校名に熱い思いを込めて
教育者34名が共同で設立
神田 初めに、学園の沿革と、景山先生と学園とのかかわりについてお聞かせください。
景山 共立女子学園の前身は1886(明治19)年設立の共立女子職業学校です。教育界の先覚者34名が共同で立ち上げた学校で、「共立」という校名もそこに由来します。女性が独りで生きていくことが難しかった時代に、女性の自立を支える技能、特に和裁や洋裁を教授することを目的としていました。ただ、それを社会で生かすには、バックボーンとなるマインドが必要です。それが学園創立にかかわった鳩山春子校長を中心に掲げた校訓「誠実・勤勉・友愛」です。戦後、1947(昭和22)年に共立女子中学校が新制中学校として開校し、翌年に高等学校が開校しました。
わたし自身は大学で生物学を学んだ後、一般企業に就職しましたが、その後、教育系大学院に進み、縁あって本校に生物科教員として奉職しました。以来、教務部門に長く携わり、副校長を経て昨年4月に校長に就任しました。
神田 お話に出た鳩山春子先生は設立の中心人物で、鳩山一郎元首相のお母さまです。大日本図書社長の宮川保全さん、東京女子師範学校教授で永井荷風の父・永井久一郎さん、東京大学法学部初代学部長の服部一三さんなども設立にかかわりました。それだけ女子教育への強い思いが出発点にあったのだと思います。以来、女性が社会でどう生き、どう貢献していくかを見据えた教育を続けてこられました。たいへんすばらしい伝統ですね。
学園のシンボルでもある「共立講堂」
人間性を磨き、協働力を養う
特徴あるリーダーシップ教育
森本 教育の指針である「共立リーダーシップ」についてご説明いただけますか。
景山 本校は立場や専門の異なる人々が共同で設立した学校であり、それぞれの強みを生かしてチームで目標を達成する精神が校風として根づいています。それを現代の教育理念としてとらえ直したものが「共立リーダーシップ」です。基礎学力を身につけて高等教育へと進み、そこでの学びを社会で生かす。その際に重要となるのがリーダーシップです。
たとえば自己紹介では、どのような表現や語り方が相手に伝わるかを考える必要があります。逆に相手の話をどう聞き、その良さを引き出すにはどんな質問が必要かも考えなくてはなりません。本校では、こうした力を中1の段階からアクティビティーを通して育んでいます。中2では地域と連携し、地元の神保町をより魅力的な街にするための課題解決にグループで取り組み、調査・分析・提案を行い、地域からもフィードバックを得ています。こうした実践を通じて、現代に求められるリーダーシップを身につけていきます。
神田 日常の気づきから問いを立てて、解決策を考えることが、自分の力を社会で発揮することにつながりますね。今は「わたしについてこい」というカリスマ型のリーダーは通用しない時代です。不確実な時代に求められるのは、変化に適応するアダプティブ・リーダーシップであり、メンバーがスムーズに活動できるよう支援し、うまく事が運ぶようにかじ取りする存在です。鍵となるのは「協働」と「自分らしさ」であり、経営学者のピーター・ドラッカーも「リーダーの素質はカリスマではなく人格である」と述べています。「共立リーダーシップ」はまさに人間性を磨き、自分らしい人格形成につながるものですね。
生徒が命名した食堂「FooZoo(フーズー)」は、絵本の世界のような居心地の良い空間。日替わりランチや放課後のスイーツが人気です
ネイティブ教員が常駐する「ランゲージスクエア」。校内にいながら英語力を磨けます
理学・工学・医学系を中心に
拡充する高大連携プログラム
それぞれの強みを生かしてチームで目標を
達成する精神が校風として根づいています
森本 教育システムは「4+2システム」が採用されています。中1から高1までの4年間で基礎力を育て、高2・3の2年間で実践力を養い、高等教育につなげるということですね。
景山 本校では、最初の4年間は主要教科に加え、芸術や体育も幅広く学びます。たとえば、美術の授業では中1から油絵に取り組む一方で、CG(コンピューターグラフィックス)も全員が学びます。伝統的な表現から最新技術まで幅広く体験するなかで興味・関心を見つけ、それを伸ばした生徒のなかには、全国レベルのコンテストで成果を挙げた例もあります。今年は美術部の生徒2人が全日本学生美術展で特選を受賞しました。そして、「4+2」の後半2年間は少人数の進路別クラス編成とし、同じ目標を持つ生徒たちが学びを深めます。
こうした学びのなかで、自分の可能性を発見してほしいと考えています。ピーター・ドラッカーが紹介した寓話「3人の石工」にあるように、何をやるにしろ、「それは何のために行うのか」という目的意識が重要です。生徒たちには、今の学びが大学での研究や将来の社会とどうつながるのかを意識させたいのです。そのため本校では、大学による出前授業や出張講義を実施しています。特に東邦大学理学部とは約15年にわたって連携し、遺伝子操作の実験講座やプログラミング講座などを行っています。今年1月にはハンガリー国立大学医学部の日本法人と提携し、今後は提供プログラムへの参加も予定しています。さらに、芝浦工業大学、東京電機大学といった工学系の大学とも提携を進めており、大学の研究に早い段階から触れる機会を設けています。
神田 コンテストのお話がありましたが、日本政策金融公庫の「高校生ビジネスプラン・グランプリ」で、貴校の高校生チーム「承認欲求girls」がグランプリを受賞されたそうですね。「Admic」というアプリを提案したとのことですが、これはどのようなものですか。
景山 身近な出来事を書き込むと、自分を主人公にした電子漫画を生成してくれるアプリです。漫画とAIを組み合わせた点などが高く評価されました。もともとは、プレゼンテーション協会が主催する夏の「全国高校生プレゼン甲子園」に向けて開発したもので、そこで全国2位となり、その後ビジネスプランとして発展させました。生徒たちは夏休みの間、開発とプレゼン練習にかかりきりでした。
森本 そうした成果の背景には、中高大連携の仕組みもありそうですね。
景山 ただ、いちばんうれしかったのは、生徒自身が主体的に動いたことです。必要に応じて専門家に助言を求めながら、みずから行動して結果をつかみました。グランプリ受賞にも価値がありますが、その過程こそが重要だと考えています。
海外大学推薦制度は3方法を用意
早い時期に海外へ目を向けてほしい
森本 グローバル教育については、海外研修や留学制度など、さまざまな仕組みが整っていますね。
景山 これからの時代、子どもたちは何らかの形で海外を意識せざるを得ません。そのため、海外での生活を特別なものではなく、自然にとらえられるようにしたいと思っています。本校では、校内でのオールイングリッシュのアクティビティーから始め、多様な海外体験の機会を用意しています。それが「選べる留学・語学研修プログラム」です。カナダ、アメリカ、ニュージーランドなど6か国10都市から行き先を選べるもので、期間も選択可能です。学期制度の違いに応じて、ニュージーランドでは2か月間の短期留学を設けるなど、1学期間のワンターム、2学期間のツーターム、約1年間のロングタームといった形で展開しています。
神田 海外大学進学推薦制度には三つの方法があるとのことですが、詳しくご紹介いただけますか。
景山 一つ目は「Go Campus進学(奨学金保証進学)」で、返済不要の奨学金を得て北米の大学へ直接進学するものです。二つ目は「2+2進学(コミュニティーカレッジ進学)」で、アメリカのコミュニティーカレッジ(2年制の公立大学)から4年制大学への編入をめざします。三つ目は「パスウェイ進学(合格保証進学)」で、海外大学のパスウェイやファウンデーションの課程を経て進学するものです。
神田 パスウェイは、英語力が入学要件に満たない場合でも、語学研修と並行して学部授業を履修できる仕組みですね。段階的に進めば、難関大学への進学も視野に入ります。
景山 この制度は2022年度に開始したもので、定着には時間がかかると思いますが、海外大学を自然な選択肢としてとらえ、積極的に挑戦してほしいと思います。説明会の参加者も増えてきました。中学生の段階から関心を持てるよう、保護者向けも含めた説明の機会をさらに充実させていく予定です。限られた中高6年間を有効に使うためにも、早い時期に意識してほしいと考えています。
本格的な茶室「瑞香庵」。礼法の授業で使われるほか、茶道部・能楽部・古典文化部の活動の場でもあります
創設者の一人で第6代校長を務めた鳩山春子先生の胸像。エントランスに設置されています
国公立大学への合格実績が増加
個性や興味に応じた進路選択へ
神田 卒業後の進学実績もすばらしいですね。
景山 今年の春は国公立大学が比較的多く、合計39名が合格しました。東北大学、北海道大学に加え、熊本大学、富山大学、鳥取大学など地方大学への進学も増えています。このうち鳥取大学に進学した卒業生は、もともと国立の文系クラスにいて、文系学部をめざしていました。でも、生き物への関心が高く、考えた末に鳥取大学の農学部を受験しました。また、今年はお茶の水女子大学に5名が合格しています。キャンパスが近いこともあって、本校の卒業生でお茶の水女子大学に進学した先輩と接する機会も多いのですが、本校で6年間過ごして「女子校が楽しかったから大学も女子大がいい」と希望する生徒が、進路として選択しています。
近年は女子大が敬遠されがちに思われますが、本校では東京女子大学も日本女子大学も志望者は少なくありません。やはりいろいろな選択肢から、自分の個性や関心に応じて柔軟に選んでいることを感じます。
森本 さて、貴校の入試は2027年度から変更があるそうですね。
景山 これまで2月3日午後に実施していた英語4技能型入試と合科型入試を廃止し、算数・国語の2科入試に変更します。
森本 受験生にとって準備しやすくなりますね。
神田 今年度の出願状況を見ると、2月1日入試の出願者数が増えています。第一志望の受験生が増えているといえますね。
景山 第一志望として1日に受け、さらに2日・3日と複数回受験してくださる方が多いのが近年の特徴です。
神田 伝統ある学校ですから、母・祖母・曽祖母と、代々ファンのご家庭も多いと思います。卒業生のメッセージからも、学校への愛着が伝わってきます。建築家の六角美瑠さんは、「どのように自分の個性を出してよいか悩んでいたとき、担任の先生が『あなたらしくやったらいい』と、奔放な自分の背中を押してくれた」と書かれています。また、東大の大学院生だったとき、中学時代の友人のご家族が家の設計を任せてくれて、「友の信頼と理解がなかったら、独自の創作の道に進む機会はすぐにはつかめなかったと思う」とも語っています。学園の校風や人間関係の豊かさがうかがえますね。
景山 六角さんには今年度から学園の評議員に就任していただきました。学園運営への貴重なアドバイスがいただけると思っています。
神田 最後になりますが、受験生と保護者の方にメッセージをお願いします。
景山 6年間、生徒たちの学びを全力でサポートしていきたいと思っています。さまざまな出会いの機会を用意しています。そのなかから自分の個性・能力・素質に合ったものを見つけ、その力がどんどん花開くような6年間を過ごしてほしいと願っています。
森本 貴校を志望する生徒からは、「学校を見て、とても楽しそうだったので、ここに入りたいと思った」という声をよく聞きます。わたしも実際にお邪魔して、その魅力を実感しました。
神田 ぜひ学園に足を運び、学校の魅力を感じていただきたいですね。本日はありがとうございました。