受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

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私立校・国立校とはどう違う? 適性検査の対策は?

 公立中高一貫校は、学校教育法の改正によって、1999年に制度化されました。それ以来、次々に開設され、現在では全国で100校以上設置されています(連携型を除く)。首都圏でも公立の伝統校が一貫校に改組され、その数が増加してきました。難関大学への合格実績でも一定の成果を残しているため、中学受験の選択肢の一つとして定着しています。ここでは、公立中高一貫校の特徴、入学者の選抜方法とその対策について紹介します。

難関大学への合格実績から
高い応募倍率が継続

 公立中高一貫校の入学者選抜には、毎年多くの受検生が挑戦しています。現在、首都圏(1都3県)には全部で23の公立中高一貫校がありますが、各校に共通しているのが応募倍率の高さです。

 特に高いのが千葉県の学校で、2023年度は、県立東葛飾中が9.9倍、県立千葉中が7.1倍となっています。一方、千葉市立稲毛高等学校附属中から名称変更し、昨年度から段階的に完全中高一貫校に移行している市立稲毛国際中等教育学校は、2023年度は5.3倍でした。

 神奈川県では、県立相模原中等教育学校が6.1倍と、昨年同様、県内で最も高くなっていました。横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校附属中が5.8倍で続き、横浜市立南高等学校附属中が5.4倍、川崎市立川崎高等学校附属中が4.9倍、県立平塚中等教育学校が4.6倍となっています。

 埼玉県を見ると、さいたま市立浦和中が8.0倍で、高い応募倍率を維持しています。川口市立高等学校附属中は5.2倍、県立伊奈学園中は4.6倍、さいたま市立大宮国際中等教育学校は4.3倍となっています。

 合わせて11校の公立中高一貫校がある東京都では、受検生が分散するため、全体的に応募倍率は落ち着いています。最も高かったのは、5.8倍の都立三鷹中等教育学校でした。そして、都立桜修館中等教育学校(5.4倍)、千代田区立九段中等教育学校区分B(千代田区民以外の都民が対象、5.1倍)が続きます。都立小石川中等教育学校の一般枠は4.7倍でした。

 2022年度から高校募集を停止し、中学校の募集定員を増やした都立両国高等学校附属中と都立大泉高等学校附属中は、それぞれ4.8倍、4.6倍でした。同じく2023年度から高校募集を停止し、附属中の募集定員を拡大した都立白鷗高等学校附属中の一般枠も4.4倍と、やや緩和されています。これで、併設型の5校すべてで高校募集がなくなりました。

 私立と同様、公立中高一貫校の人気に影響を及ぼすのは、難関大学への合格実績です。今春の東大への合格者数(浪人を含む)※を見てみると、県立千葉高等学校が25名、都立小石川中等教育学校が16名、横浜市立南高等学校が12名、都立武蔵高等学校が9名、千葉県立東葛飾高等学校が9名の合格者をそれぞれ輩出しています。このように、多くの公立中高一貫校が一定の合格実績を残しているため、今後も人気は続いていくと思われます。

※併設型の場合は、高校からの入学者の実績を含む。中学からの入学者が卒業を迎えていない学校は除く。

首都圏1都3県の公立中高一貫校
(2023年度現在)

開校年 学校名
03年 埼玉県立伊奈学園中学校(伊奈町)
05年 都立白鷗高等学校附属中学校(台東区)
06年 千代田区立九段中等教育学校(千代田区)
都立桜修館中等教育学校(目黒区)
都立小石川中等教育学校(文京区)
都立両国高等学校附属中学校(墨田区)
07年 さいたま市立浦和中学校(さいたま市浦和区)
千葉市立稲毛高等学校附属中学校(千葉市美浜区)
※2022年度より千葉市立稲毛国際中等教育学校に移行
08年 千葉県立千葉中学校(千葉市中央区)
都立立川国際中等教育学校(立川市)
都立武蔵高等学校附属中学校(武蔵野市)
09年 神奈川県立相模原中等教育学校(相模原市南区)
神奈川県立平塚中等教育学校(平塚市)
10年 都立大泉高等学校附属中学校(練馬区)
都立富士高等学校附属中学校(中野区)
都立三鷹中等教育学校(三鷹市)
都立南多摩中等教育学校(八王子市)
12年 横浜市立南高等学校附属中学校(横浜市港南区)
14年 川崎市立川崎高等学校附属中学校(川崎市川崎区)
16年 千葉県立東葛飾中学校(柏市)
17年 横浜市立横浜サイエンスフロンティア
高等学校附属中学校(横浜市鶴見区)
19年 さいたま市立大宮国際中等教育学校
(さいたま市大宮区)
21年 川口市立高等学校附属中学校(川口市)

首都圏1都3県の公立中高一貫校
 サピックスからの合格実績

学校名 開校年 21年 22年 23年
都立桜修館中等教育学校 06年 8名 15名 10名
都立大泉高等学校附属中学校 10年 3名 2名 1名
都立小石川中等教育学校 06年 35名 36名 51名
都立立川国際中等教育学校 08年 0名 1名 0名
都立白鷗高等学校附属中学校 05年 2名 0名 3名
都立富士高等学校附属中学校 10年 2名 2名 5名
都立三鷹中等教育学校 10年 9名 9名 4名
都立南多摩中等教育学校 10年 0名 0名 1名
都立武蔵高等学校附属中学校 08年 9名 15名 9名
都立両国高等学校附属中学校 06年 3名 7名 3名
千代田区立九段中等教育学校 06年 7名 16名 13名
神奈川県立相模原中等教育学校 09年 7名 13名 5名
神奈川県立平塚中等教育学校 09年 2名 0名 0名
川崎市立川崎高等学校附属中学校 14年 2名 0名 0名
横浜市立南高等学校附属中学校 12年 9名 9名 13名
横浜市立横浜サイエンス
フロンティア高等学校附属中学校
17年 7名 9名 7名
千葉県立千葉中学校 08年 27名 28名 26名
千葉県立東葛飾中学校 16年 18名 11名 9名
千葉市立稲毛高等学校附属中学校/
千葉市立稲毛国際中等教育学校
07年 7名 14名 16名
埼玉県立伊奈学園中学校 03年 0名 0名 0名
川口市立高等学校附属中学校 21年 4名 4名 1名
さいたま市立浦和中学校 07年 6名 5名 6名
さいたま市立大宮国際中等教育学校 19年 0名 3名 0名
23校計 167名 199名 183名

学費の安さは大きな魅力だが
指導体制が未知数のケースも

 安定した進学実績も魅力ですが、公立中高一貫校のいちばんの魅力は、なんといっても学費の安さでしょう。公立中高一貫校の場合、中学校に当たる最初の3年間は義務教育のため、授業料は無料です。高校では、2014年度から始まった「高等学校等就学支援金制度」により、年収がおおむね910万円未満(「モデル世帯」の場合)の世帯には、公立高校の授業料に相当する月額9900円が支給されます(国立・私立の高校でも同じ条件で支給。私立の場合は、年収がおおむね590万円未満の世帯では支給額を加算)。一般の公立中学・高校と同じ負担で、私立と同じような一貫教育を受けられるので、公立中高一貫校に人気が集まるのも納得できます。

 私立校を第一志望にしている受験生が、公立校を併願するケースも珍しくありません。また、私立校は受けず、公立中高一貫校を第一志望にして、もし不合格なら地元の公立中学に進学させるという方針のご家庭もあります。

 しかし、開設されて間もない学校もあり、指導体制などが未知数であるケースも考えられます。また、さまざまな決定事項が行政に委ねられているため、カリキュラムや選抜方法などに学校現場の意向がなかなか反映されないという面もあるので、きちんと情報を集め、十分に検討することが大切です。

学校ごとに打ち出された
特色のある取り組みに注目

 では、公立の中高一貫校は、実際にどのような教育を行っているのでしょうか。主な学校の教育方針や特色のある取り組みを見てみましょう。

 都立小石川中等教育学校や都立両国高等学校附属中などは、充実した国際理解教育が魅力といえます。海外での研修のほかに、留学生とのディスカッションなど国内での国際交流プログラムもあり、高い語学力とグローバルな視点を養っています。

 また、都立武蔵高等学校附属中や千代田区立九段中等教育学校は、6年間を通して、生徒のキャリアデザインを支援する態勢を整えているのが特徴です。「職場訪問・体験」「進路講演会」を行うなど、中学生のうちから将来への意識や関心を高め、主体的に進路を選択できる力を育てています。

 日本の伝統文化を積極的に取り入れた、教育を特徴とするのは、都立白鷗高等学校附属中です。中学の授業では地域を巡り、高校では地元の伝統的な行事に参加するなど、地域との連携により、伝統や文化に触れる貴重な機会を設けています。

 また、県立千葉中では、総合的な学習の時間に、実社会への共感力と社会貢献の志を育て、社会のなかで自己実現を遂げる意欲を高める「プロジェクト」を実施しています。

 このように、公立校でも、中高一貫校は学校ごとに特色を打ち出しています。志望校を選ぶ際には、教育方針やカリキュラムなどをしっかり確認してください。

23年10月号「そこが知りたい!」シリーズ Vol.4:
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