受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

School Now

(「25年11月号」より転載/25年10月公開)

晃華学園
中学校高等学校

「公民β」で制作した映像作品が
外部コンテストで最優秀賞を受賞

 晃華学園中学校高等学校では、中3の公民の授業の一環として、国際課題を題材にした映像制作に取り組んでいます。昨年は、同校の生徒による児童虐待防止の啓発動画が「第10回『世界子どもの日』人権映像コンテスト」の動画部門で最優秀賞を受賞しました。制作の過程やその教育効果について、教頭で社会科教諭の長岡仰太朗先生と、最優秀賞作品を手掛けた高1の吉田百花さん、牧野碧さんに聞きました。

グループ学習を中心とした「公民β」で
国際課題を題材にした映像制作に取り組む

左から、教頭・社会科教諭 長岡仰太朗先生、
吉田百花さん(高1)、牧野碧さん(高1)

 晃華学園中学校高等学校では、中3の公民を「公民α」「公民β」の二つに分け、社会課題について多角的な視点からアプローチする授業を展開しています。教頭で社会科教諭の長岡仰太朗先生は、「公民にもアクティブラーニング型の授業を導入したいと考え、2018年から座学を中心とした『公民α』と、グループワークを中心とした『公民β』とに分化しました。公民βは『国際の授業』とも呼ばれており、SDGs(持続可能な開発目標)や国連の仕組みなど、世界が直面する課題について学ぶのが特徴です」と説明します。

 公民βで毎年恒例の取り組みとなっているのが、ショートムービーの制作です。この活動は2019年度から毎年続いているもので、生徒たちは関心を抱いた社会課題を題材に、1分程度の動画を作成。幅広い視聴者層にメッセージを届ける目的から、映像には英語字幕も添えます。長岡先生は「字幕の部分は英語科の先生にアドバイスをもらったり、技術的な部分は情報科の先生のサポートを受けたりと、教科横断的な要素も含んでいる点が、この活動の魅力です」と話します。

 これまでは、SDGsをテーマに設定することが多かったものの、昨年は「子どもの権利条約」を題材にした映像制作に取り組みました。「子どもの権利条約」とは、1989年に国連総会で採択された人権条約で、生きる権利や成長する権利、暴力から守られる権利、教育を受ける権利など、世界中のすべての子どもたちに与えられている人権について定めたもの。生徒は、授業で「子どもの権利条約」をひと通り学んだ後に、興味のあるトピックを選択し、グループで映像制作に取り掛かります。完成した映像は、校内コンテストと並行して外部のコンテストにも出品し、客観的な視点から評価を受けることをゴールとしています。

 社会課題を提起する手法はいくつもあるなかで、同校はなぜ映像制作に力を入れるのでしょうか。その問いに対し、長岡先生は次のように答えます。「今までのようなポスター発表や、パワーポイントを使ったスライド発表以外にも、映像制作をマスターすることで表現の幅を広げてほしいと考えました。しかも、今の生徒たちは入学時から1人1台のタブレット端末を所有しています。それらのツールを駆使して映像で伝える力を高めれば、今後、彼女たちの大きな武器となるはずです」

さまざまな試行錯誤を経験することで
将来に役立つ合意形成能力を磨く

 吉田百花さんと牧野碧さんのペアが選んだ題材は「児童虐待」でした。「身のまわりで虐待を受けたという話を聞いたことがなかったので、これまで深く考えたことがありませんでした」と率直な思いを明かす吉田さん。しかし、ニュースで頻繁に虐待事件が取り上げられるのを見て、徐々にその実態が気になりだしたと言います。牧野さんも「国内の虐待件数を調べると、時代とともに増加しているように見えるのですが、それは過去の被害が見逃されてきたから。今も昔も状況は大きく変わっていないと知り、この問題を多くの人に伝えたいと思いました」と振り返ります。

 二人が動画制作を通して伝えたかったのは、児童虐待は昔からある問題だということ、そして2000年に「児童虐待防止法」が制定されて以降、虐待防止への社会的な意識が高まっているということです。吉田さんと牧野さんは、絵コンテを何度もかき直しながらわかりやすいストーリー展開を考えました。また、イラストとナレーションは牧野さん、動画編集は吉田さんというように、互いの得意分野を生かしながら役割を分担したことも作業の効率化に役立ったそうです。

 映像制作に当たって工夫した点を二人に聞いてみたところ、「児童虐待防止法が制定された前後の変化を表現するため、色調をモノクロからカラーに、画面比を4:3から16:9に変えるなど、細かい部分を作り込んだことです」と吉田さん。牧野さんも「少女の独白で話が展開していくのですが、内容を盛り込みすぎると早口になって聞き取りづらくなるので、台詞を簡潔にまとめるようにしました」と言います。長岡先生も「彼女たちの作品の強みは、情報とストーリーのバランスが取れているところ。ついメッセージを詰め込みたくなるところを、見る人の視点に立ち、適切な情報量に収めている点に感心しました」と高く評価します。

 こうして二人が完成させた映像作品『私も子供たちを助けたい』は、「第10回『世界子どもの日』人権映像コンテスト」の動画部門で最優秀賞を受賞しました。「最初は信じられなかった」と話す牧野さんですが、「友人や身内以外の人から作品を評価してもらえたことは、自信につながりました」と笑顔を見せます。吉田さんも「わたしたちが工夫した点以外にも評価されたポイントがあったと知り、うれしく思いました」と語ります。

 牧野さんは、受験生に向けて「晃華学園では、座学だけではなく、調べ学習やプレゼンテーションなど、生徒が主体的に取り組む機会がたくさんあります。将来に役立つスキルが身につくと思うので、ぜひ楽しみにしてほしいですね」とメッセージを送ります。吉田さんも「課外活動に力を入れている同級生や先輩・後輩が多く、毎日刺激を受けています。チャレンジしたいと思ったら、先生方が手厚くサポートしてくれる環境があるので、皆さんもいろいろなことに挑戦してほしいです」と語ってくれました。最後に、「人生で大切なのは、自分と異なる価値観を持った人と対話して合意形成を図ること」と話すのは長岡先生です。「映像制作をはじめとする公民βの活動を通して、これからの時代にますます必要とされる創造力や表現力を磨くことができますので、ぜひ期待を持ってご入学ください」

「公民β」の授業では、タブレット端末を使って動画を制作。映像で伝える力を身につけています

「第10回『世界子どもの日』人権映像コンテスト」表彰式の様子。吉田さんと牧野さんは、動画部門で最優秀賞を受賞しました

《学校のプロフィール》

晃華学園中学校高等学校

所在地
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