創立100周年を前に、
4月から制服をリニューアル
広野 まず、貴校の沿革についてお聞かせください。
平田 本校は、1926(大正15)年に国府台高等女学校として創立されました。創立者の平田華蔵は、浄土真宗本願寺派の僧侶であり、千葉女子師範学校の校長でもあった人物です。
学院長 平田 史郎 先生
教育方針の土台となっているのは、仏教の精神である「智慧」と「慈悲」です。智慧とは一生をかけて真実を追い求めようとする姿勢のことで、慈悲とは自分以外のすべての命に対して、慈しみと思いやりの心を持つ態度を指します。次世代を生きる女性には、まさにこの智慧と慈悲の精神が必要であるという強い信念の下、教育活動に取り組んでいます。
広野 その精神は、学問を追い求めるために必要な姿勢そのものですね。現在は創立100周年に向けて、さまざまな改革を推し進めていらっしゃいますね。
平田 まず、この4月から、小中高ともに新しい制服を導入しました。中学部・高等部の生徒会役員たちにデザインコンペの段階から参加してもらい、素材やシルエットについてたくさんの意見を募ったのです。そのかいもあって、品格と実用性を兼ね備えた、すてきなデザインに仕上がったと思います。また、「100周年記念館」を新設し、そのなかに多目的教室を3室ほど設ける予定です。少人数授業の同時展開や課外活動の充実など、生徒一人ひとりに寄り添ったきめ細かい指導を実現するために役立てていきたいと考えています。
広野 それは楽しみですね。施設といえば、玄関前にある大きなガラス張りの図書館が非常に印象的ですね。
平田 この図書館は、校舎改築の一環として2011年につくられたものです。生徒たちが気軽に立ち寄りやすい図書館をめざし、さまざまな工夫を凝らしています。たとえば、エントランス付近には、手に取りやすい雑誌などを置き、その奥に話題の本を平台展示しています。また、書架を思い切って低くし、あえて本の高さをそろえずにランダムに配置しているのも特徴の一つです。これは、「たまたま目に入った表紙にひかれて手に取ってみる」といった、本との偶発的な出合いを数多く用意したいと考えているからです。
新学習指導要領がめざす「思考力・判断力・表現力」の習得も、突き詰めれば、ことばの力に集約されるのではないでしょうか。ことばの力がなければ、自分の思考もまとまりませんし、正しい判断をすることも、それを相手に伝えることもできません。そう考えると、中学生のうちからさまざまなジャンルの本に触れる環境を整備することが、ことばの力を育み、ひいては新しい学力の習得につながっていくのではないかと思っています。
6年間を見据えた教育課程
多彩な国際プログラムも用意

2023年4月、制服が新しくなりました。冬服のジャケットはスクールカラーのダークグリーン。スカートとスラックスの選択が可能で、ジャケットの中はセーター・カーディガン・ベストの3種類。夏服は半袖ブラウスにサマーベストのほか、ポロシャツ(白・紺)の着用も可能です
広野 日々の教育活動において、特に力を入れていることを教えてください。
平田 最も大切にしているのは、基礎学力の確立です。中学では毎朝小テストを実施し、一定の点数に満たない場合は再テストを行うなど、ていねいなフォローを心がけています。また、中3からは、定期試験や外部模試の成績を条件とした選抜クラスを設置し、高い学習意欲を持ち、難関大学をめざす生徒たちの目標となっています。
広野 伸び伸びとした校風のなかにも、生徒たちを奮起させる工夫があるのですね。
平田 そうですね。中高6か年教育というのは、運動場の草取りにたとえることができます。つまり、中学のうちに目立つ大きな草(=課題)を抜いておき、高校に入ったら中くらいの草を抜く。そして、高2の後半から高3にかけて、残りの小さな草を取り除き、運動場全体をきれいにしていく。そうした教育を理想としています。
実際に生徒たちに草取りをさせると、その場にしゃがみ込んで、手の届く範囲に生えている草だけを抜こうとする子がいます。しかし、それでは全体はきれいになりません。教育も同じです。広い視野を持ち、長期的な戦略を立て、「現段階でどの課題を解消すべきなのか」「どうすれば6年後にベストな状態に持っていけるか」という視点を持つことが大切だと考えています。
広野 国際教育についても多彩なプログラムを用意されていますね。
平田 イギリスで行う語学研修やターム留学、フィリピン・セブ島での英語合宿、世界各地の仏教系の学校ネットワークを利用して行う海外研修などがあります。ここ数年は中断していましたが、徐々に再開していく予定です。これからも、生徒一人ひとりの到達目標やレベルに応じて、さまざまな選択肢を設けていきたいと思っています。
医療系学部への進学が増加傾向に
背景にあるのは高いキャリア意識
サピックス小学部
教育情報センター本部長
広野 雅明
広野 女子の進学先というと、以前は文学部や家政学部が主流でしたが、最近では理系や社会科学系をめざす生徒が増えています。貴校の場合はいかがですか。
平田 本校でも医学部医学科をはじめ、歯学部・薬学部・看護学部など、医療系の学部をめざす生徒が増えています。その理由としては、出産や育児といった女性特有のライフイベントにも柔軟に対応できる医療資格職の魅力が大きいようです。高等部の進路指導では、自分の将来をライフステージごとに区切り、「幸せとは何か」「最も優先したいことは何か」を繰り返し考えさせます。女子は非常にリアリストですから、自身のキャリアを現実的に見つめた結果がこの実績につながっているのではないでしょうか。
広野 女性の人生設計に特化した進路指導ができるのは大きな強みですね。キャリア教育について、ほかにも取り組みがあれば教えてください。
平田 30校ほどの大学をお呼びして、ブースを設けて説明会を開催したり、本校OGの現役大学生のチューターを招いて、自身の大学受験にまつわる体験談や、大学での学びについて話してもらう機会を設けたりしています。また、東京女子大学、日本女子大学、昭和女子大学の協力の下、さまざまな高大連携プログラムも行っています。たとえば、高2の探究では、東京女子大学の先生を招き、その先生の下で1年間のテーマ学習を進めていきます。ほかにも、ボストンで行われる昭和女子大学主催の海外研修には本校の生徒8名が参加させてもらえることになっていますし、日本女子大学の講義を実際に大学のキャンパスで聴講することで、単位を認める制度などもこれから設定していく予定です。
広野 さらに生徒たちの進学意識が高まりそうですね。最後に、受験生とその保護者の方にメッセージをお願いします。
平田 本校は女子校ですから、文化祭にしろ、運動会にしろ、男性の力を借りずに自力で運営しなければなりません。そこで柔軟な対応力が磨かれますし、ロールモデルとなる同性の先輩の姿を身近に見ることができるので、この年ごろの生徒たちにとっては何よりの刺激になります。本校は、がんばりたい生徒が一生懸命にがんばれる雰囲気を大事にしている学校です。一度足を運んでいただき、その良さを感じてもらえたらうれしく思います。