内部進学生と中学受験生の相乗効果で
学校全体の雰囲気が活性化
校長 幸田 諭昭 先生
広野 今年度から2月1日午前入試を新設され、併設の東京農業大学稲花小学校から初めての卒業生が入学しました。現在の中1の雰囲気はいかがですか。
幸田 何事にも積極的な姿勢で取り組む子どもたちが増えたと感じています。本校の教育理念は、「本物に触れる経験(=実学)を通して知を耕す」という意味を持つ「知耕実学」です。稲花小学校の卒業生は、本校と同じ実学主義を重んじる学習環境で6年間を過ごしてきていますし、本校を第一志望として1日午前入試に合格した受験生は、学校の取り組みに深く共感したうえで入学してくれています。その教育への理解度の高さが、意欲的な学習姿勢につながっているようです。
広野 内進生と中学受験生とを比べて、カラーの違いはありますか。
幸田 中学受験を経て入ってきた生徒は、初めはおとなしい印象がありましたが、活発な内部進学生に刺激を受けて、今はそれぞれに個性を発揮してくれています。異なるバックグラウンドを持つ者同士が同じ環境で学ぶことで、相乗効果が生まれ、学校全体の雰囲気が活性化されています。
完全中高一貫校の強みを生かし
宿泊行事や探究学習をリニューアル

「知耕実学」の行事の一つである中3のみそづくり。東京農業大学の施設を利用してみそを製造するほか、教授から発酵の講義を受けます
広野 今年度より、高校からの生徒募集を停止し、完全中高一貫校となりました。それに伴い、カリキュラムの見直しなどはありますか。
幸田 大きく変わったのは宿泊行事です。これまで中3の恒例行事であった「北海道自然体験研修」を中1で実施することにしました。その代わりに、中3の宿泊研修として新設したのが、生徒全員がシンガポールとマレーシアを訪れる「海外修学旅行」です。シンガポールでは施設見学や企業・大学訪問を、マレーシアでは農村部での体験などを通して、その土地に根づく文化を学びます。
高2の修学旅行も「共創型国内修学旅行」にリニューアルします。この「共創」とは、本校のスローガン「共創し、新たなステージへ」にも含まれる重要なキーワード。ここでは、「共創」の名のとおり、旅行の行き先やコースを生徒自身に考えてもらい、プレゼンテーションで多くの支持を集めたプランを採用する予定です。
広野 学業面ではいかがですか。
幸田 中3の「課題研究発表」を高1に移動させます。これは、総合学習の一環として中1から取り組んでいる探究活動「課題研究」の成果を披露する場です。医療・経済経営・心理など幅広い分野から、生徒たちはみずからの関心の高いテーマを選択し、大学の研究室や関係施設への取材を通して得た考察をレポートにまとめます。過去には「血小板の大きさがネコの血栓塞栓症に与える影響について」「海産まれのサメと水槽産まれのサメの飼育難易度の比較」など、中学生とは思えない高度な研究が行われてきました。
今後は、そのゴールを高1に設定して、より長期的なプロジェクトとして発展させると同時に、大学入試の総合型選抜で武器となるような、さらに質の高い研究をめざしたいと考えています。
広野 リサーチに費やす時間が増えると、これまで以上に本格的な研究が期待できそうですね。
幸田 はい。これらは、完全中高一貫校だからこそ実現できることです。これからも6か年教育の強みを生かした取り組みを強化していきたいですね。
図書館や理科実験室を備えた
新校舎が来年10月に完成予定
サピックス教育事業本部 本部長
広野 雅明
広野 学外のコンクールや大会にも積極的にチャレンジされていますね。
幸田 先日は、高2の女子生徒4名が「第5回リアビズ高校生模擬起業グランプリ」に応募し、「高校生目線でインターネット上の誹謗中傷を解決する」をテーマにしたカードゲームの開発で金賞を受賞しました。過去には、東京農業大学オホーツクキャンパスで飼育しているエミューの油からフェイスパックを開発したチームが同大会で金賞を受賞したこともあります。ユニークな着眼点から生まれる生徒の独創的なアイデアに、さまざまな方面から高い評価をいただいています。
広野 東京農業大学のリソースを使えるというのも強みですね。
幸田 はい。全国各地にある大学の施設や農場を活用できるだけでなく、大学の先生から直接ご指導いただけることも生徒の学びにプラスにはたらいています。また、世界各国から大学に集まる留学生との交流の機会があることも、生徒の視野を広げる良いきっかけとなっています。
広野 新校舎の完成も楽しみです。
幸田 すでに第一期工事が終わり、自学自習に使えるラウンジや、生徒のクリエイティビティーを刺激する音楽室・美術室・技術室が完成しました。生徒たちは自分たちの学びのスタイルに合わせて、思い思いに利用しています。
現在は、第二期工事として、ホール・図書館・理科実験室の建設を進めています。具体的には、今まで5階にあった図書館を1階に移し、生徒にとってより利用しやすい環境を実現するほか、図書館内にICT機器をそろえて、グループ学習の拠点としても活用してもらう予定です。また、理科実験室には、最新の実験機器を導入すると同時に、教室前の廊下には標本などを展示する「サイエンスストリート」を設けます。来年10月に完成予定なので、受験生にはぜひ楽しみに入学してもらいたいですね。
広野 最後に、受験生にメッセージをお願いします。
幸田 本校が求めるのは、失敗を恐れず、何事にも前向きに挑戦する生徒です。難しい課題に直面しても、みんなと協力して乗り越えようという「共創」の気概を持った受験生をお待ちしています。