東大をめざす土台になるのは
広い世界に触れる本物体験
溝端 初めに、貴校の沿革についてご紹介ください。
岡田 西大和学園は、奈良県河井町の緑と史跡に彩られた、恵まれた環境に立地しています。次代を担う高い理想と豊かな人間性を持った生徒の育成をめざして、まずは1986(昭和61)年に男女共学の高等学校を開校しました。中学校は1988(昭和63)年の開校です。当初は男子校でしたが、2014(平成26)年には女子中等部を開設して共学化しました。
溝端 東大合格者数ランキングでは常連校ですね。
岡田 今春は75名が東大に合格しました。生徒一人ひとりの目標を達成させることが大切だと考えているので、進学実績は重視しています。今年も、生徒たちは本当にがんばってくれました。
溝端 2011年度から、大阪府の府立高校10校に文理学科が設置されたのですが、そのタイミングで、貴校は「東大シフト」に切り替えたのではないかと記憶しています。
岡田 当時、すでに京大や医学部への合格実績では結果を残していましたが、公立高校が台頭すると、京大にたくさん進学しているということだけでは、西大和学園としての存在価値がなくなるという危機感がありました。生徒たちの視野を広げ、視座を上げてやることが重要だと考えました。
加藤 その方向転換により成果を上げているわけですが、どのような取り組みを行ったのですか。
岡田 「生徒にいろいろな世界を見せる」。これに尽きます。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された2002年ごろから、生徒たちに、「日本を見て、世界を見て、夢を持てる未来があるんだ」と感じてもらう環境を整えてきました。
自然体験や農業体験などの体験学習プログラムは豊富です。中3では全員でアメリカへ語学研修に出掛けます。中学での東京ツアーでは東大や企業を見学します。多感な生徒たちですから、東京に行けば、日本を動かしているエネルギーを感じ取ってくれますし、学力をつけて、より難度の高い大学に向かおうとします。先輩が東大に合格すると、がんばれば自分も行けるかもしれないと思うようになります。そのようにして、良い循環ができてきました。
もちろん、そこでは生徒の意思を尊重します。東大を無理にめざすような指導はしていません。いろいろな世界を見せて、いろいろな体験をさせると「てっぺん」をめざすようになる。自然な流れだと思います。
熱い思いあふれる教員が
「生徒が驚く授業」を展開
加藤 東大に向かう流れがうまくできあがっていたということですね。
岡田 たとえば、英語の授業一つとってみても、多読や実技教科を英語で学ぶイマージョン授業を導入したりと工夫していきました。さらにこれらを進化させた日本人教員とネイティブ教員のチームティーチング、英会話と探究を融合させたGCP(Global Competence Program)も実施しています。東大の英語の入試問題は、英語力だけがあっても太刀打ちできません。さまざまな教養が求められます。そこで本校では、英語力を磨くとともに、視点を広げ、思考を深める授業に変えました。
「東大シフト」というと、実績を重視する学校都合の進路指導と思われがちですが、けっしてそうではありません。時代に合わせ、本質的な力を持つ子どもを育てる学校に変えたということです。それが現在の実績につながっていると思います。
溝端 世界を見せる体験的な学びや授業の充実が実を結んだといえそうです。
岡田 生徒に「君はどんなときに学校を楽しいと思うか」と聞いたことがあります。クラブ活動や学校行事かなと思ったのですが、その生徒は「授業です」と答えました。わたしたちは授業、クラブ活動、学校行事を分けて考え、クラブや行事は、授業の息抜きととらえている面もありましたが、そうではないと生徒に教えられました。西大和学園という学校のレベルは変容していると実感しました。
賢い生徒たちなので、教員も授業をするのは怖い面もあるのです。「おお!」と生徒をうならせたいから、教材をとことん研究して教壇に立ちます。各教科の教員一人ひとりが工夫して工夫して工夫した授業が本校の最大の特長です。それを感じ取って、「授業が楽しい」と、ことばにできる生徒もすばらしいと思いました。今、本校は進学校の次のステージに向かっていると感じます。
加藤 授業がわかりやすい、話がおもしろいというだけでなく、その先生が丸ごと好きということではないかと思います。
岡田 そうなんです。西大和学園というと、詰め込み型で、ドリルばかりやらせる学校というイメージもあるようですが、そうではないことを知ってほしいです。若い教員が多いので、授業にも勢いやパワーがあります。どれだけその教科がおもしろいかを伝える“引き出し”をたくさん持っている教員ばかりです。
探究学習の第一歩、中1では星空観察やウミガメ観察、第1次産業体験などの体験学習を行います
2002年にSSHに指定されてから、「卒業後まで生きる科学技術系リーダーの育成」を目標として理科教育に取り組んでいます
面倒見の良さが伝統
海外大学の進学支援もスタート
いろいろな世界を見て、いろいろな体験をすれば
「てっぺん」をめざすようになるのは自然な流れです。
溝端 卒業後の進路に関しては、どのような特徴がありますか。関西では医学部志向も強い印象があります。東大以外にもさまざまな進路があるのではないでしょうか。
岡田 本校には、ターニングポイントが3回ありました。一つ目は、文武両道をめざした開校当初の方針から、進学校に特化しようとかじを切ったとき。二つ目が東大進学を掲げたとき。そして、三つ目が海外大学への進学をめざすプロジェクトを3年前に立ち上げたときです。このときは、「夢の天井を外せ」というキャッチフレーズの下、有志の教員が集まってプロジェクトをスタートさせました。現在、海外大学に進学するにはどういう力をつければいいのか、どのように準備をすればいいのかを、出願方法や奨学金の申込方法まで含めて生徒にアドバイスできるよう態勢を整えているところです。
海外大学といってもどこでもいいわけではなく、めざすのは東大と同等か、それ以上のレベルのトップ大学です。本校には非常に優秀で意欲のある生徒が入学してくるようになっていて、海外大学に興味を持つ生徒や保護者の方も少なくありません。プロジェクトはまだ始まったばかりですが、“天井”を外して、挑戦する生徒がどんどん出てきてほしいと考えています。
溝端 面倒見の良さも貴校の特長です。生徒を手厚くサポートするなかで、特に今、力を入れていることは何ですか。
岡田 勉強したくない、勉強を後回しにしたいという生徒を振り向かせるのが西大和学園の教員の伝統です。大学進学に関しても「自分たちの生徒だから、自分たちでこの子を合格させたい」という熱い思いを持っています。ですから、学習面は本当にとことんサポートしています。
溝端 大学受験は学校がすべて面倒を見るとおっしゃっていますね。
岡田 高3生は、休日も夏休みも、さまざまな講座を受けられます。担当するのは高3の教員だけではありません。全学年の教員が、「自分はこういう講座ができる」「自分はこれを教える」と集まってきて、添削の指導を引き受けるなど、さまざまな形でサポートしています。
溝端 以前、「面倒を見つつ、『自分で考える力』も育てなくてはならない」というお話をされていました。
岡田 本校の生徒の場合、勉強する意識が非常に強い層と、自分の夢や目標をかなえるために今は勉強をがんばろうという層と、怒られるから宿題だけでもやっておこうという層の三つに分かれます。三つ目の層の生徒には、興味・関心を引き出す出合いをさせて、内発的な動機で学びに向かわせるようにしています。保護者の皆さんも勉強させてほしい、力をつけてほしいと期待されます。ていねいにサポートしながら、同時にみずから考える力、勉強する力を育てているところです。
敷地内に二つの男子寮
多様性のなかで成長する
加藤 貴校には生徒寮もありますね。寮生活で取り組まれていることを教えていただけますか。
岡田 生徒たちが未来社会で生きていくためにどんな力をつけておかなければならないのかを常に考えています。困難に打ち勝つ力やイノベーションを生み出す革新力など、必要だといわれるものがあります。親元を離れて寮で生活すると、そうした力が身につき、大きく成長できます。寮教育の良さは、ほかにもたくさんありますが、親のありがたみがわかるのもとても大きいです。感謝の心が生まれ、それが育てば、エネルギーに転換されます。
溝端 寮生活をしていると、我慢しなくてはならない場面もあれば、一緒になってがんばろうという場面もあると思います。同年代の子どもたちと過ごせば社会性も身につきますね。
岡田 寮には全国から生徒が集まってきます。多様性を尊重する力が育まれますし、6年間、同じ寮で過ごした友人は、その後の人生の大きな財産にもなります。
加藤 首都圏でも、入寮を前提にして、地方の学校を受験するケースが少なくありません。学校をよく研究した結果、ここなら寮に入れてでも入学させたいと考える保護者の方も増えていると感じます。
岡田 寮では毎日の学習時間も設定しています。寮生は、少なくとも通学生よりは成績が良くなければならないし、東大合格の割合も多くなければ意味がないと考えています。実際にあの手この手で動機づけをして学びに向かわせるようにしています。寮があることで西大和学園の教育の厚みが増しているのは間違いありません。現在、さらに面倒見の良さのレベルを上げる寮改革を進めているところです。
京セラドーム大阪にて実施される青雅祭(体育祭)。体育祭実行委員会の生徒が中心となって運営します
中高生が利用できる食堂。寮生もここで食事をします
SSH、AIP、模擬国連
知の探究にも磨きをかける
溝端 授業や体験学習、行事以外にもさまざまな取り組みが進んでいますね。
岡田 授業の延長から生まれた体験学習では、中1での自然体験や中2でのキャリア学習などを経て、中3では卒業研究に取り組みます。さらに高校では、SSH、アクションイノベーションプログラム(AIP)、模擬国連の三つの選択肢があり、土曜日の放課後や長期休みに活動しています。
文部科学省から2002年に指定を受けたSSHの活動では、中高一貫校だからできるカリキュラムを中1から受講し、高校では先端科学に触れます。AIPでは、海外探究プログラムやリーダー養成プログラムを通じて世界で活躍できるグローバルビジネスリーダーの育成をめざします。模擬国連は、世界中の学生が自分の国以外の国連大使となって国際的な議題について英語で討論する取り組みで、国際問題や国際政治の難しさを学びます。2024年度からはこうした探究学習の成果を発表する「アカデミックサミット」を、大阪府吹田市にある、同じ西大和学園グループの大和大学で開催しています。他校や大学の先生にも来ていただく一大行事となっており、知の探究の集大成になっています。
溝端 将来が楽しみな状況ですね。さて、中学入試に関してもお聞かせください。貴校では、出題の指針を事前に公開なさっています。どのような狙いがあるのでしょうか。
岡田 本校では、各教科の出題指針や受験者平均点の設定はもちろん、一つひとつの問題の正答率まで公開しています。それは過去問を見て、しっかり勉強してきてほしいからです。行き過ぎかなと思うこともありますが、しばらくはこのスタイルを続けます。試験の形式も変えません。
溝端 最後に、貴校をめざす受験生と保護者の方へメッセージをお願いします。
岡田 説明会でもパンフレットでもよいので、まずは西大和学園に触れてみてください。どんなタイプのお子さんでも、何か好きなところが見つかると思います。受験勉強に関しては、目の前にある勉強をこつこつ続ければ合格できます。塾で学んでいることが報われる試験内容にしているので、塾の先生や教材を信じて努力してもらえればと思います。保護者の方には、お子さんが「勉強したつもり」になっていないかを見てあげてほしいです。ぜひ西大和学園を好きになってもらい、ここで一緒に6年間学びましょう。
溝端・加藤 貴重なお話をありがとうございました。