受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

School Now

(「23年7月号」より転載/23年6月公開)

八王子学園八王子
中学校・高等学校

多様な個性が集い、お互いを高め合う環境
自分たちでより良い学校をつくっていく

 1928年、八王子の人々の力によって設立された八王子学園。地域に根差した学校として歴史を重ね、2012年には中学校が新設されました。多様なクラス・コース編成により、生徒たちはそれぞれの目標に向かって学んでいます。地元八王子の人々とのつながりを重視する教育、身近な地域から世界へと発展していく「探究ゼミ」の活動などについて、学校長の齋藤智文先生に伺いました。

地域に根差したみんなの学校
人と人とのつながりが受け継がれる

学校長
齋藤 智文先生

 地元密着型の学校として歩み続けてきた同校は、5年後の2028年に創立100周年を迎えます。学校長の齋藤智文先生は、「地元八王子の人たちの力でつくられた本校は、地域の人々とのつながりを重視し、人が人を育てる手作り教育を行ってきました。私立ではありますが、「市民立」、みんなでつくった「みん立(民立)」の学校といってもよいのではないでしょうか」と話します。八王子の伝統芸能である「車人形」の同好会があるのも同校ならでは。学園祭はもちろん、地域のイベントでも公演しています。また、地元の障がい者の方がパン作りをして販売しているお店があり、週2回、放課後に学校でそのお店が出張販売を行うという交流の機会もあります。「地域の人々とのつながりを大切にする教育は、100周年を迎えようとする今も受け継がれています」と語ります。

 同校の学園モットーは「人格を尊重しよう」と「平和を心につちかおう」の二つです。齋藤先生は、「いろいろな人がいて当たり前」という考えを強調します。これは、中学校の東大・医進クラス・特進クラス、高校の文理コース、総合コース、アスリートコースというクラス・コース編成により、多様な個性が集う同校の特色を伝えています。「世の中はいろいろな考えの人、いろいろな個性を持った人がいて成り立っています。多様な生徒がいて、お互いに認め合い、高め合える環境がある本校は、社会の縮図と言ってもよいでしょう。これが『人格を尊重しよう』につながっています」と話します。もう一つの「平和を心につちかおう」については、「戦争がなければ平和だと言われます。しかし、たとえ戦争がなくても、差別や偏見のある社会、環境破壊が進む状況は、平和とは言えません。『これはおかしい』『これでいいのか』と気づける心を育むことが大切。本校には多様な生徒がいるからこそ、立ち止まって気づける機会も多いと思います」と説明しました。

ローカルからグローバルへ
それぞれのテーマで学ぶ探究ゼミ

「探究ゼミ」でのプレゼンテーション。学んだことや自分の考えを発表する機会が豊富にあり、生徒たちは「どう伝えるか」を考えて取り組んでいます

 学園モットーと合わせて、中学校の教育のキーワードとして齋藤先生が挙げたのが「Think globally、Act locally」です。環境問題の解決策の一つとして生まれたことばとのことですが、国際的な視野で考え、身近なことにつなげて行動していこうという、学びへの向き合い方を表しています。「大人になってからだと、まず自分の考え方がスタート地点になりがちですが、いろいろなことに興味を持ち始める中学生の時期に、こうした柔軟な視点で学ぶことはとても重要です」と、その意義を語りました。

 そのきっかけづくりとして中学校で最も力を入れている授業が「探究ゼミ」です。年度の前半は、中1は地元八王子周辺を、中2は修学旅行先の京都・奈良・広島を、中3は海外研修先のオーストラリアをテーマに探究学習を進め、ローカルからグローバルへと視野を広げていきます。また、各学年の年度の後半では、教員が提示したさまざまなテーマに取り組みます。その内容は、「究極のラーメンをめざして」「J-POPの歌詞に見る時代の変化とは」「日常と数学」「弱者の兵法を学ぼう」など、ユニークなものばかり。齋藤先生は、「今、目の前にいる生徒たちを育てるために何を考えさせるべきかを大切にしています。これらのテーマを見てもわかるように、本校は教員も個性的で、それがまた本校の多様性を高めています」と語ります。

 「探究ゼミ」に限らず、授業、文化祭など、学んだことや自分の思いを伝えるプレゼンテーションの機会が豊富な点も同校の特徴です。生徒たちは常に「どう伝えるか」を考えて学習に取り組んでいます。

学校の主役は生徒たち
自分たちが望む環境をつくっていく

中学校の学年委員会・高校の生徒会が、あらゆる学校行事を企画・運営。「自分たちでより良い学校をつくり上げよう」という気持ちが生徒のなかに芽生えます

 「中学校で『探究ゼミ』などを経験した内進生の学びの蓄積を、高入生にも波及させていくことが重要です」と齋藤先生。今年度の入学生からは、高1まで内進生のみのクラスで学びますが、高2からは高入生との混成クラスとなります。「入学してくれる生徒たちには、自分たちがこの学校の主役であるという『自治の精神』を培ってほしい」と強調します。「自分たちが学びやすく、過ごしやすいように学校をつくり、環境を整えてほしいと思います」

 中学校には学年委員会という高校の生徒会の元になる組織があります。生徒たちは積極的に参加して意見を出し合い、始業式・終業式・新入生対面式の進行を担います。「1学年約500名のうち内進生は100名ほどですが、高校の生徒会の約半数が内進生です。自分たちで学校をより良くしていこうという気持ちが内進生に芽生えています」と話し、次のように続けます。

八王子市の伝統芸能「車人形」の同好会。創立以来、地域の人々と交流し、文化を受け継ぐ活動を大切にしています

 「こういう決まりがあったほうがいい、こういうルールは変えたほうがいい、などと意見を出し合って、自分たちが主役であり、主権者となることが大切です。自分たちが望む環境を自分たちの方法で築き上げていく経験を6年間で重ねてほしいと思います。実際に、制服や指定バッグの改定も教員と生徒で話し合いながら実現し、女子もスラックスを着用できるようになりました。“校則が厳しい”と言うだけでなく、それをどのように良い方向に持っていくかを自分たちで考えて行動できる風土が本校にはあります。生徒がより良い主権者として育つことが、『人格を尊重しよう』『平和を心につちかおう』という学園モットーにもつながっています」

 最後に齋藤先生は、こうメッセージを送りました。「いろいろな人とつながりたい、いろいろな人と出会いたいという受験生を待っています。そして、人のため、社会のために何ができるかを考えて学んでほしいと思います。一人ひとりが力を発揮できるように、学校はその芽を伸ばす光になりたいと考えています」

《学校のプロフィール》

八王子学園八王子中学校・高等学校

所在地
 〒193-0931 東京都八王子市台町4-35-1
 JR中央線「西八王子」駅より徒歩5分 TEL 042-623-3461
H P www.hachioji.ed.jp 別ウィンドウが開きます。

《各種行事日程のお知らせ》

学校説明会などの情報はこちらよりご確認ください。
https://www.hachioji.ed.jp/junr/exam/session/

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