受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

さぴあ職場見聞録 第35回/鉄道会社

 通勤・通学やレジャーの足として、なくてはならないのが鉄道です。わたしたちがよく目にする運転士や車掌、駅職員のほかにも、鉄道会社にはさまざまな仕事をしている人がいて、列車の安全な運行を支えています。今回は、京王ライナーで知られる京王電鉄を訪ね、同社が手掛ける事業や鉄道会社の仕事について、広報担当の加藤陸さんにお聞きしました。

sappy 乗客を乗せて安全かつ定刻どおりに運行する
沿線のまちをより快適にする取り組みも

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100th 感謝を乗せて、未来へつなぐ。京王の電車・バス開業110周年

有料座席指定列車の「京王ライナー」は、通常の車両より座席幅が広い5000系車両をクロスシートにして使用 運輸指令所では、列車運行管理システムにより、列車の進路設定や出発指示合図などを自動制御しています 井の頭線ではカラフルな7色の列車が走っていますが、1編成のみ、「レインボーカラー」の列車があります

まちづくりや観光スポットの開発も

京王電鉄株式会社
広報部 広報担当
加藤 陸 さん

 京王電鉄は主に、新宿駅を一方の起点・終点とする京王線と、同じく渋谷駅を起点・終点とする井の頭線からなり、路線網は東京都の西部と神奈川県の北部に広がっています。沿線に多摩ニュータウンがあるため、通勤・通学のための鉄道という性格が強い一方、世界屈指の登山客数を誇る高尾山への行楽地輸送にも重要な役割を果たすなど、首都圏交通の大動脈の一翼を担っています。

 列車の種別はいくつかあり、中距離を利用する乗客のために「特急」「急行」「区間急行」など、一部の駅を通過する優等列車を設けています。また、2018年から、新宿駅と京王八王子駅、新宿駅と橋本駅、新宿駅と高尾山口駅の間に、最新車両5000系を使用した有料座席指定列車「京王ライナー」の運行を開始。2021年からは、途中の明大前駅にも停車するようになり、井の頭線利用者の利便性も向上しました。「安全は最大の使命であり、最高のサービスである」という基本方針の下、運転保全の徹底など安全への取り組みを積極的に行うとともに、バリアフリー設備の充実化を含むサービス向上策や、地球温暖化防止のための省エネルギー化など環境対策も推進しています。

 一般的に、鉄道会社では列車の運行だけでなく、沿線の住民が快適に暮らすためのまちづくりや、魅力的な観光スポットの開発など、幅広い事業をグループ会社と協力して行っています。京王電鉄の場合、人気観光地である高尾山の麓の高尾山口駅に隣接して、日帰り温浴施設「京王高尾山温泉 極楽湯」を2015年にオープンさせました。聖蹟桜ヶ丘・橋本・調布の各エリアでのまちづくりや、笹塚駅から仙川駅間付近にかけての道路と鉄道の連続立体交差事業(高架化)も推進。さらに、新宿駅の西南口地区の再開発にも取り組んでいます。

責任感を持ち、安全第一で働く

 鉄道会社には、列車を運転する「運転士」、列車のドアの開閉や停車駅の案内などをする「車掌」、各駅でホームの安全確認や案内をする「駅係員」に加え、駅係員や運転士をサポートする「運輸指令所」や「本社」で働く社員もいます。技術職としては、「電力」「車両」「工務」「建設」など整備・管理を行う部門があり、「人事」「広報」などの一般管理部門はもちろん、まちづくりを担う「開発」部門など、仕事は多岐にわたります。鉄道会社では、どの職種も安全第一、常にお客さまファーストで働き、責任感を持つことが重要です。

鉄道部門の仕事

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 入社したら、まず駅係員として約2年働き、その後は車掌を約2年務め、そして運転士になるというように、経験に応じてさまざまなキャリアステップが可能です。最近では、女性社員の比率が上がってきており、京王電鉄の鉄道部門では現在、約100人の女性が活躍しています。また、鉄道部門には、技術系の仕事をする社員もいて、電力設備や変電設備の点検・保守など、列車の運行と駅の運営に欠かせない業務を行っています。

まちづくり・観光事業も

 京王線高尾山口駅の隣にある「京王高尾山温泉 極楽湯」(写真左)は、登山の帰りに立ち寄って疲れを癒やすのにぴったりな日帰り温泉。地下約1000mから湧き出る天然温泉など7種類のお風呂のほか、お食事処やうたた寝処などもあります。

 不動産開発事業で沿線のまちを魅力的にするのも、鉄道会社の大切な役割です。昨年、下北沢駅の高架下にオープンした「ミカン下北」(写真右)は京王電鉄が開発。個性的な飲食店を中心とした商業エリアとワークプレイスが同居した複合施設です。

新宿の再開発計画も進行中

 京王電鉄ではJR東日本と共同で、新宿駅の西南口地区の再開発計画を推進しています。この計画のなかで京王電鉄は、オフィスやホテルが入る地下6階・地上37階建ての超高層ビルを建設(2028年度に開業予定)。京王百貨店新宿店を建て替え、新たな商業施設を2040年代までに建設します。また、駅の改良工事も実施して、地下鉄丸ノ内線につながる動線を整備し、乗り換えにかかる時間を短縮します。こうした再開発により、エリア一帯の回遊性を高めます。

第35回/鉄道会社:
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