであったり、世の中の現状について十分に興味を持ち、「自分たちの生活と、どのように関係するのか」「自分にできることとして、どんなことがあるのか」など、「今現在の自分の立場から考える姿勢」を忘れないよう心がけましょう。

教務本部 安酸 誠司

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