受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

  • Top
  • 読み物/教養
  • 23年9月号 [入試に出る時事問題]これだけは知っておこう! さぴあニュースバンク

さぴあニュースバンク

さぴあニュースバンク 2023年7月

4 火曜日 環境 この日、来日した国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が岸田文雄首相と会談した。東京電力福島第一原子力発電所の処理水を大量の海水で薄めて海に放出する計画については、IAEAが定める国際的な安全基準に合致しており、人体や環境に与える影響は無視できるほど小さいという報告書を公表した。日本政府はこれを受け、この夏にも計画を実行に移すものとみられる。 もっと詳しく参照
4 火曜日 社会 文章や画像を自動的に作り出す「ChatGPT」のような対話型の生成AI(人工知能)の使い方について、文部科学省は小学校・中学校・高校向けのガイドラインを発表した。生成AIは発展途上の技術で、利便性は高いが、個人情報の流出、著作権の侵害、誤った情報の拡散などさまざまな懸念があると指摘し、学校での適切な使い方、不適切な使い方を例示する内容となっている。たとえば、適切な使い方としては英会話の相手にすることなどを挙げ、不適切な使い方としては生成AIによる作品を自分の作品としてコンクールに応募することなどを挙げた。
6 木曜日 環境 農林水産省は、埼玉県武蔵野地域(川越市・所沢市・ふじみ野市・三芳町)の「大都市近郊に今も息づく武蔵野の落ち葉堆肥農法」と、兵庫県兵庫美方地域(県北部の但馬地方のうち鳥取県に近い香美町と新温泉町)の「人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム」が、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定されたと発表した。世界農業遺産は次世代に継承すべき伝統的な農林水産業に取り組んでいる地域が認定されるもので、これで国内では15地域が認定されたことになる。「落ち葉堆肥農法」とは畑に隣接する平地に木を植えて林を作り、その落ち葉を堆肥としてサツマイモなどを栽培する循環型農業のことで、江戸時代から300年以上にわたって受け継がれてきたとされている。一方、「伝統的但馬牛飼育システム」は日本で初めて牛の血統を登録した「牛籍簿」を整備して遺伝情報を管理したことにより、和牛改良の先駆けとなった。
10 月曜日 気象・災害 日本付近に停滞していた梅雨前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込み、「線状降水帯」が形成されたことにより、九州北部を中心に猛烈な雨が降った。これを受け、気象庁は午前6時40分に福岡県に、午前8時に大分県に、それぞれ大雨特別警報を発表した。各地で土砂災害や河川の氾濫が発生した。
16 日曜日 国際 ニュージーランドの最大都市オークランドで15日から閣僚会合を開いていた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の加盟国11か国はこの日、イギリスの加盟を正式に承認した。 もっと詳しく参照
16 日曜日 スポーツ イギリスのロンドン郊外で開かれていたテニスのウィンブルドン選手権で、車いす部門の男子シングルス決勝が行われ、世界ランキング1位で17歳の小田凱人選手がイギリスの選手を破って初優勝した。5月から6月にかけて行われた全仏オープンに続く四大大会制覇となった。
17 月曜日 国際 ウクライナから黒海経由での穀物の輸出が滞り、中東やアフリカなどの国々が食料不足になるのを防ぐため、国連、ウクライナ、ロシア、トルコが話し合って、黒海を航行する貨物船の安全を保障していた「黒海穀物合意」について、ロシアはこの日、離脱すると発表した。ウクライナからの穀物輸出が再び滞ることになりそうで、こうしたロシアの行動は食料を人質に取るものだと非難されている。
20 木曜日 スポーツ オーストラリアとニュージーランドが共同で開催する国際サッカー連盟(FIFA)の女子ワールドカップが開幕した。1次リーグC組の日本代表「なでしこジャパン」は、22日の対ザンビア戦を5対0で、26日の対コスタリカ戦を2対0で、31日の対スペイン戦を4対0でそれぞれ勝利し、全勝で決勝トーナメントに進出した。
26 水曜日 社会 総務省が住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の人口を発表した。それによると、日本人の人口は1億2242万3038人で、前年より80万523人減った。出生数から死亡数を引いた「自然増減数」は、日本復帰以来プラスが続いていた沖縄県が今回マイナスに転じたこともあり、全都道府県で日本人の死亡数が出生数を上回った。

「国際安全基準に合致」とIAEA福島第一原発の処理水を海洋放出へ

 7月4日から7日まで、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が来日しました。その目的は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を大量の海水で薄めて海に放出する計画について関係者と話し合うことです。まず4日には岸田文雄首相と会談し、放出計画はIAEAが定める国際的な安全基準に合致しているという報告書を公表しました。日本政府はこれを受け、この夏にも計画を実行に移すものとみられます。

 2011年の東日本大震災で重大な事故を起こし、現在も廃炉作業が続けられている福島第一原発では、壊れた原子炉建屋に流れ込んだ雨水や地下水などが核燃料などに触れ、放射性物質で汚染された水が発生し続けています。その汚染水から放射性物質を取り除く作業は24時間体制で続けられていますが、どうしても取り除けない放射性の「トリチウム」が残ります。そのため、処理した後の水は福島第一原発の敷地内のタンクにためてきました。

 しかし、2024年にはタンクが満杯になると見込まれていたため、政府は2021年、トリチウムを環境や人体に影響がないレベルにまで薄め、IAEAが定める安全基準を満たしたうえで海洋放出することを決めたのです。

 トリチウムとは普通の水素の3倍の重さがある「三重水素」のことです。そのような特別な水素からできている水が「トリチウム水」なのです。つまり、水の一部なので、ろ過したり、何かに吸着させたりして取り除くことができません。ただ、トリチウムは自然界にも広く存在しているため、政府は大幅に薄めれば問題ないという立場です。

 とはいえ、放射線を出すことは事実なので、トリチウムは危険だと思う人は少なくありません。福島県沖などでとれた水産物は「風評被害」を受け、たとえ安全でも売れなくなる恐れもあるため、地元の漁業者は海洋放出に懸念を示しています。中華人民共和国(中国)も日本を非難しました。大韓民国(韓国)の尹錫悦大統領は一定の理解を示していますが、韓国の野党は強く反発しています。これに対し、日本政府は中国や韓国の原発からもトリチウムは放出されていると反論しました。

加盟国は12か国にイギリスがTPPに加盟

TPP加盟国と加盟申請国・地域


加盟国:①日本 ②ベトナム ③ブルネイ ④マレーシア ⑤シンガポール ⑥オーストラリア ⑦ニュージーランド ⑧カナダ ⑨メキシコ ⑩ペルー ⑪チリ ⑫イギリス
加盟申請国・地域:A中華人民共和国 B台湾 Cコスタリカ Dエクアドル Eウルグアイ Fウクライナ

 日本、ベトナム、カナダ、メキシコなど、太平洋を取り巻く11か国から成っていた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、7月15日・16日に、ニュージーランドの最大都市オークランドで閣僚会合を開き、イギリスの加盟を正式に承認しました。これにより、人口は約5億8000万人、国内総生産(GDP)の合計は全世界の16%ほどになる大きな経済圏ができました。

 TPPは、加盟国間で貿易をするときの関税を原則としてなくすとともに、経済活動にかかわるルールも可能な限り共通化しようという取り決めです。もともとはアメリカを含めた12か国で交渉を進めてきて、2015年に大筋合意に達していました。ところが、アメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)は、アメリカがTPPに入ると、外国からの安い輸入品を止められなくなって国内の産業に悪影響を与えるとして、2017年1月の就任直後に離脱を表明。残りの11か国は2018年12月、アメリカ抜きでTPPを発効させました。

 一方、2020年にヨーロッパ連合(EU)から完全に離脱したイギリスは、その直後の2021年2月、TPPへの加盟を正式に申請しました。太平洋から遠く離れた国ですが、TPP加盟国のうち、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの6か国はイギリスの植民地や自治領だったことがあるため、イギリスがTPPに入っても、さほど不自然ではないともいえます。

 このTPPには2021年秋、中国、台湾も加盟を申請しました。中南米のコスタリカ、エクアドル、ウルグアイも申請中で、2023年にはウクライナも申請しています。

ページトップ このページTopへ