さぴあ仕事カタログ 特別編

高原クリニック イノベーティブスキャン 院長
放射線科専門医・医学博士
高原 太郎 さん
医師になろうと思ったきっかけは?
大学を受験するときにも、まだ医師になることは考えていませんでした。受験したのは工学部や理工学部でしたが、どこにも受からず浪人が決定。浪人しても、勉強したことが成績にはつながらない状態が続きました。
そんななか、浪人時代にはなんとお付き合いする彼女ができたのです。わたしはまた合格できず2浪目に入ったのですが、彼女は大学に進学して楽しい生活を送るようになり、間もなく別れを切り出されてしまいました。わたしは人間不信になってしまうほどショックを受けました。そこから眠ることもできなくなり、疲れ果てて寝付くと、夢でもさいなまれる状態が三日三晩続きました。
見かねた母が、わたしを近くの内科の病院に連れていってくれました。朝一番に病院に駆け付けて、先生から「どうしたの?」と声を掛けられたとたん、気持ちがあふれ出てきて、これまでに起こったことを1時間にわたって話し続けました。先生はずっと話を聞き続けて、「すごい恋愛をしたんだね」と優しく対応してくれました。気持ちが軽くなって、「ありがとうございました」と診察室のドアを開けて出ようとすると、目に入ったのは、待合室で自分の診察が終わるのを待っていた大勢の人たちの姿でした。そこで初めてわれに返りましたね。
その後は何とか眠れるようになったものの、勉強はまだ手につきませんでした。「なんでバラの花を見ると美しいと思うのか」と自分に問う哲学的な思考を繰り返す日々が続きました。1か月ほど続けると、考えることにも疲れ果て、「自分にはやるべき勉強があるのだから、考えるのはやめよう」とスイッチが入ったのです。それからは1日12時間勉強するようになり、成績が飛躍的に伸びていきました。深い哲学的な思考を繰り返すようになって、脳につながりができ、現役と1浪の時代にインプットばかりしていた知識がしっかりと結び付いていったのだと思います。
2浪の夏休みごろから、模試を受けるたびに成績が伸びていきました。塾の先生から「今なら東大でも医学部でも狙える」と言われ、医学部を受けることを決意しました。頭に浮かんだのは、失恋をしたときに自分の話を聞いてくれたお医者さんの姿でした。自分もあの先生のように誰かを助けられるかもしれないと考えたのです。
どうして放射線科専門医になったの?
秋田大学医学部を卒業してから、慶應義塾大学病院で小児科医として勤務していました。医学部生だったころに女子学生から相談事で頼られることが多かったので、子どもを心配するお母さんの役に立てると思ったからです。
多くの画像の読影を行う高原先生。優秀なスタッフと協力しながら、わずかな病変も見逃さないように努めています
しかし、小児科医として充実した日々を送りながらも、「自分が本当にやりたいことはこれなのかな」という葛藤を抱えていました。すると、たまたま病院内の本屋で、MRIの画像について書かれた書籍と出合ったのです。脳が縦切りになっているMRIの画像を見て、「なんだこれは!」と衝撃が走りました。すぐさま1冊3万円もする高価な本を購入し、夢中で読みふけりました。そして、「どうしてもこの画像の仕事がやりたい」と抑えきれない気持ちが湧き上がりました。小児科でお世話になった教授に「どうしても自分はこれがやりたい」と伝え、放射線科専門医になるために、栃木県にある獨協医科大学病院に移りました。
赴任して2か月ほどで、その病院に栃木県で初めてとなるMRIが導入されました。そのとき、「MRIの担当を自分にやらせてください」と熱心にお願いしたら、病院に移ってまだ2か月にもかかわらず、「そんなに言うなら」と任せてもらえることになりました。それから3か月間、朝から晩までMRIの画像診断や撮影をひたすら続け、瞬く間に診断技術が向上していきました。あと3か月、あと3か月と任される期間が延びていき、結果的に2年間担当させてもらいました。気がつけば、画像診断だけでなく、MRIの撮影も自分でできる放射線科専門医になっていたのです。
「自分ならもっとうまく撮影できる」と、さまざまな撮影に挑戦していくうちに、新しい撮影法も考えつきました。これまでよりも患者さんへの負担が少なく、小さな病巣も見逃しにくいドゥイブス法です。
現在はどんな仕事をしているの?
2025年4月に「高原クリニック イノベーティブスキャン」を開設し、院長を務めています。このクリニックでは、患者さんが気になるところがあれば、それを事前に問診で確認してから適切な画像を撮影することができます。画像が出てきたら一緒に見ながら診断を行える「オーダーメイド」の画像診断ができるのが、大きなメリットです。
検査に用いるMRI。通常の所要時間は15分程度で、着衣のままで撮影でき、負担が少ない方法で精密な検査が受けられます
また、わたしが発見した画像診断法を用いた、無痛MRI乳がん検診「ドゥイブス・サーチ」の代表医師も務めているので、全国90の病院から集まる画像を読影するのも日々の仕事になっています。
クリニックにいるときは読影をしながら、検査に来た人の画像を診断したり、検査中にリアルタイムで高度な指示を出したりしています。検査が終わったら、患者さんに説明して、必要であれば症例に合う専門医を紹介します。積極的に学会に出向いて発表を行い、画像診断法を提案することもあります。
一般的な放射線科専門医は、患者さんに直接会うことはほとんどないのですが、わたしは患者さんへの説明や撮影方法の提案をみずから行うこともあります。
小学生に伝えたいことは?
繰り返すこと、深く考え続けることがとても重要だと伝えたいです。皆さんが勉強を始めたとき、最初は嫌だと思ったかもしれません。でも、繰り返し取り組んで、考えながら続けていくと、学んだ先に必ず「やってよかった」と思えることがあるはずです。
医療は、多くの人にとって関心がある話題だといえるでしょう。医師は、毎日患者さんが来てくれて、「ありがとう」のことばが聞けるという、感謝の連鎖を感じられる職業です。自分が工夫して発見したことを、「そういうふうにできるんだね」と認めてもらえる機会があるのも、やりがいになっています。この「仕事カタログ」をきっかけに、放射線科専門医に興味を持つお子さんが増えてくれたらうれしいなと思います。
最新鋭のMRIやCTによる画像検査・診断に特化したクリニック。被ばくゼロのがんスクリーニング検査である全身MRI(ドゥイブス法)を中心に、乳房をクローズアップして撮影できるようにした無痛MRI乳がん検診などのメニューがそろいます。「長居したくなるクリニック」をモットーにした院内には、まるで高原のリゾートにいるかのような居心地の良い空間が広がっています。
住 所東京都世田谷区宮坂3-20-19
T E L03-5799-7898
アクセス小田急線「経堂」駅から徒歩4分

- 「第73回 放射線科専門医」:
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