受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

School Now

(「22年10月号」より転載/24年1月改訂)

森村学園
中等部・高等部

「社会科学習の楽しさ」を伝えたい
考える力を育み、視野を広げるレポート学習

 森村学園中等部・高等部は、1910年の創立以来、「人徳を備え、自らの力で人生を切り拓き、世界の力、社会の力となる人財の育成」に取り組んでいます。社会科の授業では「考える力」の育成を重視しており、その一環として、調査・アポイントメント・取材をすべて自力で行うレポート学習を実施しています。森村学園伝統の、広い視野を養う社会科学習について、社会科教諭の江釣子真一先生、岡田康彦先生、多胡遥南先生に伺いました。

自分の足で調べるレポート学習
生徒の学ぶ姿勢にも変化が

社会科教諭
江釣子 真一先生

 中1は、学習習慣を確立させ、基礎学力を定着させていく重要な時期。森村学園の社会科の授業では、生徒の考える力を育み、学びに対して積極的になれるように、中1でレポート学習を実施しています。「大学受験を意識すると、社会科では、往々にして知識伝達型の授業になりがちですが、それだけでは、社会科を学ぶ楽しさや必要性は伝わりません。そこで、教科書に書かれていないことを自分で調べ、知識として養い、考える力を育む学びとして、レポート学習を取り入れています」と、江釣子真一先生は説明します。

 レポート学習は、夏休みと冬休みの課題として行われます。生徒たちは、夏休みの前に企画書を提出し、教員と相談したうえでレポートのテーマを決定。フィールドワークとインタビューを必ず行わなければならないため、自分の足で調査できる内容にする必要があります。

 自分の足で情報を得ることは、「インターネットが普及した現代だからこそ意義がある」と江釣子先生。「インターネット上にはたくさんの情報があふれていますが、それらが正しいとは限りません。不正確な情報が、まるで真実であるかのように語られている場合もあります。情報をうのみにせず、自分で調べ、仮説を立て、真偽を確かめ、修正していく力を身につける必要があるのです」と話します。岡田康彦先生も、「正しい知識を得る楽しさを経験した生徒は、その後の学習に対する姿勢も変わります。知識をただ受け取るのではなく、みずから積極的に調べるようになるなど、学びに対して貪欲になります」と、その効果を述べました。

生徒たちの個性が表れるレポート
取材を通して、話す力も一段と成長

社会科教諭
岡田 康彦先生

 生徒たちは、どのようなレポートを作成しているのでしょうか。江釣子先生は、地域のごみの回収方法について調べたレポートが、特に印象に残っていると言います。「その生徒は、市によってごみの回収方法が違う理由を知るため、複数の市役所でインタビューを行いました。さらに、ただ答えを聞くのではなく、各市の見解の違いから、矛盾点までも考察。中1であるにもかかわらず、ジャーナリストのような本格的なレポートを作成したことに驚きました」と振り返ります。

 ほかにも、地域の保育園、農業、野良猫について調べたものなど、レポートの内容はさまざま。書き方も自由であるため、イラストを多く使う生徒や、グラフ・図を活用する生徒、新聞のようにまとめる生徒もおり、個性がよく表れます。

 ちなみに、レポート学習で多くの生徒が「いちばん大変だったこと」として挙げるのは、インタビューでもレポート作成でもなく、意外にもアポイントメントです。外部の大人に、何について調べているのか、何を聞きたいのかを説明しなければならないため、緊張する生徒が多いそうです。「アポイントメントを取ったことで、大きく成長できたと話す生徒は少なくありません。度胸がつくのはもちろん、自分の考えをまとめて、他人に伝わるように話すことで、表現力も一段とアップします」と多胡遥南先生。なお、取材先の市役所の方や、民間企業の方は、とてもていねいな対応をしてくださるとのこと。なかには、レポート作成後も話を聞きに行くなど、関係が続くケースもあるそうです。

社会科を学ぶことで
他者にも優しくなれる

社会科教諭
多胡 遥南先生

 同校では、通常授業でも、考えること、対話することを重視しています。たとえば、中1では例年「捕鯨」に関する授業を実施。その歴史について学んだ後、文化としての捕鯨を尊重するべきか、クジラの生命を優先するべきか、ディスカッションを行います。答えがはっきりと出ないテーマのため、生徒たちの議論も白熱します。

 ほかにも、有機農業について学んだ際は、農薬の使用量を国内・国外で比較したり、消費者として自分たちができることは何かを考えたりします。「知識をもとに自分で考え、他人と意見を交わしているうちに、思考力は育ちます。社会科の学びは、物事をより広い視野で見るためにも必要だと、生徒たちに伝えたいのです」と江釣子先生は言います。岡田先生も、「生徒が過去の出来事の理解をもとにして、今の出来事を分析したり、理解したりできるようになると、『視野が広がっているな』と感じ、とてもうれしくなります」とつけ加えました。

 とはいえ、自分の生活に直結しないテーマには、あまり関心を持たない生徒もいます。岡田先生は、そういった生徒に対しても、「種をまき続けることが重要だ」と話します。「中1の時点では関心がなかったのに、中高での学びを経て、そのテーマについて熱心に学ぶようになり、大学での研究テーマに選んだ生徒もいます。種をまき続けていれば、いつか花が咲くときがあります。そのためにも、社会科では、視野を広げるきっかけとなるようなテーマを、今後も取り上げていきたいと思います」

 最後に、先生方は受験生にメッセージを送りました。

 「社会科は、自分の世界を広げてくれる教科です。知識が増えると、漫画やアニメも、『この出来事が元ネタになっているんだな』などと考察ができるので、もっとおもしろくなりますよ」(江釣子先生)

 「未知のものに対して、人間は『近づきたくない』と考えてしまいがちです。排他的にならないためにも、他者や世界に関心を持ち続けてください。社会科は、人を優しくしてくれる教科でもあるのです」(岡田先生)

 「知識がなければ、他者を無自覚に傷つけてしまうこともあります。社会科を学ぶことは、人間としての成長にもつながります。それを忘れずに、受験勉強に取り組んでほしいと思います」(多胡先生)

《学校のプロフィール》

森村学園中等部・高等部

所在地
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