受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く

2025年に「国際教養クラス」を新設 受容力のある学びを展開し
多様化する生徒のニーズに応える

 今年で創立120周年を迎える山脇学園中学校・高等学校では、教科横断型のカリキュラム「総合知」を中心に、生徒の可能性を引き出す多彩な仕掛けを用意しています。2025年に高1に設置予定の「国際教養(ILA)クラス」もその一つ。高い英語力を武器に、総合型選抜や海外大学をめざす生徒を後押ししていきます。これらの狙いについて、校長の西川史子先生、教頭の鎗田謙一先生、グローバル教育部部長の髙瀬聡伸先生に伺いました。

山脇学園中学校・高等学校
左から:
校長 西川 史子先生
 教頭 鎗田 謙一先生
 グローバル教育部部長 髙瀬 聡伸先生

教科横断型の「総合知」で
社会で役立つスキルを養成

サピックス小学部 教育情報センター本部長 広野 雅明サピックス小学部
教育情報センター本部長
広野 雅明

広野 今年で「総合知」がスタートして3年目を迎えます。具体的な取り組みについて教えてください。

西川 これまで本校では、ネイティブの英語教員と気軽にコミュニケーションが楽しめる「イングリッシュアイランド」や、最新機器をそろえた顕微鏡室や研究室を配置した「サイエンスアイランド」と呼ばれる施設を活用した、いわゆる「アイランド教育」に力を入れてきました。しかし、いずれも英語と理科という一つの教科に特化したもので、それらの学びはいわば“点と点”の状態でした。これらを1本の“線”でつなぎ、教科横断的なカリキュラムとして再構築したのが「総合知」です。

広野 学んだことがそのまま社会で役立つような、実践的な内容を取り入れているとお聞きしました。

鎗田 そのとおりです。自然科学・人文科学・社会科学の各分野の視点を融合したプログラムで、社会で活躍するうえで必要不可欠とされるスキルを養成しています。たとえば、技術家庭科では、IoTを取り入れた授業を行っています。IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」のことで、インターネットを介してモノとモノ、モノと人をつなぐという概念です。具体的には、オブナイズと呼ばれるマイコンボードにセンサーやモーターをつないで、生徒たちのタブレットから遠隔地点の温度を確認したり、ロボットを動かしたりしながら、その仕組みを学びます。マイコンを動かして終わりではなく、中3の探究基礎では、収集したデータをエクセルに入力し、グラフや分布図の作成までを生徒の手で行います。棒グラフや円グラフといった初歩的なものから、ヒストグラムや箱ひげ図のような高度な処理まで、中学生のうちに学びます。

広野 大人顔負けの本格的な情報処理を行うのですね。

西川 こういう話をすると、受験生のお父さま方はとても興味を持たれます。「中学校でそんな高度なことをやっているんですか」と。学校教育に対して「学校で学ぶ内容は、社会の役に立たないのではないか」というイメージを持っている保護者の方は少なくありません。本校では、そうした先入観を覆すような取り組みを数多く行っているのです。

広野 近い将来、大学の研究活動や企業の実務に携わるうえで、大いに役立ちそうですね。

英語上級者をさらに伸ばす
「国際教養クラス」を高1に新設

広野 さて、貴校の中学入試は、一般入試のほかにも、国語と算数それぞれの1科入試、探究サイエンス入試、英語入試、帰国生入試と、さまざまな選択肢を設けていらっしゃいます。その狙いについてお聞かせください。

西川 さまざまな得意分野を持つ生徒による多様性を大切にしたいからです。その分、本校でも生徒一人ひとりの興味・関心に応えられるだけの学びを用意したいと思っています。

広野 最近の入学者の特徴に変化はありますか。

鎗田 帰国生入試を利用した入学者が大幅に増えました。2021年度入試では12名だったのが、2022年度は56名に。2023年度は少し絞りましたが、45名が入学しています。

髙瀬 入学者の英語力も、近年は上昇しています。帰国生入試および英語入試を経て入学した約80名のうち、入学前に英検®準1級を取得している生徒が14~15名、2級を取得している生徒が40~50名ほどいます。

西川 本校では以前から、英語が得意な生徒向けに、中3では「英語チャレンジクラス」を2クラス設置していましたが、高校ではその受け皿となるクラスがありませんでした。そこで、近年の入学者の英語力の上昇と、英語チャレンジクラスからつながるクラス設置の必要性を感じ、2025年から高1に「国際教養(ILA)クラス」を新設することを決めました。また、既存の英語チャレンジクラスも、来年度からは、上級者向けの「アドバンスト」と、中級者向けの「インターメディエイト」に分割し、それぞれの実力に合わせたカリキュラムを展開していく予定です。

広野 生徒一人ひとりの実力に合ったクラス編成が実現すると、さらに力の伸びが期待できますね。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

23年8月号 この人に聞く
1|

ページトップ このページTopへ