受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

自慢の授業

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2026年7月号から転載

「難しい=嫌い」となりがちな評論文を
実体験に落とし込みながら考える

(写真の説明)

国語科の亀谷粧子先生は、「恵泉生の特徴は、正解がない問いに慣れていること。多様性を受け入れる校風が息づいています」と笑顔で話します

「自ら考え、発信する力」を養う教育を実践する恵泉女学園中学・高等学校では、国語を「生きるための力を学ぶ教科」と位置づけ、読解力を鍛え、語彙力を高めることはもちろん、「自分の考えを相手にわかりやすく伝える」ことを意識させる授業を展開しています。

編集部が訪れたのは、高1の「現代の国語」の授業です。フランス文学者・内田樹氏による評論文「ことばとは何か」を題材に、その読み解き方を学んでいきます。“もの”には名前があり、一般的には「まず、ものが存在し、その後に人がものに名前を付ける」と考えがちですが、筆者はそれに反論し、「名付けられることによって、初めて“もの”は意味を確定する場合もある」と展開していく内容です。

この日は先生から事前に出された問い「筆者が文章中で示した“もの”に複数の名前が付いている具体例を、ほかにも挙げてみる」という課題に対する回答から始まりました。

生徒たちは机の上に用意した端末で、自分が考えてきた単語をロイロノート・スクールに記入していきます。「見る=watch see look」「米は脱穀した生の状態、ごはんは炊いた状態」「日本では、鰤(ブリ)=ハマチ=メジロ。英語ではyellowtail」など、共有画面に次々上がってくる回答を見て、「おもしろいことに気づいたね」「ドイツ語まで調べたの?」と教室から声が上がります。一方、先生が例に挙げたのは「トイレ」です。「厠、手水、御手洗い、便所、restroom、lavatory、toilet、bathroom、washroom」と日本語だけではなく中国やアメリカ、イギリスなどで使われていることばについて、文化や風土・歴史的背景も踏まえながら、“もの”に対する感じ方や見方で、名前や使われ方に違いが生じることを紐解いていきます。

さらに、授業プリントの問いは「筆者は具体例を示すことで何を説明しようとしているのか」「筆者の言う“言語活動”とはどのようなものか」と続きます。

45分間の授業が終わりに近づき、「最終的に筆者が言おうとしていることは?」と授業を担当する亀谷粧子先生が問い掛けると、あちらこちらから意見が出ます。最終的には一人の生徒が発した「ある“もの”が存在することに変わりはなくても、その“もの”にことばが付けられるときには、ことばを付けた側の文化や思想が反映される。『ことばの意味は変わらないが、ことばの価値は変わってくる』ということだと思う」との意見に、賛同が集まりました。

単元の最終回となったこの日の授業。終盤では過去の授業で考えた問いの振り返りも行いながら、「ことばの“語義”は絶対的なものとして規定されていくが、その“価値”は相対的に考えられて定まるものであるならば、“もの”は語の価値が確定した後に誕生する」との結論にたどり着くことができました。

恵泉女学園中学・高等学校 海外研修の様子

テクニック重視では磨かれない
意図を読み解き、結論に結びつける力

(写真の説明)

筆者の意見や主張を読み解く評論文は、たとえ読書が好きな生徒でも得意とは限りません。「高校で扱う評論文は、文字数が増えるだけではなく、題材が難解になるので、高い語彙力が不可欠です。抽象度も一気に上がるので、ほとんどの生徒が戸惑います」と亀谷先生は話します。受験対策としては、「接続詞に注目」「主張を探す」といったテクニックが重視されますが、「書き手が伝えたいことを理解するには、自分の知識・経験と結びつけて考えることが有効な場合もあります。筆者がなぜそのことばを選んだのか、どのような意図で表現しているのかに意識を向けることで、主張と結論を結びつける力を養います」と、授業の狙いを説明します。

授業では、生徒同士が意見を共有し、多様な考え方に触れることも大切にしています。「生徒が意見を出すまで粘り強く待つことを常に心がけています。とはいえ、そういった授業が成立するのは、安心して発言できる雰囲気があってこそ」と亀谷先生。礼拝での「感話」をはじめ、読んだ本について評価や気づきを記録する「読書ノート」や、新聞記事から社会問題に目を向け、ディベートや新聞づくりへと発展させるNIE(Newspaper in Education)の授業など、「思考を深め、意見を伝える学び」は中学段階から整えられているとのことです。

最後に、亀谷先生は受験生に次のようなメッセージを送りました。「相手の意図を読み取り、自分の考えを相手に伝わる形で表現する力は、受験だけではなく、生きるための力になります。これからも、多様な価値観に触れる学びを大切にする学校でありたいと考えています」

  • (写真の説明)

    高校からは、生徒自身が所有するノートパソコン・タブレットなどの端末を使うBYOD(Bring Your Own Device)を導入。各自の回答や意見は画面上で共有されます

  • (写真の説明)

    教科書を再読したり、端末で検索したりしながら、活発な意見交換が行われます

  • (写真の説明)

    誰かがささやいた一言も、先生は聞き逃しませ

  • (写真の説明)

    斬新な発想や納得させる意見には、拍手が送られます

女子校 私立 東京

恵泉女学園中学・高等学校

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