市川中学校・高等学校では、松尾芭蕉の句「よく見れば なずな花咲く 垣根かな」にある個性尊重の精神を土台に、生徒一人ひとりの良さを伸ばす教育を実践しています。文化祭「なずな祭」も、生徒の個性が発揮される場の一つです。2025年度なずな祭実行委員長の田辺誠さんと広報部長の中川空さんに、文化祭運営の工夫点や同校の魅力について語っていただきました。
「1クラス1展示」が特色のなずな祭
生徒の多彩な個性が集結する空間に
左から、なずな祭実行委員広報部長 中川 空さん(高2)
なずな祭実行委員長 田辺 誠さん(高2)
─2025年度のなずな祭が9月20日・21日に行われました。その特色について教えてください。
田辺 なずな祭は、市川学園を代表する学校行事の一つです。「1クラス1展示」を義務づけているのが特徴で、中1から高2までのすべてのクラスが一丸となって、趣向を凝らした企画や装飾を披露します。
2025年度のテーマは「なずな一番街」でした。なずな祭は、ジャンルの異なる個人商店が一か所に集まる商店街のようなもの。どの団体もいかんなく個性を発揮してほしいという願いと、それぞれがナンバーワンであるという意味を込めて、“一番街”と名付けました。
中川 なずな祭の運営には、約150名の中高生が実行委員として携わっています。実行委員会を構成するのは、本部、広報部、イベント部、食品部、展示部、会計部、装飾部、物販部の8部門。どの部門も高校生が中心となり、約1年かけて準備を進めていきます。
─お二人が実行委員会に入った時期やきっかけ、具体的な仕事内容を聞かせてください。
田辺 クラス展示を作る立場だった中学生のころから、既存のルールについて「ここはこうしたらいいのに」という思いがありました。改善していくには、実行委員会に入るしかないと考え、中3のときに実行委員会に入り、高2のときに委員長に立候補しました。
ぼくは自他ともに認める改革派です。少しでも改善の余地があると感じたルールには、積極的に手を加えていきました。運営組織が大きい分、全体の意見をまとめるのには苦労しましたが、何度も話し合い、着地点を探っていったのは良い経験となり、思い出としても残っています。
中川 わたしは高1からです。第一志望の役職はクラス展示の係だったのですが、希望者が殺到したため、仕方なく実行委員会に回ることに。初めは消極的な気持ちでしたが、実際に携わってみると、思っていた以上にやりがいのある仕事で、気づけば夢中になっていました。
広報部長として手がけたのは、パンフレットやポスターの制作、SNSの発信、委員制服のデザインや発注などです。もともとクリエイティブな作業が好きな自分にはぴったりの役職で、時間に追われながらも充実した毎日を過ごすことができました。
スポンサー募集、装飾予算の強化など
新しい試みを次々と実現につなげる
スポンサーの協賛金で制作した「なずな祭オリジナルウォーター」。来場者に配布して好評を得ました
─2025年度なずな祭には、例年にない新しい試みを多く取り入れたと伺いました。
田辺 今回のなずな祭のなかで最も大きな挑戦が、スポンサー企業を募ったことです。ぼくが実行委員長に任命された2024年秋から提案を続けていたのですが、実際に学校の許可が下りたのは2025年の8月末。そこから起業されている市川の卒業生にアポイントを取り、歯科医院や飲食店など八つのスポンサーから協賛をいただくことができました。協賛金はオリジナルウォーターの制作費に充て、なずな祭当日に、駅からバスを使わず徒歩で来校された方への記念品として配布しました。
中川 ほかにも、教室装飾の予算をアップし、各クラスの飾り付けに使用できる木材を増やしたほか、保健所の指導の下、感染症対策のため厳しく制限していた模擬店の食品提供ルールを大幅に緩和しました。また、文化祭実行委員5名による小学生向けの受験相談コーナーも新設。どの試みも非常に好評でした。
─先生方はどのようにかかわってくださるのですか。
田辺 企画の大枠は生徒主体で考えるのですが、月に一度、先生と実行委員会による進捗報告会があり、そこで情報共有をしていました。先生方は、生徒だけでは気づかない細かい問題点やリスクを鋭く指摘してくださったので、非常にありがたかったです。
中川 各部門から挙げられる要望の多さにあたふたするわたしに、先生は「すべてを取り入れる必要はない。優先順位をつけて進めるべき」と助言してくださいました。困ったときには、すぐに的確なアドバイスをくださるので、とても心強かったです。
─お二人は、実行委員の仕事から、どのような学びを得ましたか。
田辺 あきらめない力が身についたと思います。難しい課題でも、わずかな可能性を信じて挑戦することが大事なのだと気づきました。また、チームで仕事をするなかで最も実感したのが、仲間を信じることの大切さです。まずは仲間を信頼しなければ、仕事も組織もスムーズに回っていかないことを学びました。
中川 自分の好きなことや得意なことが明確になりました。実行委員会の活動に限らず、これまで5回のなずな祭を経験してきたなかで、わたしは創造的な活動に強みがあることを認識することができました。これも、一人ひとりの個性を尊重し、最大限に伸ばすことを主眼に置いたなずな祭だからこそ、得られた気づきなのだろうと思います。
─最後に、これから入学を考えている受験生に向けて、メッセージをお願いします。
田辺 本校にはなずな祭以外にもさまざまな行事がありますが、いずれも生徒主体で盛り上げていくものばかりです。そのため、自主性が身につきますし、探究心が養われます。受験生にはぜひ、自分のやりたいことに果敢に挑戦してほしいと思います。
中川 何かとチャレンジする機会が多い学校です。「やってみたい」という気持ちさえあれば、先生方がうまくサポートしてくださいますので、ぜひ安心して入学してほしいですね。
4階まで吹き抜けのコミュニティープラザ。Nステ(なずなステージ)ではダンスやライブ演奏が行われました
クラス展示の装飾のクオリティーの高さは、なずな祭の伝統。予算がアップして木材の量が増え、さらに充実