学校説明会レポート
武蔵高等学校中学校
2026年5月22日(金)
「自由」を成立させる独自の背景
「知好楽」が育む自調自考の精神
武蔵高等学校中学校は、政治家で実業家でもある根津嘉一郎が1922年に創立した日本初の私立の旧制7年制高等学校を前身とする、完全中高一貫の男子校です。創立100年を機に新たなグランドデザインを掲げ、「独創的で柔軟なリーダー」の育成をめざしています。
SAPIX代々木ホールで開催されたこの日の説明会では、はじめにサピックス教育事業本部本部長の広野雅明先生が、同校の入試について解説。「4科を通じて、考える力と書く力が徹底的に問われます。基礎学力をしっかり固めたうえで、記述・思考の練習を積むことが重要です」と述べました。
続いて登壇した校長の杉山剛士先生は、同校の代名詞ともいえる「自由で伸びやかな校風」について紹介しました。制服がなく、髪型も自由で、朝夕のホームルームも行わない大学のようなスタイルと、生徒主導で運営される三大行事などを挙げたうえで、「武蔵の自由には独自の背景があります」と語り、その魅力を「豊かな自然」「学問の自由」「対話の重視」「体験の充実」という四つの観点から詳しく説明しました。
特に同校では、「勉強(勉めを強いるもの)」ではなく「学問(問いを学ぶもの)」を教育の中心に据えています。中1国語での『論語』の授業や、数学で代々受け継がれる手書きのオリジナル教材など、極めてアカデミックなカリキュラムを展開しています。この学びの核心にあるのが、論語のことばである「知好楽(知り、好み、楽しむ)」の精神です。杉山先生は、校内のあちこちに好奇心を刺激する仕掛けがある「わくわく」と、仲間と一緒に学び語り合う「わいわい」の文化が根づく環境の大切さを強調しました。その結果として、今春の大学合格実績では東京大学推薦入試で、受験した3人が全員合格するなどすばらしい成果があり、「好きなことを究めた生徒が入試で結果を出しました」と振り返りました。
自立と自律を支える「見守る教育」
入試問題という名の最初の授業
次に杉山先生は、日本初の私立中高一貫校として創設されて以来、100年以上、教育の根幹にある「建学の三理想」について説明しました。なかでも「自調自考(自ら調べ自ら考える)」を核とし、誰かに引っ張られる「グライダー」ではなく、自分でエンジンを回して行き先を決める「飛行機」のような人間を育てる仕掛けが武蔵にはあると語りました。これからの、先行き不透明な時代には、尖った専門性と豊かな柔軟性を兼ね備えた「T字型人間」が必要であり、自分で判断し、仲間と協力して困難を乗り越える力を重視していると説明しました。
さらに、次の100年に向けたグローバル教育やICT教育の進化についても紹介されました。中3からの第二外国語の選択や、放課後に無料で武蔵大学の正規授業を履修できる「高大連携講座」など、多様な学びの機会を設けています。また、全員が持つiPadの活用を進める一方で、スマートフォンに関しては「ICT活用ガイド+確認テスト」による独自の免許制を導入するなど、デジタル機器との向き合い方を徹底しています。
最後に杉山先生は、「武蔵の自由は放任ではなく、真の自由(自立と自律)を獲得するためのていねいな見守りです」と述べました。そして、学ぶ意欲と好奇心にあふれる受験生に向けて「入試問題は武蔵の最初の授業です。解きながら『おもしろいなあ』と思ってほしい」という力強いメッセージを送り、説明会を締めくくりました。

キャンパス内で、生徒たちに育てられているヤギ。生徒たちはヤギから多くのものを学び、感じています