2023年度DL選抜　第1部　個人課題「廃棄物を新しい製品に生まれ変わらせるアイデ ア」考案 　東京成徳大学中学校は、「徳を成す（成徳）人間の育成」を建学の精神に掲げる共学の中高一貫校です。東京メトロ南北線「王子神谷」駅から徒歩で5分の場所に立地し、高入生を受け入れる高等学校とは異なる別校舎で、生徒たちが自律した学習者(Distinguished Learner) に成長するためのカリキュラムを推し進めています。

　同校では2023年度より、新たにDistinguished Learner選抜入試（AO入試）を導入しました。その背景について、ICT活用推進部長で英語科の和田一将先生はこう話します。

　「本校では6年間の一貫教育を経て、生徒たちに自律した学習者（Distinguished Learner）に成長してもらいたいと考えています。Distinguished Learner選抜入試（以下、DL入試）では、東京成徳の教育ビジョンである『成徳の精神を持つグローバル人材』として成長し得るかどうかという評価の観点を設け、通常の試験では測れない資質を持った生徒を選抜します」

　DL入試は二部構成となっています。第1部は、与えられたテーマに対して各自がアイデアを出し、それぞれの視点で自由に回答を作成する「個人課題」（70分）。第2部では、第1部で作成したアイデアを発表したのちに3～4人のグループを作り、持ち寄ったアイデアをブラッシュアップするグループワーク（70分）とプレゼンテーション（20分）を行います。2023年度のDL入試では、SDGｓの『目標12　つくる責任つかう責任』をテーマに、『ごみの発生する量を大きく減らすにはどうすればよいか』という課題のもと、創造的な再利用のアイデアを考え、企画書を作成し、それを発表するという試験内容となりました。

　「受験生自身が最も良いと思う方法で表現してほしい」との考えから、試験会場には筆記用具のほかにiPadなども用意されました。同校ではこれまで、より豊かで深い学びを実現するために、全教科でiPadを積極的に活用してきました。その活動が評価され、Apple社によって、日本国内には11校しかないApple Distinguished Schoolにも認定されています。ただしDL入試では、『iPadを上手に使えるかどうか』は評価の対象になっていません。また、人前で話したり、プレゼンテーションしたりするスキルにも点数はつけないとのことです。

2023年度DL選抜　第2部　グループワークおよびプレゼンテーション 　「評価方法は『主体性』『創造性』『チャレンジ精神』という3種類の評価軸（ルーブリック）により、それぞれ4項目の観点を設け、5段階で採点を行います。たとえば『主体性』では、リーダーシップ、論理的思考力、チームワーク、客観的視点・判断力という各項目を5段階で採点します。このルーブリックで、受験生が入学後、成徳の精神を持ったグローバル人材に成長できるかどうかを判断します」と、和田先生は説明します。

　このDL入試は従来の入試とは評価軸が異なるため、一般入試で不合格だった生徒が合格を勝ち取ったり、一般入試では通常合格だった生徒がDL入試で特待合格になったりするケースもありえます。和田先生は、「一般入試で合格した生徒もDL入試で合格した生徒も、入学後は全員が語学力はもとより、広い視野と教養を身につけ、主体的な意見を持って行動してほしい。そして、困難なことにもチャレンジ、リトライができ、多様性を理解・受容し、異なる価値観の人たちと連帯できる──そんなマインドと日本人としてのアイデンティティーを持つグローバル人材として成長してほしいと願っています」と、力強く語りました。

　「自分の考えを表現したい」「新しいものをつくりたい」「とにかく挑戦が好き」。そんな受験生の気持ちを評価するDL入試で合格した生徒の存在が刺激となり、さらなる学びの可能性を広げていく同校。母体となる学校法人東京成徳学園が2025年度に創立100周年を迎えるなか、21世紀の社会を牽引するグローバル人材を育成する学校として、今後も目が離せません。