長野県松本市にある松本秀峰中等教育学校は、県内初の私立中等教育学校として2010年に設立されました。県内のみならず、さまざまな地域から生徒を集める同校では、その多様性をさらに強化すべく、2025年度募集から首都圏入試を開始。2026年度募集においても1月8日(木)に実施します。松本市の地域特性を生かした教育の特色について、教頭の高澤純先生に伺いました。
「異なる価値観」を尊重する校風
多様性を重視し首都圏入試を開始
教頭・広報運営本部長
高澤 純先生
「大きな夢と確かな知性・国際性を持ち、他の存在や異なる価値観を尊重する自由で強靭(きょうじん)な精神によって、未来の日本や世界をリードする人材の育成」を建学の精神に掲げる松本秀峰中等教育学校。多彩なバックグラウンドを持つ生徒同士の学び合いによって、一人ひとりの個性を伸ばす教育を実践しています。
同校の大きな特長として「1学年105名(2026年度募集から。それ以前は1学年80名)の少人数教育」を挙げるのは、教頭の高澤純先生です。「本校は1学年3クラス編成で、1クラス当たりの生徒数は30人前後です。その生徒たちを指導するのは、学年主任、担任、副担任からなる教員団。なかには6年間持ち上がる教員がいるなど、長期的な視点で生徒たちの成長を見守っています」と続けます。
とはいえ、小規模なコミュニティーで6年間を過ごすとなると「交友関係が小さくまとまってしまうのでは」という懸念があるのも事実。そのため、クラス替えを毎年行うほか、2025年度募集から開始された首都圏入試を2026年度募集も継続し、県外からの入学生を積極的に受け入れて、生徒の多様性も大切にしています。遠方からの入学生には専用学園寮を完備しており、現在は各学年平均2~3名が寮から通学しているそうです。松本市は、特急電車で新宿から約2時間30分という交通利便性の高い土地だと言う高澤先生は「寮には寮長・寮母が常駐していますし、何かあれば日帰りができる距離です。遠方のご家庭にも、安心してお子さんをお預けいただけるのではないかと思います」と強調しました。
異なる価値観を持つ個性豊かな生徒集団に加え、歴史や文化の息づく松本市の地域特性を生かした教育プログラムも同校の強みの一つです。たとえば、美術の時間には、国宝の松本城で写生会を行ったり、毎年8~9月にかけて開催される「セイジ・オザワ松本フェスティバル」では、本格的なオペラを鑑賞したりするなど、この土地ならではの体験が可能です。
学年ごとの宿泊行事も探究活動をベースに構築されています。1年生は、白馬三山が一望できる栂池自然園や黒部ダムを訪ね、2年生は北陸旅行に出掛けます。3年生は東京または関西に行き、それぞれの地で大学訪問や企業研修などに取り組みます。そして、それらの宿泊行事の集大成といえるのが、4年生全員で出掛けるイギリス海外研修です。約10日間、現地でのホームステイやケンブリッジ大学の学生との交流を通して、高い英語力を養うとともに異文化理解を深めます。
校舎中央に位置するアトリウムは、全校生徒が誰でも自由に使うことができる人気の学習スペース。職員室が隣接しており、気軽に質問や相談ができます
4年生の春に実施するイギリス海外研修では、ホームステイをはじめ、企業研修や学校交流、ケンブリッジ大学生との交流など、充実した研修プログラムが組まれています
学年の3分の1が医療系進路を志望
病院見学や面接指導など受験対策も万全
さて、同校は2025年度から校長にBrett Maxwell先生を迎え、さまざまな教育改革に取り組んでいます。たとえば、クラブの活動日を月・水・金曜に限定し、火・木曜の放課後は「学力強化Day」と定めました。この日には、授業の補習講座をはじめ、授業ではカバーできないハイレベルな講習など、生徒一人ひとりのレベルやニーズに合わせたプログラムを展開しています。
「放課後は教室のほか、校内の学習スペースを自由に使用できるので、『下校時間まで友だちと一緒に勉強会をしよう』という生徒も増えており、学習習慣が定着しつつあることを実感しています」と高澤先生。日常的に生徒たちの主体的な学習が繰り広げられる環境が、生徒の学力向上につながっているようです。
さらに、2026年度からは、教科を横断し幅広い学問を学際的に学ぶ「DX-STREAM」と「国際教養」を柱とする新たなプログラムを本格的に始動させていく予定です。「これらの試みを通じて、次世代に求められるクリティカルシンキングの養成に力を入れ、この先の人生を、揺るぎない自信とともに生きていけるような確かな育成ビジョンを描いていくことが目標です」と高澤先生は語ります。
例年、学年の3分の1程度が医学部医学科などの医療系学部を志望する同校では、近隣の医療機関の協力を得て、病院見学や医師の講話を聞く機会などを設けています。また、志願理由書や面接の指導など、医学部に特化した受験対策についても手厚くフォローしています。県内の信州大学とのつながりも深く、教授による特別講義や研究機関との交流を通して、アカデミアの世界に対する生徒の興味・関心を高めているのも、同校のキャリア教育の特色の一つです。
2026年度 生徒募集要項(特待生入試)
| 入試日 | 2026年1月8日(木) |
| 合格発表 | ホームページで即日(19:00発表) |
| 試験科目 | 算数(50分・100点)、国語(50分・100点) |
試験会場 (首都圏) | アルカディア市ヶ谷 東京都千代田区九段北4-2-25 |
| 入学審査料 | 25,000円 |
※特待生合格のほか、一般合格を出す場合があります
2025年度大学入試では、国公立大学に39名、早慶上理に20名、医学部医学科に10名が合格しました。生徒一人ひとりに寄り添うていねいな進路指導によって、それぞれの希望進路を着実に実現させていることがうかがえます。
最後に、高澤先生は、「本校は、皆さんの『もっと知りたい』『学んでみたい』という気持ちを思い切り伸ばせる学校です。授業のみならず、各種行事やさまざまな生徒活動を通して、人間性の部分もバランスよく育てたいと考えています。機会がありましたら、松本まで足を運んでいただき、学校の雰囲気や周辺環境の豊かさを肌で感じてもらえたらうれしいです」とことばを結びました。