受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

第67回 シェフ

イメージ画像 腕のいいシェフのいるお店に行くと、見た目にも美しく、おいしい料理で、みんなを笑顔にしてくれます。その店の料理長として調理場を仕切るシェフは、毎日どんな仕事をしているのでしょうか。東京山手調理師専門学校を訪ね、西洋料理の学科長を務める𠮷田修明さんにお聞きしました。
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シェフはどんな仕事をしているの?

 ホテルやレストランの調理場を仕切る料理長のことを「シェフ」と言います。シェフは調理をするだけでなく、その店のお客さまのニーズに合ったメニューを考案し、その作り方をコック(調理スタッフ)に指示し、料理の味付けや盛り付けの最終チェックを行います。つまり、ホテルやレストランの調理場の責任者として、調理スタッフたちの指揮を執るのがシェフの役割です。たとえば、ホテルに六つのレストランがあったとすると、シェフは各レストランに1人ずついます。レストランの規模によっては、シェフの下で調理の指揮を執る「スーシェフ」がいる場合もあります。また、シェフより上の立場でホテルのレストラン全体を管理する「総料理長」を置いていることもあります。


東京山手調理師専門学校
学科長

𠮷田 修明 さん

 シェフという呼び名は主に西洋料理のレストランで使われ、ホテルでは「チーフ」と呼ぶ場合が多く、和食の場合は調理責任者を「板長」(板前さんの長)と呼ぶのが通例です。店のオーナーに雇われるのではなく、独立して自分で店を経営しているシェフは「オーナーシェフ」と言います。

 シェフが店のグランドメニュー(常に提供するメニュー)を考えるのは、半年に一度というケースが多いそうです。つまり、春夏と秋冬のメニューを考えるときです。そのほかに、その日に仕入れた食材によって、本日のおすすめメニューを考えることもあります。

 メニューを考えるときは、どのような食材を仕入れて使うかも合わせて決めます。このときは、お店で提供するメニューの価格帯などにより、品質やコスト、どのくらいの量が必要かなどを考えながら決めることが大切です。シェフが実際に市場に出向いて素材を見極め、仲買人(※)と交渉しながら仕入れる場合もあります。

※商品を購入する際、卸売業者と商品購入者の間を取り持ち仲介する立場にある人。

シェフになるには?

 さまざまなホテルやレストランで経験を積み、料理人として一流であると認められれば、シェフのポジションに就くことができます。

 まずは一人前のコックになるために、修業をしなければなりません。それには、専門学校で料理の技術と知識を学び、調理師免許を取ってからレストランに勤めるという方法のほか、未経験で見習いとして雇ってもらう方法もあります。一流店かカジュアルな店かによっても違いますが、20歳くらいで働き始めた人は、カジュアルな店なら30歳になる少し前にシェフになれるでしょう。

 専門学校では、まず調理に使う器具の名前から学びます。たとえば、木べらのことは「スパテラ」、ざるのことは「ストレーナー」と言いますが、こうした名前を覚えておけば、レストランに勤務してから、シェフの指示に従ってスムーズに仕事ができるのです。次に、包丁の研ぎ方、野菜の切り方を練習し、その後、さまざまな料理を作る実習をします。野菜の切り方の例を挙げると、西洋料理では玉ネギのみじん切り、ニンジンやキャベツの千切りなど、和食では大根のかつらむきなど、中華料理ではピーマンの細切りなど、その種類はさまざま。一方で、座学の授業では、フランス語、イタリア語などの語学に加え、雑菌や食中毒についても学びます。

東京山手調理師専門学校ってどんな学校?

東京山手調理師専門学校 写真 東京山手調理師専門学校の最大の特徴は、実習の多さです。月曜から金曜まで毎日実習があり、2年間で1700時間以上行います(規定の約4.3倍)。土・日曜には一般のお客さまを招いて「学生レストラン」を開催するので、実践力も身につけられます。
 同校は、「西洋料理クラス」「すし和食クラス」「調理師クラス」のほか、製菓・ドリンクまで学ぶ「トータルフードクラス」、調理師免許取得者を対象とする「キャリアアシスト科」という五つの学科を設置。2年生を対象に全員参加の海外研修を実施しているのも特徴です。 東京山手調理師専門学校ウェブサイト ▶︎
https://yamanote.ac.jp/tokyo/

シェフに求められる能力は?

 シェフには、調理の現場で培った豊富な経験や技術が必要です。チームをまとめ上げるリーダーシップや責任感も求められます。さらに、メニューも開発するので、新しい料理を生み出す発想力や、最近の料理のトレンドなどを読み取る情報収集力も身につけなければなりません。時には食材が届かない、直前に予約人数が変更されるといったトラブルが起きることもあるので、それをうまく切り抜けるための判断力と対応力も重要といえるでしょう。また、勤務する店の規模や種類によっても、シェフに求められる能力は違ってきます。たとえば、大規模なホテルや結婚式場などでは、大勢のお客さまの料理を用意し、それを一斉に出す必要があります。そのため、シェフはそれに合ったメニューを考え、各調理スタッフが担当する仕事がスムーズに進むよう目を配り、管理する能力が求められます。

 シェフという職業には、長時間立ち続けなければならないなど大変な面もありますが、食事をしてくださったお客さまの笑顔にやりがいを感じ、お客さまの喜びが自分の喜びになるというすばらしさがあります。また、料理人は私生活でもおいしいものを追求するので、心が豊かになれると思います。わたしは、インスタント麺やスナック菓子などを一切食べない家庭に育ったこともあり、味覚が鋭く、料理に化学調味料が入っているかどうかは、すぐにわかります。将来、シェフになりたい小学生の皆さんは、日々の食事を通して味覚を大切に育ててください。

シェフに「調理師免許」は必要?

東京山手調理師専門学校・西洋料理実習室 写真東京山手調理師専門学校・西洋料理実習室 調理師免許は必ずしも必要ではありませんが、お店によっては取得していることがシェフになるための前提条件とされます。調理師免許は、調理の技術があるだけでなく、食の衛生・管理などについて幅広い知識があることを証明する、社会的信用の高い国家資格です。厚生労働大臣により指定されている調理師学校を卒業すれば、無試験で資格が得られます。調理業務に従事した経験が所定の時間以上ある人は、国家試験に合格すれば資格が得られます。
 なお、ホテルのシェフや給食センターの料理長になるには、「専門調理師」という資格が必要で、この資格があると、調理師専門学校の先生になることもできます。

「第67回 シェフ」:
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