理系志向が進む背景に探究学習
大学の理系学部との連携も活発
校長 湯浅 茂雄 先生
広野 今春の卒業生の進路についてお聞かせください。
湯浅 これまでは併設の実践女子大学をはじめ、私立大学の文系志向の生徒が多かったのですが、ここ最近は国公立大学の理系を志望する生徒が増えています。今春は北海道大学や宇都宮大学など、国立の理系学部に現役で3名が合格しました。顕著な傾向として理系志望者が増加しています。
広野 探究プログラムのほか、実験重視の授業やICTの活用などで、女子校でも理系に対するハードルが下がっているようですね。
湯浅 本校でも2020年にスタートしたオリジナル探究授業「未来デザイン」が影響していると感じます。また、数学では単元ごとに復習の時間を設定し、少人数制にするなど苦手をつくらない工夫をしています。理科では中学に入学した直後から広大な校地を活用した自然観察や実験に取り組み、科学に親しむきっかけを提供しています。数学や理科に苦手意識を持ち、消極的に文系を選択する生徒が減りました。高3では文系・理系の割合が7対3ですが、高2や高1ではほぼ半分、中学ではさらに理系志向が強くなっています。
広野 特に数学は基礎・基本が大事ですからね。
湯浅 国公立大学の理系学部に進学した生徒も、自習室や教員の指導など、学校のシステムをフルに活用して合格を果たしました。良い形で活用してもらえたと思います。高大連携も活発で、特に芝浦工業大学、順天堂大学、電気通信大学の理系学部との連携が進んでいます。なかでも芝浦工業大学では、この夏もサマーインターンシップに参加し、研究室での本格的な研究体験をしました。これをきっかけに研究者になりたいという生徒も出てきています。生徒それぞれがやりたいことを見つけ、自分の夢に向かって進んでいる様子を頼もしく感じます。
多様なグローバルプログラムが充実
アントレプレナーシップ教育も進む

新校舎建設ワークショップでは、生徒から「靴を脱いで休める場所が欲しい」など、たくさんの意見が出されました
広野 グローバル教育には以前から定評があります。
湯浅 夏休みには中学生を対象に3日間のイングリッシュサイエンスキャンプを実施しています。英語を学ぶのではなく、英語で科学を学ぶキャンプで、今年は清里で「音」をテーマにしたアクティビティーを英語で行いました。英語で音の仕組みを学んだり、自然の音を採集して曲を作ったり。学んだ成果は最後に英語で発表します。このキャンプに限らず、本校ではアウトプットを重視しています。少し負荷の掛かる場で発表させることで、インプットしたものの形があらためて見えてくるとともにプレゼンテーション力が育ちます。
広野 さまざまな方向に興味が広がりそうです。
湯浅 ネイティブ教員による放課後講座も人気で、英語を使った実験やものづくり、動画作成、英語の検定対策など、こちらも多くの講座を用意しています。
広野 海外プログラムも充実していますね。
湯浅 学校のプログラムを利用して海外に出る生徒は年間300名を超えます。オーストラリアやニュージーランドへの海外研修や短期留学のほか、今春には世界有数のIT立国で教育立国でもあるエストニアの大学や企業と提携を結びました。創立者の下田歌子にも通じる「ソーシャル・アントレプレナーシップ教育」をテーマに、みずから社会や世界をより良くしようとするマインドを育てる教育を進めます。また、昨年7月にはイギリスのケンブリッジ大学ヒューズホールカレッジと教育連携の基本合意書を締結し、今年も3名の生徒がサマースクールプログラムに参加。専門家の講義を聞いたり、参加者がお互いの意見をぶつけてプレゼンに挑戦したりと、すばらしい体験をしています。さらに、ニュージーランドの国立マッセイ大学とも協定を結び、推薦入試制度が利用できるようになりました。
広野 海外に出て世界観が広がると、将来の活躍の場も広がりますね。
湯浅 オーストラリアのアデレードへ3か月の短期留学に参加した生徒は、海外で学びたいという夢を見つけアデレード大学に入学しました。今後は韓国ソウルのフィギョン女子中学校・女子高校との教育交流や、中国の北京師範大学附属実験中学校との交流も進める予定です。グローバル教育の一環として、韓国、シンガポール、マレーシア、沖縄から行きたいところを選ぶ選択制修学旅行も実施しています。修学旅行は「未来デザイン」の集大成でもあり、事前に行き先の課題を調べて現地で検証し、最後に発表することで学びを深めています。
実践的な英語教育に日本文化実習
2028年4月には新校舎が完成
サピックス教育事業本部 本部長
広野 雅明
広野 海外プログラムを実りあるものにするには英語力が必要です。英語教育で工夫されていることはありますか。
湯浅 中学生は全員がレベル別授業です。ネイティブ教員がみずからカリキュラムやテストを作って評価をする、本当の実力がつく授業を行っているのが最大の特徴です。ネイティブ教員がいることで、英語で話す環境が当たり前になりました。昨年は模擬国連の日本代表としてニューヨーク国連本部に招待され、世界大会に出場することもできました。
広野 一方で、日本の伝統的な文化を大切にされています。これもまた伝統校ならではの魅力です。
湯浅 中1と高3では礼法を学び、中1では「日本文化実習」の授業が必修です。茶道・華道・箏曲・和装着付・仕舞のなかから一つ選んで学ぶのですが、これもグローバル教育の一部と考えています。
広野 中高の段階で学んでおくと一生の財産になりますね。今後は新校舎の建設も始まります。
湯浅 現在の下田記念館を新校舎に建て替え、2028年4月に完成する予定です。教育内容をさらに充実させるためにグランドデザインを制定し、それを新校舎にも反映させます。新校舎には、施工業者が開催したワークショップを通して生徒の思いを盛り込みます。新しい学びに合わせた空間はもちろん、生徒が伸び伸びと居心地よく過ごせるスペースをたくさん設ける予定です。本校がある渋谷も再開発が進んでいます。本校も渋谷の街とともに、進化を続けていきます。
広野 最後に受験生の皆さんへメッセージをお願いします。
湯浅 実践女子学園では、既成の枠組みにとらわれない「とがった」生徒を育てたいと考えています。ぜひここで大きな夢を見つけて、実現してください。渋谷の便利な場所にありながら、2万5000㎡もの広大で緑豊かなキャンパスもわたしたちの自慢です。実際に足を運び、豊かな環境を実感してください。