学校説明会レポート
函館ラ・サール中学校
2026年5月28日(木)
50人大部屋の寮生活が育てる「社会人基礎力」と「一生の仲間」
寮を持つ道内有数の進学校である函館ラ・サール学園は、ローマに本部を置くカトリック教育修道会「ラ・サール修道会」を母体とする男子中高一貫校です。1960年に高校、1999年に中学校が開校。「学力偏差値や進学実績至上主義によることなく、社会に出てから有為となる人材を育成する」ことを教育の第一義に掲げ、全国から生徒が集まっています。
この日の説明会には、理事長代理の井上治先生が登壇しました。同校の卒業生でもある井上先生は、教頭を5年、副校長を15年、その後常務理事を務めた後に現職に就任。全国私立寮制学校協議会では協議会創設時から幹事を務めており、全国の寮制学校を見続けてきた立場から、「寮の違いは学校の違いより大きい」と強調しました。
井上先生は、現代の親子関係についても言及。「どんなITの時代になっても人間は人間の中でしか生きられない、人間の中で自分を磨いていくしかない」という考えの下、近年は子どもたちの人間関係の経験が不足しがちだと指摘します。その背景の一つとして保護者の過干渉を挙げ、「子どもがかわいいという気持ちが、結果として自立の芽を摘んでしまうこともあります」と警告します。そして、その解決策の一つとして寮生活の意義を説明しました。
寮の違いを端的に示す尺度として井上先生が挙げるのが、「寮生比率」「遠方出身生徒の割合」「生活形態」の三つです。まずは「寮生比率」。同校は、中学校では7割、高校は6割をそれぞれ寮生が占めています。これは、一般的な寮制学校と比べてかなり高く、「寮生が多数派である安心感を持ちやすい」と話します。
二つ目は「遠方出身生徒の割合」です。同校へは首都圏から毎年20~30人、多い年には40人以上が入学しており、東京圏・大阪圏・名古屋圏の三大都市圏からの入学者数が、全入学者の過半数を占めるそうです。井上先生は、「全国から生徒が集まる函館ラ・サールのあの環境が、いかに特別だったか、卒業して初めてわかった」という卒業生のことばを紹介し、その魅力を伝えました。
そして、生徒への影響が最も大きいのが「生活形態」です。同校の中学寮は、約50人の生徒が一つの大部屋で生活する全国唯一のスタイル。個室や2人部屋とは次元が異なるともいえる濃密な人間関係のなかで、コミュニケーション力や協調性が自然と育まれていきます。もちろん、思春期の男子が集団生活を送るわけですから、衝突やトラブルも少なくありません。「しかし、お互いの長所も短所も受け入れながら生活することで、深く広い友人関係も築かれていくのです」と井上先生は語りました。実際、卒業生の多くが「函館ラ・サールで得た最も大きな財産は、学力ではなく、大部屋での経験でした」と振り返るそうです。
さらに、井上先生は、アメリカの公立高校で教えた自身の経験を基に、アメリカの大学入試制度についても言及しました。入学者の選抜に当たって、アメリカのほとんどの大学は、以前からの高校の成績(GPA)、アメリカの大学統一試験に相当するSAT(Scholastic Assessment Test)、推薦書に加えて今はオンライン面接も使って数か月間かけて総合的に評価する選抜方式を採っています。井上先生は「そのなかでアメリカの大学が重視しているのは、『社会で活躍できる芽をどれだけ持っているか』です。近年では日本における大学入試もそのような方向へと変化しようとしているように見えますが、社会で求められる力は学力だけではありません」と強調しました。
最後に入試についても案内がありました。同校では第一志望者を対象とした追加合格制度を設けています。願書に記入欄があり、一次・二次試験のいずれでも対象となります。井上先生は「第一志望であれば合格の門はかなり広げていることを覚えておいてください」と呼び掛け、説明会を締めくくりました。

函館市日吉町に広がる函館ラ・サール学園。中学寮では、約50人の生徒が一つの大部屋で生活します