受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」のテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていることにお答えします。今回は水のお話です。市販のペットボトル飲料のラベルには、「凍らせないでください」といった注意書きがあります。ペットボトルが破損する場合があるからですが、それはなぜでしょうか。

なぜペットボトル飲料を凍らせてはいけないの?

凍らせると中身が膨張する!?

げんちゃん 冷やしておいたペットボトルのジュースが、もう生ぬるくなっちゃった。そうだ、今度は冷凍庫で凍らせて持ってこよう。凍らせれば時間がたっても冷たいまま飲めるもんね。 げんちゃんイラスト
さやかちゃん ペットボトルの飲み物は凍らせちゃいけないのよ。
げんちゃん えーっ!? どうして?
えりちゃん 理由は知らないけど、ペットボトルには「凍らせないでください。容器が破損する場合があります」って書いてあるのよ。
ひかるくん でも、コンビニでは凍らせたペットボトルの飲み物も売っているよね。
ピグマはかせ さやかちゃんが言うように、ペットボトルには確かにそういう注意書きがあるよね。凍らせて売っている商品もあるけど、それは冷凍専用の厚くて丈夫な素材を使ったものや、破損を防ぐために形を変えたものなんだ。
えりちゃん どうしてペットボトルは凍らせると破損することがあるの? えりちゃんイラスト
ピグマはかせ 凍らせると中身が膨張するからだよ。これは水の性質によるものなんだ。水は氷になると、体積がおよそ10%増えるんだ。500mLのペットボトルの中身が550mLになるってことだね。だから、場合によっては容器が膨らんだり、破裂したりすることがあるんだよ。
ひかるくん 凍るとぎゅっと縮んで小さくなる気がするけど、逆なんだね。
ピグマはかせ ほとんどの物質は冷やすと体積が小さくなるけど、水には特別な性質があるんだ。水も冷やしていけば、4℃までは体積は小さくなるけど、それ以下になると、逆に体積が少しずつ増えていくんだ。試しに小さな容器に水をいっぱい入れて凍らせてみるといいよ。できた氷は上に盛り上がっているはずだよ。

もしも氷が水に浮かなかったら…?

えりちゃん どうして水は凍ると体積が増えるの?
ピグマはかせ 物質は分子という小さな粒がたくさんつながってできているよ。ほとんどの物質は、固体のときは分子があまり運動していないため、すき間をつくることなく並んでいるんだ。そして、液体や気体へと変化すると分子が激しく動くため、すき間が大きくなって、体積も大きくなる。でも、氷の場合はそれとは違って、水よりもすき間が多くできるような並び方をするんだ。人の並び方にたとえるなら、ほかの固体が前に詰めて整列しているのに対して、氷の場合は手をつないで輪になっているイメージかな。手を伸ばしている分のすき間があるから、体積が増えるんだよ。氷が水に浮くことも、この性質で説明できるよ。
ひかるくん 氷はすき間があるから軽いってことなの? ひかるくんイラスト
ピグマはかせ そのとおり。すき間がある構造なので、同じ体積の水と氷を比べると、氷のほうが軽くなって浮くんだ。もし水も凍ると体積が減るとしたらどうだろう。どんなことが起こると思う?
げんちゃん 氷が重くなって水に沈むよね。それで何か困ることがあるかなあ。
ピグマはかせ たとえば、湖や池には冬になるとよく氷が張るよね。でも、氷が下に沈んだらどうなるだろう。湖や池の生き物は冬の間、底のほうでじっとしているのに、氷が底に沈んできたら冬を越せなくなってしまうよ。
げんちゃん そうか。気づかなかった。
ピグマはかせ 氷が水よりも体積が増えなかったら、冬に霜柱を踏むこともなくなるよ。霜柱の上を歩くと、さくさくと音がして楽しいよね。それは水が凍って体積が増えるためにできたものだよ。土の中でも水が凍れば体積が増えるから、地中の水分が凍れば土を押しのけて地表に出てくることがあるんだ。それから寒い地方では、冬に水道管が凍って破裂してしまうことがある。水道管の中の水が凍って、体積が増えることが原因だよ。
さやかちゃん そんなこともあるんだ。 さやかちゃんイラスト
ピグマはかせ 水道って蛇口をひねると、すぐ水が出るでしょ。水を使っていないときでも、すぐ手前まで水が来ているからなんだよ。そこにたまった水が凍ると膨張して、水道管が破裂することがあるんだ。凍結を防ぐために、寒い日はわざと水をちょっとだけ出したままにしておく家もあるよ。
えりちゃん ペットボトルを凍らせてはいけないという話と、冬に水道管が破裂するという話がつながっているなんて、不思議な気もするね。
ピグマはかせ 確かにね。ほかにも例がないか、身の回りで探してみるといいよ。

氷と水の分子の違い

氷と水の分子の違い

保護者の方へ

 氷が水に浮くのは当たり前のことのように思いますが、ほとんどの物質が液体より固体のほうが重いことを考えると、不思議な現象といえます。氷が軽くなる、つまり密度が低くなるのは水分子の構造が変化するからです。水分子は二つの水素原子と一つの酸素原子が結合してできています。氷は水分子が規則正しく並んだ構造を持っており、水分子どうしは互いの水素原子でつながっています(水素結合)。この結合の仕方が、すき間の多い構造をつくっています。水が固体・液体・気体の三つの状態を移り変わる現象は身近で見ることができます。水にはほかにも特別な性質があるので、不思議なことがないか探してみてはどうでしょうか。

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