「夢中にかなう努力はない」からこそ
生徒たちが一生懸命になれる環境を
広野 今春、校長に就任されて4か月がたちました。まずは学校の印象をお聞かせください。
山地 中高の総生徒数が800人程度の小規模な学校でありながら、全体の約3分の2がインターナショナルコースに在籍するという、非常にユニークな学校だと感じました。生徒の3人に1人は帰国生ということもあり、校内では常に英語が飛び交っています。わたしも、全校生徒の前でスピーチする際には英語を使わなくてはなりませんから、日々刺激をもらっています。
広野 山地先生は、これまで大学入試センターにおいて、大学教育や大学入試改革に取り組んでこられました。大学生と中高生との間に、どのような違いを感じますか。
山地 ここに来ていちばん最初に心を打たれたのは、中高生の持つ素直さです。大学でグループワークをしていると、リーダー役に仕事を押しつけて自然とフェードアウトしていく学生や、空気を読んで自分の意見を引っ込める学生など、輪の中でなるべく目立たないようにと立ち回る者がよく見受けられます。それに比べて、本校に通う中高生は、何事に対しても真っすぐでひたむきに取り組んでくれます。その姿がとても新鮮で、たいへんうれしい気持ちになりました。
広野 これまでたくさんの大学生を見てこられて、“伸びる子”の共通点はどんなところにあるとお考えですか。
山地 大学入試センターの前は、長崎大学で教育改革の仕事に携わってきました。アクティブ・ラーニングの導入責任者として、全国のさまざまな大学に視察に行きましたが、そこで気がついたのは、「自分で考えて、自分で動くことのできる学生は強い」ということです。大学や学部の偏差値にかかわらず、自分で自分を突き動かしていく推進力のある学生、ある種の天真らんまんさを備えている学生は、たいてい優秀な成績を収めていますし、おのずと良いところへ就職していきます。
広野 学びを主体的にとらえることのできる学生は、どこに行っても通用するということですね。
山地 そういう学生の姿を見ると、「現行の大学入試システムは、子どもたちが持つ本来の素直さを奪い、決まった型に押し込める一因になっているのではないか」と感じることもありました。よく「夢中にかなう努力はない」といいますが、子どもが高いエネルギーを持って挑戦できる何かを見つけること、それにじっくり取り組める場所を保証することは、教育において重要な要素です。それは、われわれのような中等教育機関にこそ強く求められているものだと思います。
多様性に富んだ環境を実現する
「本科」「インター」の2コース制
広野 貴校では、中学入学段階から「本科」と「インターナショナル」の2コース制を採用しています。この二つの違いについて、あらためてご説明いただけますか。
山地 本科は国内難関大学や医学部への進学をめざす生徒が中心で、インターナショナル(以下、インター)は、海外大学進学をめざす生徒を中心に編成したコースです。いずれも、「問題解決能力とコミュニケーション能力の養成」「グローバルな視野と高度な英語力の習得」「デジタルネイティブ世代としての最先端ICTスキルの習得」の三つを目標としています。
広野 まずは、本科の具体的な教育内容を教えてください。
山地 本科では、中2の終わりまでに中学内容を学び終え、中3からは高校内容に入るという、中高一貫校のメリットを生かした効率的な先取り教育を行っています。また、中1から探究論文活動にも取り組み、テーマ設定、データ収集、論文執筆という探究学習の一連の流れを身につけます。選択する題材は自由で、学年ごとに変更しても構いません。生徒たちは、文学・化学・鉄道など、それぞれの興味・関心に沿ったテーマを選び、さまざまな視点から掘り下げて考察を行っています。
広野 一方、インターについてはいかがですか。
山地 インターでは、英検®1級~準1級相当の高い英語力を持つ生徒が中心のアドバンストグループ(AG)と、入学後に英語力を伸ばしていこうとする生徒が中心のスタンダードグループ(SG)の2グループが混在する形でクラスを編成しています。SGの生徒は、帰国生と共に過ごすことで、日常的に生きた英語に触れられますし、AGの生徒はSGの生徒から国語や日本の文化を学べます。それぞれが自分の得意分野で相手の苦手分野を補い、互いに高め合っている印象です。
広野 外国人教員の比率が高く、さまざまな国と地域から生徒が集まる国際色豊かな環境は、貴校の魅力の一つですね。
山地 はい。現在、所属している外国人教員は24名です。インターでは、外国人教員と日本人教員のダブル担任制を採用しており、ホームルームも英語で行います。中学入学時点で英語学習経験があまりない生徒でも、ことばのシャワーを浴びるうちに、自然と英語でコミュニケーションがとれるようになります。
本校に入学してくる帰国生は、英語圏の出身者ばかりではありません。フランス語圏での生活が長かった生徒、中国や韓国、シンガポールで幼少期を過ごした生徒などさまざまです。本校の教育目標は「自律と共生」です。バックグラウンドの異なる相手ともうまく“共生”していくことが、これからの時代の必須スキルになると考えると、この多様性に富んだ学習環境は、本校のかけがえのない財産であるといえるでしょう。
自身のキャリアビジョンを広げる
文京区の地の利を生かした文化交流
広野 ほかにも特徴的な試みがあれば教えてください。
山地 たとえば、朝礼前の10分間を英会話や英語読書、小テストに充てる「0限」では、1日の始まりに心を静めて机に向かうことで、学習に対する集中を高めています。
講習制度も充実しています。夏期講習では、120を超える講座を設け、苦手克服を目的としたものから、資格取得をめざす検定講座、最難関大学志望者向けの発展講座まで、バラエティーに富んだ内容をとりそろえています。なかには、学年を問わず参加できる「無学年制」の講座もあり、下級生と上級生が切磋琢磨しながら課題に取り組んでいます。
広野 歴史的文化施設や教育機関が集中する文京区という立地も、貴校の強みの一つですね。
山地 はい。ここから歩いて5分ほどの場所にある東洋学の専門図書館「東洋文庫」とは博学教育連携を結び、さまざまな教育活動を展開しています。また先日は、本科の生徒たちが、東京大学工学部システム創成学科の研究室へ見学に行きました。そこでのご縁がつながり、次回はAI研究関連のワークショップに呼んでもらえることになっています。これもまた、文京区という地の利を生かした試みといえます。
広野 キャリア教育にも力を入れていらっしゃいますね。
山地 代表的なのは、広尾学園と合同で、社会の第一線で活躍されている方や研究者の方を30名以上集めて行う「広学スーパーアカデミア」です。生徒はどの講義にも自由に参加することができます。たとえば、「循環小数で知る数学のおもしろさ」「IT社会における個人情報の利活用と法的保護」「ビジネスゲームで学ぶ経営学」など、さまざまなジャンルの専門的な話に触れられるので、自身のキャリアビジョンを広げるうえでたいへん有意義な時間となっています。
広野 貴校には海外志向の生徒も多いと思います。海外大学に特化した受験対策もとられているのですか。
山地 海外大学受験に精通した教員が、入試準備のポイントから奨学金制度の紹介といった実用的なアドバイスまで行っています。また、AGの生徒は中3から、アメリカの高校生が大学に進学する際に受験する共通テストであるPSAT®に、高1からはSAT®に挑戦するなど、海外大学に特化した対策を実施しています。
そうしたサポートが奏功してか、2024年〜2026年の海外大学合格数は108に上りました。今年は、中学入学の第1期生が高3になった年ですから、次年度はさらに良いご報告ができるのではないかと期待しています。
どんな子どもにも光が当たるような
“学校らしくない学校”をつくりたい
広野 先生から見て、貴校の伸びしろはどこにあるとお考えですか。
山地 いくら「生徒主体の学校運営」「自主性を大切に」といっても、積極性のある生徒だけが輝ける学校では意味がありません。自分の殻をなかなか破れない子、自分自身とうまくつながれない子にとっても、居心地の良い学校にしていくことが、わたしたちの使命だと思っています。わたしはもともと教育心理や心理臨床を専門としてきた人間です。養護教諭やスクールカウンセラーとも協力しながら、そうした生徒たちにも光が当たるような学校にしていきたいと思います。
広野 子どもというのは、それぞれに伸びるタイミングが違いますから、それをしっかり見極めることが大切ですね。
山地 そのとおりです。村田学園時代から受け継がれている「一人ひとりと向き合う」という伝統を守りつつ、新しい試みを積極的に取り入れていく必要があると感じています。
ここでいう新しい試みとは、「学校らしくない学校をつくる」ということです。従来の学校教育は、決まったものを決まった順番に教え、それにうまく適応した子どもだけを評価する仕組みでした。しかし、AIが飛躍的な発展を見せる今、そのような方法では、社会に通用する人を育てられなくなっていくのは明白です。
わたしが具体的に検討しているのは、たとえば、始業式や終業式などの定例行事の運営・進行も生徒に任せてみるということです。生徒の個性や視点を生かせる場面が多ければ多いほど、それが学びの原動力となるからです。その過程では、生徒同士の意見が対立することもあるでしょう。しかし、そうした相違を乗り越えることも、貴重な学習機会になると考えています。
広野 ますます「自律と共生」が大きな意味を持ちますね。
山地 はい。ここでの“共生”が意味するのは、あつれきや対立が起きないように先回りして手を打つことではありません。目の前の問題を受け入れたうえで、どのように対処するのか、立場の弱い人の声をいかに真摯に受け止めるかを考えることです。
今の生徒を見ていると、ある意味で訓練され過ぎていると感じることがあります。10代の子どもはもっと粗削りであるべきで、それが原因でトラブルが起きたとしても、相手の考えを理解し、関係修復に努めることは、子どもたちにとって意義ある学びになるはずです。特に本校には、異なる文化や価値観を持った生徒が集まっていますから、摩擦や対立が起きるのは当たり前です。そういう意味では、“摩擦の起きない学校”ではなく“摩擦を学びに変える学校”をめざすことが重要だと考えています。
広野 最後に、受験生とその保護者に向けてメッセージをお願いします。
山地 先ほどのお話にもあったとおり、子どもはそれぞれ伸びるタイミングが違います。お子さんのタイミングを見極めながら、私学に挑戦するのがいいのか、私学を選ぶのであればどの学校が合うのかを、時間をかけてじっくり検討してほしいのです。その際、保護者の方に留意してほしいのは、くれぐれも子どもを追い詰めないでいただきたいということ。そのうえで、本校を気に入ってくださるのであれば、責任を持ってお子さんを6年間お預かりしますので、前向きに入学をご検討いただければうれしく思います。
インターナショナルコースは外国人教員と日本人教員のダブル担任制。生徒たちの学校生活をしっかりサポートします
サイエンス教育も充実しており、約50%の生徒が理系の大学進学を志望しています
広尾学園小石川中学校・高等学校
各種行事日程のお知らせ
中学授業体験会(説明会同時開催)
9 月 12 日 (土) 9 : 30 〜 、 14 : 00 〜
学校説明会(要予約)
10 月 10 日 (土) 10 : 00 〜
入試傾向説明会(説明会同時開催)
11 月 7 日 (土) 9 : 30 〜 、 14 : 00 〜
12 月 5 日 (土) 9 : 30 〜
いちょう祭(学園祭)(要予約)
9 月 26 日 (土) ・ 27 日 (日)
◆すべて申込制です。変更・中止の可能性もあります。必ず学校ホームページでご確認ください。