受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校File

(「23年11月号」より転載/23年10月公開)

東京農業大学第一高等学校中等部

所在地:〒156-0053 東京都世田谷区桜3丁目33番1号
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東急世田谷線「上町」駅より徒歩15分
TEL:03-3425-4481
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「共創」をコンセプトに新校舎が竣工
2025年度からは完全中高一貫校へ

 東京農業大学第一高等学校中等部は教育理念に「知耕実学」を掲げる、体験重視の教育を実践する共学の進学校です。学制改革によって廃止された旧制の東京農業大学予科を受けて1950年に高等学校が、2005年に中等部が設立されました。「知耕実学」の学びをさらに強化すべく、来年にかけて新校舎が完成するほか、2025年度からは高校の生徒募集を停止し、完全中高一貫校となります。その狙いについて、校長の幸田諭昭先生に伺いました。

「一中一高ゼミ」に代表される
興味を引き出すリベラルアーツの学び

校長 幸田 諭昭 先生

広野 まず、貴校の教育の特色を教えてください。

幸田 本校の教育理念は「知耕実学」です。「実学」を通じて、「知」を「耕」す。つまり、自分で感じたことをもとに仮説を立て、検証し、行動・表現するという思考プロセスを大切にしてほしいと考えています。また、教育目標は「夢の創造と実現」です。授業や行事、クラブ活動などのさまざまな場面で思考プロセスを繰り返し、そこで得た力を夢の実現につなげてほしいと思っています。

広野 その取り組みにはどんなものがありますか。

幸田 たとえば「一中一高ゼミ」では、学年や教科の枠組みを超えた少人数のゼミ形式の講座を年間80ほど開講しています。これまで「人体の構造と機能および病気の成り立ち」「探究学習with JAXA」といった学問的なものから、電車や漫才など、身近な題材を掘り下げるものまで、さまざまなテーマを用意しています。なかには「こういう講座を開いてほしい」という生徒の要望を受けて開講するものもあります。

広野 まさしくリベラルアーツと呼べるものですね。

幸田 そのほかにも、文学作品の舞台に足を運んで、その背景を深く知る「文学散歩」という希望者対象の講座もあります。先日は伊藤左千夫の『野菊の墓』を取り上げ、作品の象徴的なシーンに出てくる江戸川の矢切の渡しに行きました。参加した生徒たちは「主人公の行動を追体験しているようで興味深かった」「教養が深まった」などと感想を述べていました。伊藤左千夫や正岡子規、夏目漱石につながる系譜にも触れ、一つの学びを契機に知識が広がっていくおもしろさを学んだようです。

広野 体験から得た知識は一生の財産になりますね。

幸田 これらは「知耕実学」に根差した取り組みのほんの一部です。これから「実学」の部分をさらに強化すべく、今年度から「共創し、新たなステージへ」を本校のスローガンに掲げました。「共創」の「共」には、友人や教員、先輩や後輩といった他者と協力して一緒に目標を達成してほしいという思いを、「創」には、自分たちの力で新しい価値を生み出してほしいという願いを込めています。

生徒たちの足並みをそろえるため
2025年度から完全中高一貫校に

広野 2025年度からは高校からの生徒募集を停止し、完全中高一貫校になると伺いました。


今秋に新2号館「芸術棟」が、2025年に「理科棟」が完成する予定です

幸田 はい。生徒たちには、高校卒業時点で、大学に進学するのにふさわしい基礎学力や、学問に対する正しい姿勢を身につけてほしいと思っています。そのためには、義務教育段階ですべての教科を偏りなく学んでおく必要があります。そうした学習の足並みをそろえるために、完全中高一貫校としてかじを切る決断をしました。

広野 完全中高一貫校化に当たって、どのような変革をお考えですか。

幸田 核となるのはリベラルアーツ、探究活動、国際教育です。現在も探究活動は行っていますが、主に中3生を対象としており、個人研究がメインです。今後はそれを高校でも継続し、個人ではなくグループで課題解決に挑戦させたいと思っています。

広野 その姿勢も「共創」といえますね。国際教育についてはいかがですか。

幸田 現在は希望者を対象に、ファームステイを含む「オーストラリア夏期海外研修」、マンツーマンの英会話レッスンを中心とした「セブ島語学研修」、ホームステイをしながらオーストラリアの現地校で学ぶ「短期・長期留学」を用意しています。今後は、東京農業大学が協定を結ぶ44の海外大学のネットワークを活用しつつ、海外大学との高大連携や留学制度を充実させていく予定です。

広野 「農業」は全世界共通の学問ですから、そこからつながりを広げていけるのは貴校の強みですね。

幸田 アフリカやモンゴルなど、留学先としては一般的ではない地域にも協定校があります。そうした国の学生との交流機会を持つことができれば、生徒たちにとって貴重な経験になるでしょう。

「実学」をより身近に感じる新校舎
中学入試にも大きな変更点が

サピックス小学部
教育情報センター本部長
広野 雅明

広野 最近では、学校外のコンクールや大会でも好成績を収めていますね。

幸田 はい。昨年行われた日本学生科学賞では、本校の生物部による「モウソウチクの成長のしくみ」が最優秀賞を受賞しました。また、今年開催された全国高校教育模擬国連大会(AJEMUN)では、本校の模擬国連同好会から6チームが参加し、2チームが優秀賞に選ばれました。地道に研究や練習を重ねてきた成果がこのような大きな大会で評価され、非常にうれしく思っています。

広野 今後の活躍も楽しみですね。さて現在、貴校では新校舎を建設されていますね。

幸田 今年11月には芸術棟が、2025年には理科棟が完成します。芸術棟の1階はグループワークなどができるラーニングコモンズ、2階は美術室や音楽室が並ぶアートエリア、3階は3Dプリンタなどを配置したテクノロジーエリアというように、フロアごとにコンセプトを設定しているのが特徴です。

 一方、理科棟の地下1階には大ホール、1階にはライブラリ、2階には各教科の研究室が並ぶコラボレーションエリア、3階には物理・化学・生物の実験室を各2部屋ずつ用意したサイエンスエリアを設け、「実学」をさらに身近に感じられる施設にしたいと考えています。

広野 リベラルアーツにふさわしい校舎になりそうですね。

幸田 新校舎のコンセプトを考える際に大切にしたのが、「みんなが集まって何かを生み出せる場所にしたい」ということです。コロナ禍を経て、学校の存在意義を見直したときに、顔と顔をつき合わせて切磋琢磨することこそが最大の強みだと実感したからです。この考えは「共創」にもつながるものです。多様な個性を持つ生徒たちが、この場所で学び、化学反応を起こして、それぞれに大きく成長してくれることを期待しています。

広野 さて、2025年度入試からは2月1日の午前入試を新設されるそうですね。

幸田 はい。本校を第一志望とする受験生を多く迎えたいという思いから、従来の2月1日午後、2日午後、4日午前の入試日程に加え、1日午前を新設する予定です。また、高校募集を停止する分、中学入試での募集定員を増やします。

広野 最後に受験生に向けてメッセージをお願いします。

幸田 本校の生徒たちはみんな、明るく、はつらつと学んでいます。それは学業だけではなく、クラブ活動や課外活動など、それぞれに活躍できる場がたくさんあるからでしょう。まずは、本校の教育理念や教育内容を知っていただき、受験校の一つとして検討してもらえたら幸いです。

Information

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https://www.nodai-1-h.ed.jp/?page_id=16

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