優先すべきは十分な睡眠時間
学習の積み残しは朝学習で消化
中学受験の成功は、日々の地道な努力の延長線上にあります。目の前の結果を追うあまり、子どものキャパシティーを超えたハードスケジュールを続けていると、どこかでひずみが生じてしまうもの。それを避けるためには、持続可能かつ学習効率の高い生活習慣を早い段階から整えておくことが大切です。
わたしが受験生活のなかで最も優先すべきだと考えているのは、十分な睡眠時間の確保です。人間は睡眠中、「ノンレム睡眠」「レム睡眠」と呼ばれる状態をおよそ90分周期で繰り返しており、「ノンレム睡眠」のときに脳や体の休息を、「レム睡眠」のときに記憶や感情の整理を行っているとされています。つまり、学んだ内容を定着させ、その記憶を取り出しやすくするためには、こうしたサイクルが成立するよう、適切な睡眠時間をとらなければならないのです。
とはいえ、通塾している子どもたちにとっては、帰宅後にやるべきことが多く、十分な睡眠時間を確保するのが難しいのも事実です。「その日の復習はその日のうちに」と、眠い目をこすって机に向かっているお子さんも多いと思いますが、そこは思い切って早めに就寝し、翌朝に早起きをして積み残しを消化するのが望ましいでしょう。
早起きにもまた、さまざまなメリットがあります。強い日光を浴びることで、神経伝達物質の「セロトニン」が分泌され、意欲や向上心が高まり、精神が安定します。また、セロトニンは夜になると睡眠ホルモンの「メラトニン」の材料となるため、夜もぐっすり眠れるようになります。十分な睡眠時間をとり、朝型の生活にシフトしていけば、自然と良いサイクルが回っていくのです。
わからない事柄は「質問帳」に記録
疑問の解決をめざすことが学びの原動力に
もう一つ、わたしが受験生にお勧めしたいのが「質問帳」の活用です。日々のなかで直面する、さまざまな疑問や解けなかった問題などをノートに書き留めておくのです。
ただし、その答えを出すのは、周りの大人ではありません。将来のお子さん自身です。その時点では理解できなかったことも、時間の経過によって頭の中が整理されたり、学年が進みより高度な単元を学んだりすれば、その仕組みがわかるようになります。その疑問の一つひとつに答えを見つけていくことが、今後の学びの原動力になるのです。わからないことがあっても「仕方ない」と割り切れる子どももいますが、納得できる答えが見つかるまでなかなか前に進めないタイプの子どももいます。そうした子どもも、ノートに疑問を書き留め「継続的にじっくり考えてみよう」と思うことで、気持ちが整理できるという側面もあります。
お子さんに「なぜ?」「どうして?」と聞かれて困った経験のある保護者の方は多いはずです。時には「今はわからなくていい」「そんなことを気にしていたらきりがない」と言いたくなる場面もあるかもしれません。しかし、せっかく芽生えた好奇心の種を放っておくのは非常にもったいないこと。その種を大切に育てていけば、そのアイデアが将来に大きく役立つこともあるかもしれません。子どもならではの柔軟な発想や素朴な疑問を無駄にしないためにも、この「質問帳」の活用を日々の生活に取り入れてほしいのです。
将来の自分に夢を持つことで
中学受験の目的を再確認してみよう
このように「質問帳」を作るのも、中学受験にチャレンジするのも、言い換えれば「将来の自分に夢を持つこと」にほかなりません。「今いる世界よりももっと広い世界に飛び込み、高度な知識を身につけ、今の自分が抱えている問題を解決したい」と、向上心を持って日々を過ごすことは、中学受験のみならず、その後の中学・高校生活にもつながる学習姿勢のベースになるでしょう。もしも壁に直面したときは、志望する学校でどんな生活を送りたいのか、大人になったらどんなことを学んでみたいのかをあらためて思い描いてみてください。今の勉強と将来の自分が地続きであることを認識できれば、前向きな気持ちで努力を続けられるはずです。
受験の渦中にいる子どもたちは、どうしても視野が狭くなりがちです。そのため、保護者の方にはぜひ「中学や高校、大学に行けばもっと世界が広がるよ」「学びを積み重ねていくのはとても楽しいことなんだよ」と、未来に夢を持てるような声掛けをお願いしたいのです。将来に目を向けることで、子どもたちは中学受験の目的を再確認できます。たとえ今の勉強がつらくても、困難を乗り越えるための大きな糧になるだろうと思います。