さぴあインタビュー/全国版
新たに「医進コース」を設置
社会での女性の活躍を見据えて
独自の先進的な教育を行う
淑徳与野中学・高等学校 校長 黒田 貴 先生
ガラスの天井を突き破るには
「理系に強い女子校」が重要
サピックス
小学部教務本部
福泉 秀司
神田 2024年度から新しいコース制を導入し、中学は「医進コース」が1クラス、「特進コース」が3クラスとなり、高校は進路に合わせてクラスを編成する「類型制」となりました。新しいシステムを導入した背景についてお聞かせください。
黒田 もともとは、中学の1学年を3クラスから4クラスに増やす計画から始まりました。本校は理系志望の生徒が多く、半数以上が理系志望の年もあります。そこで、単にクラスを増やすのではなく、理系に特化したコースを新設することになったのです。「医進」といっても医療系だけではなく、理系全般をめざすコースです。
理系に強い女子校があることはとても重要です。理系の女子は、社会でさまざまなプレッシャーを受けています。女子校なら理系女子を伸び伸びと育てることができます。
神田 黒田先生は「理系の女子が世界を救う」という話をされていますね。「女子だからといって、自分がやりたいことを我慢してはいけない。世界には埋もれている優秀な理系女子がたくさんいる」と。本当にそう思います。生命医学の分野一つをとっても、ゲノム編集やがん治療など、さまざまに女性の研究者が優れた功績を残しています。その裾野には多くの優秀な研究職や技術職の女性がいるのでしょう。
黒田 そういう時代なのに、日本のジェンダーギャップ指数のスコアは世界146か国中118位です。117位はネパールで、GDPで比べれば、日本はネパールの100倍はあります。日本がこの順位にいるのは問題です。女性の社会進出がもっと進めば、日本の経済はもっと活性化するでしょう。これは日本の伸びしろだと思います。
神田 それなのに動きがまだ見られないのは、本当にもったいないことですね。
黒田 そうした意味でも、女子校のあり方が重要です。女子校にも「ガラスの天井」はあるとしても薄いでしょうから、ここでしっかり学べば、社会に出たとき、厚いガラスの天井が見えたとしても突き破るだけのパワーを養えると思います。
上/図書室の蔵書数は約5万7000冊。ウッドデッキのテラスもある居心地の良い空間です
下/2階まで吹き抜けになった中学校舎のメディアステップは、生徒たちの憩いの場です
福泉 コースによってカリキュラムは異なるのでしょうか。
黒田 カリキュラムや授業の進度は高1まで同じです。中学受験のときにコースを決めて入ってきて、入学後に「自分はやっぱり文系かな」と感じる生徒も少なくないと思います。このため、高1までは毎年コース変更ができるようにしています。授業の進度は同じなので不都合はありません。ただ、「医進」には理系教科に強い生徒が集まりますから、理系教科に関しては深みのある内容の授業を心がけています。また、正規の授業とは別に「土曜講座」というプログラムがあり、「医進」の生徒はそのなかで特色ある講座を受講しています。すでに今年から、お茶の水女子大学のサイエンス&エデュケーション研究所と連携した「理科実験講座」が始まっています。初回は3Dメガネの仕組みを学び、自分たちで実際に作りました。お茶の水女子大学の先生が最先端の技術を紹介しながら、「まだこういうところは解明されていません」などと話してくださって、「それなら自分で解明しよう」と思った生徒もいたのではないでしょうか。「特進」でも思考力を伸ばすための探究講座を設けています。
神田 最近は大学が優秀な理系の女子を求めていて、女子の進学校にはいろいろな大学からアプローチがあると聞いています。
黒田 本校も東京科学大学など複数の大学からお話をいただいています。医学部のある大学とも連携し、医学関連の講座の準備を現在進めています。
◎学校関連リンク◎
◎人気コンテンツ◎