受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回は山の気温のお話です。高い山ほど、頂上の気温が低いことはよく知られています。高くなればそれだけ太陽に近くなるのに、なぜ寒くなるのでしょうか。

山の上は太陽に近いのになぜ寒いの?

太陽は空気ではなく地面を暖めている

げんちゃん 夏休みに家族で富士山に登るんだ。いろいろな情報サイトを見て、登山スケジュールをつくったり、どんな装備が必要かを確認したりしているよ。 げんちゃんイラスト
ピグマはかせ 日本でいちばん高い山だから、準備はしっかりとしないとね。
さやかちゃん いいなあ! 今年は猛暑だけど、山の上は涼しいだろうなあ。
ひかるくん でも、山って、高く登れば登るほど涼しくなるよね。どうしてなんだろう。
えりちゃん そういえばそうね。春になっても、富士山の頂上には雪が残っている。太陽に近いんだから、その熱で雪も解けそうなのに、なぜなんだろう。
ピグマはかせ 地球が寒くなりすぎず、わたしたちが生きていけるほど暖かくなるのは、太陽のエネルギーが届くから。確かに、太陽に近いほうが気温も高くなりそうな気がするよね。でも考えてみよう。太陽って、地球の何をどう暖めているんだろう。
ひかるくん 太陽の光が、地球の空気を暖めているんじゃないの? ひかるくんイラスト
ピグマはかせ 実は、太陽が空気を直接暖めているわけではない。地表、つまり地面を暖めているんだよ。まず地面が暖かくなると、そこに接している空気にその熱が伝わって、上のほうもだんだん暖かくなっていくんだ。
えりちゃん じゃあ、空気よりも先に、地面が暖かくなるってことなの?
ピグマはかせ 太陽光のうち、地面を暖めるのは主に赤外線という目に見えない光のはたらきなんだ。赤外線は空気をほとんど通り抜けてしまうから、地面のほうが空気より暖まりやすいんだよ。
げんちゃん そういえば、夏のプールサイドや砂浜って、やけどするくらいに熱いよね。とてもはだしじゃ歩けない。
さやかちゃん でも、山の上にだって地面はあるでしょ。それなら、山の気温も高くないとおかしいよ。
ピグマはかせ 確かにね。山の斜面の地面のほうが、同じ高さにある空気より早く暖かくなるよ。でも低い所と比べて、高い所は太陽光が当たる平面が圧倒的に少ないから、暖かくなりにくいんだ。
げんちゃん つまり、山の気温は、太陽からの距離とは関係ないってことなの?
ピグマはかせ そうだよ。山のほうが太陽に近いっていうけど、太陽と地球との距離は約1億5000万kmもあるんだよ。それに対して、いくら山が高いとはいっても、富士山が3776m、エベレストでも8848mだ。太陽までの距離の1500万分の1もないから、ほとんど意味はないよ。
ひかるくん 太陽から届くエネルギーに差はないということだね。

高い山では気圧も低い

ピグマはかせ 高い山は、気温だけでなく気圧も低いよ。
えりちゃん 気圧ってどういうこと? えりちゃんイラスト
ピグマはかせ 気圧は、空気が周囲のものを押す力のことだよ。地球は空気に覆われているよね。それは、地球の重力が空気を引きつけているからなんだ。気圧は、そこより上にある空気の重さによって決まる。高い山ほど、上にある空気は少ないわけだから、気圧が低くなるのはわかるよね。気圧が低いということは、空気が周囲から押される力が弱いということ。だから、同じ体積のなかにある空気の量が少なくなるんだ。このことを「空気が薄い」というよ。
ひかるくん 高い山を登る人は、酸素ボンベを持っていくことがあるよね。あれは、高い山は空気が薄いからなんだね。
ピグマはかせ そのとおり。ところで空気には、周囲から押される力が弱まると、膨張して温度が下がる性質があるんだ。だから空気のかたまりが山の斜面に沿って上昇していくと、一定の割合で温度が下がっていくんだよ。
さやかちゃん なるほど。だから高い所ほど気温が低くなるのね。 さやかちゃんイラスト
ピグマはかせ 標高が100m高くなるごとに、気温は約0.6℃下がると考えていい。げんちゃんは富士山に登るそうだけど、標高100m前後の、麓の富士宮市の気温を30℃とすると、そこより3600m以上も高い山頂付近は8℃くらい。涼しいというより、寒いね。
げんちゃん わあ、じゃあ冬用の服も持っていかなきゃ。
ピグマはかせ 山の天気は変わりやすいから、雨具も忘れずにね。

標高が高い山はなぜ寒い?

保護者の方へ

 火に手を近づければ、手は熱くなります。だからといって、太陽に近い山のほうが低い所より暑いわけではありません。火と太陽とでは、熱の伝わり方が違います。空気や水がない宇宙空間では、「伝導」や「対流」では熱は伝わりません。太陽は「放射」によって、地球に熱を伝えています。
 太陽から届く赤外線などの電磁波は、空気を透過して地表に達し、地面を暖めます。空気は、暖められた地面によって、間接的に暖められるのです。地表近くで暖められた空気は軽くなって上昇しますが、地面から遠ざかるほど気圧が低くなって膨張し、温度が下がります。高い山が太陽から近いのに寒いのは、このような太陽からの熱の伝わり方と、標高による気圧の違いによるものです。

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