受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ何でも相談室

 サピックスに通う以外に、習い事や趣味に打ち込んでいるお子さんは多くいます。親としては、学習との両立、時間の使い方や切り替え方が気になるところですが、打ち込めるものを持っていることも大切です。趣味や習い事を通して得られる成功体験や、学習にもたらす効果などについて、高田馬場校校舎責任者にアドバイスをいただきました。

第169回「趣味や習い事と学習を両立させ、
うまく切り替えるには?」
回答者/高田馬場校校舎責任者

好きなことに打ち込みながら
学習への切り替え方を身につけていく

 趣味や習い事と学習との両立について、保護者の方から相談を受けることがあります。学年によって向き合い方は変わると思いますが、4年生くらいまでは、両立させるというよりも、むしろ学習以外にも打ち込めるものを持っていることを大切にしてほしいと考えています。何かに一生懸命取り組めるお子さんは、学年が上がると学習に対する気持ちも高めていけるのです。何かに打ち込むことは、気持ちの切り替え方、スイッチの入れ方を身につけることにつながるともいえます。
 「帰宅し、家庭学習を始めようと机に向かっても、ぼーっとしている時間があります」という相談もあるのですが、朝から午後まで学校で過ごし、帰宅してすぐに家庭学習というのもなかなか難しいものです。ぼーっとしている時間は、子どもなりの「切り替え時間」だと考えます。保護者の方としては、この何もしていないような時間が目に留まって気になるかもしれませんが、「切り替え時間」だと理解して、見守っていただきたいと思います。
 複数の習い事を続けているお子さんも多いのですが、ほとんどの場合はやらされているのではなく、自分でやりたくて続けているようです。好きで打ち込んでいることなので、勉強の気分転換にもなります。たとえば野球が好きなら、バットの素振りをしてリフレッシュしてから家庭学習を始めるなど、好きなことに取り組んでから学習に向かうスイッチを入れられるようになるとよいでしょう。
 多くの受験生が「受験」に向けて気持ちを切り替えられるのは、6年生の秋ごろからです。野球やサッカーなどを6年生の夏まで続けるお子さんもいますが、好きなことをやり切って、秋以降「ここから勉強だ」と切り替えることができているように感じます。つまり、何かに打ち込めるお子さんは、やるべきことを自覚して気持ちを切り替える力も身につけているのだと思います。

趣味や習い事で得た成功体験は
学習面での取り組みにも生かされる

 好きなものがあることは、学校選びにも前向きな気持ちをもたらすでしょう。野球が好きであれば「あの学校の野球部でプレーしたい」、電車が好きなら「あの学校の鉄道研究会に入りたい」などの目標ができます。そして、「合格するためには勉強が必要だ」という目的意識を持ち、学習意欲の向上にもつながっていきます。
 趣味や習い事に打ち込むなかで得られる成功体験も大切です。「スポーツの試合で活躍して勝った」「ピアノの発表会で賞をもらった」などの経験から子どもが得るのは、「うれしい」という達成感だけでなく、「こういう取り組み方をするとうまくいく」「ここでがんばれば良い結果につながる」と考えられるようになることです。趣味や習い事などで得たこうした経験は、学習面でも必ず生きてくると思います。
 時間の使い方という面でも良い効果があります。たとえば、「明日は野球の練習があるから、今日は勉強しておこう」と考えるなど、趣味や習い事に集中して取り組むためにも、限られた時間のなかで「ここまではやろう」という意識が芽生えます。
 保護者会などでは、「効率の良い勉強法」についてもよく聞かれます。効率だけを求めてはいけませんが、やはり時間を決めて取り組むことは大切です。机に向かっている時間が長ければよいわけではなく、短い時間であっても、「ここまではやろう」と集中して学習することが重要です。この習慣を身につけるためにも、趣味や習い事に打ち込むことは有効だと思っています。
 新年度が始まるこの4~5月は、学校でもサピックスでも新しい環境がスタートします。6年生は「いよいよ受験学年」というモードになりますが、ほかの学年は、同じ学校、同じ塾のなかで「学年が一つ上がるだけ」と思われがちです。しかし、5年生は「いよいよ高学年」という意識が本人のなかに芽生え、新学年の環境に慣れるための見えない緊張感を抱えているかもしれません。そんな時期だからこそ、好きな趣味や習い事に打ち込める時間を大切にして、子どもなりの「切り替え時間」を温かく見守っていただきたいと思います。

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