受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

鹿児島県立楠隼中学校

2023年10月4日(水)

企業・大学と連携した「宇宙学」に、新たな人材育成プログラムを導入

 2015年に開校した鹿児島県立楠隼(なんしゅん)中学校・高等学校は、公立中高一貫校としては全国初の全寮制男子校です。県東部の大隅半島にある肝付町の豊かな自然に恵まれたキャンパスで、「大志」「叡智」「至誠」の校訓の下、世界を見通す次世代型リーダーの育成をめざしています。

 この日のオンライン説明会の冒頭で、教頭の上野宏樹先生は「令和5年6月14日の鹿児島県議会定例会にて、鹿児島県知事が、①令和8年度に入学する中学生から段階的に、楠隼の特色ある教育活動を女子生徒や自宅から通学を希望する生徒にも受ける機会を拡げるということ。②寮への女子生徒の受け入れについて、その開始時期などについてはていねいに検討を進めること。③令和11年度から、高校については楠隼中学校卒業生以外の受け入れは行わない」と発表したと述べ、続けて学校の特色と教育活動について説明しました。

 同校では、年長者が年少者を導く薩摩藩の「郷中(ごじゅう)教育」を手本に、寮を中心とした学校生活のなかで上級生が下級生を指導しています。上野先生は、全校生徒の約4割を県外出身者が占めていることに触れ、「出身地や年齢が異なる生徒が集団生活をしているため、それぞれの違いを受け入れて個々の能力を生かしながら課題解決を図る“ダイバーシティ”の力を身につけられるのです」と強調しました。

 次に、中1~高1で実施される「シリーズ宇宙学」の説明がありました。これは、同じ肝付町内に宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット打ち上げ施設「内之浦宇宙空間観測所」がある立地を生かし、JAXAと連携して行う授業です。中学では学年ごとのテーマに沿って課題研究に取り組み、高1になると「宇宙生命系」「航空工学系」「宇宙開発系」「応用工学系」の4コースに分かれて、みずから設定した課題について研究を深めていきます。上野先生は「高校の『シリーズ宇宙学』では、今年度から宇宙スタートアップ企業と連携した人材育成プログラムが始動しました。宇宙開発の第一線で活躍する企業の技術者による全4回の特別講座を宇宙学のコース選択に役立て、さらに進路選択や将来の宇宙ビジネスにかかわる人材育成につなげることを目的としています」と話しました。

 このほかにも、さまざまな分野の第一人者を講師に招いて行う「トップリーダー教室」、九州大学で最先端の研究にかかわる講義を受講する中2対象の「フロントランナーとの出会い」、中3はアジア圏に、高2はアメリカに行く「海外大学企業連携研修」など、産業界や国内外の大学と提携した多彩なプログラムが設けられています。

 寮生活の紹介は、広報担当の黒石遼也先生が担当しました。併設の楠隼寮のうち1棟は大学受験を控えた高3専用となります。残りの5棟では中1から高2までが混ざり合って生活していますが、全室が個室でプライベート空間も確保されています。夜の学習時間には、タブレットを使った映像コンテンツによる自主学習や、学習指導員による質問対応も行われているそうです。黒石先生は「自立心が養える環境がある」「通学時間を削減して有意義な時間を過ごせる」といった寮生活のメリットを挙げたうえで、「各棟でチームを作って競技に挑む『寮マッチ』などの寮の行事もあります。6年間、生徒たちは最高の仲間と衣食住を共にし、日々切磋琢磨しながら絆を深めています」と語りました。

 2024年度入試は、本校・東京・大阪・福岡・鹿児島の計5会場で1月21日に実施され、東京は例年どおり「都道府県会館」が会場となります。募集人数は60名で、適性検査Ⅰ・Ⅱと集団面接で総合的に合否を判定するとのことです。

 最後に、スライドを交えながら今年度の行事報告がありました。中高合同で行う文化祭、高校のクラスマッチ、体育祭、肝付町内の三岳登山などのほか、大隅や鹿児島の歴史・文化を学ぶ「ディスカバリー大隅」「ディスカバリー鹿児島」などの魅力的な体験活動もあります。このように、地域と密着した行事が多いことも特徴です。開校当初から、鹿児島県発祥の武芸である薬丸野太刀自顕流(やくまるじげんりゅう)を中1の授業に取り入れていることも伝えられました。

イメージ写真 開校から9年目となる同校。東京大学に3年連続で合格者を輩出するなど、国公立大学への合格実績も伸ばしています

www.edu.pref.kagoshima.jp/sh/nansyun/ 別ウィンドウが開きます。

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