暁星学園は、1888年の創立当初からキリスト教の理念に基づく人格教育、社会に貢献するための人間教育を実践しており、ボランティア活動にも力を注いでいます。昨年の夏、能登半島地震の被災地ボランティア活動に参加した笠井悠雲(ゆくも)さん(高2)と工藤昊(こう)さん(高1)に、現地での活動内容やその成果などについて聞きました。
力を合わせることの大切さを
被災地の現場で身をもって感じる
左から、笠井悠雲さん(高2)、工藤昊さん(高1)
─なぜお二人は被災地ボランティア活動に参加しようと考えたのですか。
笠井 2025年の夏、8月1日から3泊4日で能登半島地震の被災地での活動に5名で参加しました。きっかけは6月の修学旅行で北海道に行き、有珠山の噴火について学ぶ施設を見学したことです。実際に噴火が起きた場所に立ち、倒れた木や土砂崩れの跡を見て自然災害の恐ろしさを実感しました。その後、夏前に能登でのボランティア活動の募集を知り、自分にできることがあれば協力したいと思い参加しました。
工藤 ぼくは暁星の「シャリテ委員会」というボランティア団体でも活動しています。その委員会に、一昨年、能登のボランティアに参加した先輩がいて、話を聞いたことが大きなきっかけです。また、将来は慈善活動にかかわる仕事がしたいという思いがあり、被災地の現場を自分の目で見て体験したいと考えて参加を決めました。
─被災地に着いたときの印象や現地での活動内容を教えてください。
笠井 高速道路を降りて輪島の街へ向かう途中は、「意外と復興しているな」と感じました。一見すると被災の様子はあまりわかりませんでしたが、街に入ってよく見ると山の斜面が崩れていたり、道路が工事中だったりと、傷跡が生々しく残っていました。
工藤 輪島市内の重蔵(じゅうぞう)神社に設営されたゲルテントを拠点に活動しました。倒壊した建物のコンクリートを砕いて集積所に持っていく作業や境内の掃除をしました。ぼくも、地震直後にニュースなどで見た景色や1年前の先輩が行ったときの写真と比べると「復興は進んでいるな」と思う一方で、実際にハンマーでがれきを砕いていると、自分たち一人ひとりの力の小ささを感じました。でも、その小さな力の積み重ねが今の景色をつくっているのだと自分に言い聞かせ、ハンマーを振るい続けました。
─現地の方々との交流でどのようなことを感じましたか。
工藤 現地のボランティア団体の方と一緒に作業を行いましたが、一日にできる量は限られていました。2024年元日の地震から約1年半でここまで復興した背景には多くの人の努力があったことを身をもって知りました。
笠井 ほかの団体や近所の住民の方が差し入れをしてくださり、自家製の梅干しもいただいたりして、人と人とのつながりを強く感じました。
工藤 東京に出ていた若者が輪島のために戻ってきたという話を聞き、その「地元愛」に心を打たれました。海外在留経験もある転勤族の子どもとして育ったぼくにとって初めて触れる感覚で、とても温かい気持ちになりました。そういう人たちを支える仕事がしたいとあらためて思いました。
笠井 砕いたコンクリートを集積する場所へ向かうトラックの中で団体の方々から、これまでの活動やこれからの復興についての話を聞くことができました。「トラックに乗りたい人は乗っていいよ」と声を掛けられたときに「乗ります」と自分から手を挙げたことで、現地の方の話を聞く機会が生まれたのです。みずから積極的に動くことの大切さを実感しました。
中高時代の多くの経験を
それぞれの将来につなげていく
─今回の経験を今後どのように生かしていきたいですか。
工藤 シャリテ委員会で募金活動などは経験していましたが、被災地での活動は能登でのボランティアが初めてでした。現地では、募金の使われ方なども知って、自分たちの今までの取り組みが誰かの役に立っていることがわかりました。自分一人の力は小さくても、力を合わせることの大切さも実感しました。これからの活動もきっと誰かの力になることができると思うので、活動により力を入れ卒業後も続けていきたいと思います。将来について考える大きな経験になりました。
笠井 ぼくはこれまでボランティア経験がなく、ボランティア自体が遠い存在だと思っていましたが、今回の経験で身近になりました。将来は制度や仕組みを整えることによって子どもを支える仕事をしたいと考えています。昨年の10月から子ども食堂のボランティアを始めました。現場で子どもや保護者の方とかかわりながら学んでいます。能登での経験があったからこそ新たな一歩を踏み出せました。
─暁星の魅力を含めて受験生へのメッセージをお願いします。
工藤 暁星はボランティア活動が盛んで、フランス語教育など語学も充実しています。ぼくは帰国生入試で入学してフランス語部に入り、部長も務めています。暁星でしかできない経験がたくさんあります。学校生活のなかでミサにあずかることも貴重な経験です。やりたいことを実現したいという気持ちを持って入学してほしいと思います。
笠井 中高6年間、一つのことに本気で打ち込める環境が暁星にはあります。ぼくが部長を務める競技かるた部は、全国大会優勝回数最多の強豪で、子どもたちにかるたを教える活動もしています。仲間や先生方の温かさは、キリスト教教育のなかで育まれていると感じます。勉強だけでなくボランティアや部活動の経験は、きっと社会に出たときの力になると思います。
活動の拠点となった重蔵神社。境内の清掃も行いました。現地の方々とも交流し、被災地の声を聞きました
解体された家屋の跡地を、協力して整地しました。力を合わせることの大切さを、身を持って知ります