受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

さぴあインタビュー

2026年10月号から転載

神戸女学院中学部・高等学部

礼拝も行事も生徒が主役
150年の伝統を守りつつ
新しい学校であり続ける

神戸女学院中学部・高等学部 大門 光歩 先生

部長 大門 光歩 先生

関西を代表する名門女子校として知られ、昨年、創立150周年を迎えた神戸女学院。キリスト教に基づく全人教育を柱とし、「愛神愛隣」を永久標語に掲げています。自由な校風の下で生徒の主体性を育み、毎朝の礼拝では、生徒自身が日々の経験や考えを語る機会も設けています。英語教育にも特色があり、キャンパスの美しさでも知られています。そんな同校で何をめざしているのか、今春、中高部部長に着任された大門光歩先生に伺いました。

聞き手

サピックス教務本部 本部長 加藤 宏章

サピックス教務本部
本部長
加藤 宏章

キリスト教を根幹に
新たな人間像を示す女子教育

加藤貴校の沿革をあらためてお聞かせいただけますか。

大門神戸女学院は、キリシタン禁制が解かれて間もない1875(明治8)年に創立されました。男子と同じ教育を与えるのではなく、女子教育を通じて新しい人間の姿を示すのが神戸女学院の方針で、女子教育とキリスト教主義教育においては、先駆的な役割を果たしてきたと自負しています。

キリスト教伝道者で思想家の内村鑑三は、「人の嫌がる役割があれば、あなたが引き受けなさい」という教えを携えてアメリカから渡ってきた宣教師たちの教育理念に、強い衝撃を受けたと記しています。当時、女性は伏し目がちに振る舞うよう教えられていたそうですが、創立者の女性宣教師イライザ・タルカット先生は、生徒たちに「背筋を伸ばしなさい」と教えました。そこには、従来とは異なる、新しい人間の在り方を示そうとする教育の姿勢が表れていたのだと思います。

この岡田山キャンパスの完成を報じた1933(昭和8)年の新聞記事には、「古くして常に新しい神戸女学院」という見出しが付けられていました。伝統を大切にしながらも、時代に合わせて常に新しさを取り入れていく姿勢は、今も非常に大切だと感じています。

加藤神戸女学院と大門先生のかかわりはどのように始まったのでしょうか。

大門2005年に聖書科の教員として着任しました。初めて神戸女学院に来たときに驚いたのは、「学校とは、こんなに楽しいものなのか」ということでした。初めて担任を務めた学年で、生徒たちがそれぞれの役割を決めることになり、わたしは投票用紙を作って持っていきました。ところが、投票をする間もなく、生徒は次々と手を挙げて役割が決まっていったのです。「役割は押し付け合っていたら決められない」「できる人が、できることをやればいい」「投票なんて時間がもったいない」と、生徒たちがさらりと言うことにも驚きました。それ以来、生徒たちが学校生活を楽しむ姿を次の世代にも受け継ぎ、一人ひとりに同じように6年間を楽しんでもらうことが、自分の役割だと考えて取り組んできました。

加藤キリスト教主義の教育についてはどのようにお考えですか。

大門わたしは聖書を教えているのですが、生徒には「聖書を学ぶことは、人間の思いを超えたことばに触れること」だと伝えています。世の中の不条理に苦しみ、どうしていいかわからないときに、人々は自分たちの思いを超えたことばを求めて聖書を開いてきたと思います。神戸女学院のキリスト教主義は、人間の思いを超えた力の存在を知ることにあります。すぐにはわからなくても、歴史のなかで大切にされてきたものには何か意味があるのではないかと、自分たちなりに考えてほしいのです。

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毎朝の礼拝から一日が始まる
生徒が自分の経験を語る場も

加藤礼拝の時間を非常に大切にされていますね。

大門毎朝20分を礼拝の時間に充てています。讃美歌を歌い、聖書を読み、教員や牧師、卒業生のほか、学校行事や委員会でリーダーを務めた生徒の話を聞く場にもなっています。

加藤生徒みずから話をするのですね。

大門行事の後には、必ずリーダーが礼拝でその経験を語ります。体育祭の後には、みんながあこがれたリーダーが、「実は膝が震えるほど緊張しながら声を出していた」といった話をしてくれます。後輩たちはそれを聞いて驚くと同時に、「自分も先輩のようになりたい」という思いを受け継いでいきます。学外の方からすれば、「たかが体育祭で、そこまで人生を語るのか」と思われるかもしれません。しかし、神戸女学院という一つの世界のなかで語られるからこそ、そこには特別な意味と価値があるのだと思います。

加藤礼拝の役割の大きさをあらためて感じます。

大門生徒たちは、こちらがハラハラするほど率直に自分の経験や思いを語りますが、そうした話をしても、冷やかされたり中傷されたりすることはありません。生徒たちは、お互いの物語を共有しているという意識を持っているのでしょう。あこがれの先輩が、なぜあれほど一生懸命に取り組んでいるのか。その思いを知ろうと、後輩たちは真剣に耳を傾けています。

加藤前任の森谷部長も、礼拝が神戸女学院の根幹をつくっているとおっしゃっていました。

大門約850人の全校生徒が講堂に集まりますが、教員が「静かにしなさい」と注意するような場面は一切ありません。毎日、ごく自然に静寂が保たれています。讃美歌を歌い、聖書のことばに耳を傾け、友だちや先生の話をじっと聞く。その時間と空間を大切にする意味を、生徒一人ひとりが理解していることが、その姿から伝わってきます。

加藤礼拝で生徒が壇上に立ち、自分の経験や思いを語る機会を、これほど多く設けている学校は、ほかにはなかなかないと思います。

大門17年ほど前、当時の中高部部長だった舩橋昭先生は、「神戸女学院がどのような学校なのかを生徒自身に語ってもらい、わたしたち教員もそこから学ばなければならない」と考え、礼拝で生徒が話す機会を増やしました。舩橋先生は、「役割が人を育てる」という考えを大切にしていました。生徒に「この礼拝をあなたにお願いします」と託すと、生徒はきちんと準備をし、教員の期待を必ず超えてくれる。そのことをわたしたち教員にも教えてくれました。また、生徒も教員も、共に神の前に頭を垂れ、一人の人間として互いに学び合うことが大切だとも教えられました。伝統や校風を長く受け継いでいくためには、やはり生徒自身がその価値を語り、次の世代へ伝えていくことが大切なのだと思います。

毎朝の礼拝や式典などに使用される850名収容の講堂。2階には荘厳な音色を奏でるパイプオルガンが置かれています

美しく自然豊かなキャンパスと
生徒主体の行事が成長の場に

{teacherTitle} {name} 先生

行事の後にリーダーは経験を語ります。
後輩はその思いを受け止め、伝統を伝えていきます。

加藤貴校は、歴史ある建物や豊かな自然に囲まれた、とても恵まれた環境にあります。こうした環境は、生徒たちの成長にどのような影響を与えているのでしょうか。

大門坂道を上った丘の上にキャンパスが広がる環境は、とても恵まれていると思います。大半の電線を地中に埋めたり、渡り廊下に隠したりしているため、キャンパスから見えるのは学校の建物と空が中心です。日常のなかで「神戸女学院という世界」に自然と浸ることができます。

神戸女学院大学で教えていた時期に神谷美恵子氏が「朝(あさ)毎(ごと)の私の礼拝」と呼び、思索を深めていた坂道を上りながら、生徒たちは学校へ向かいます。勉強にも学校行事にも一生懸命に取り組むことが美しいのだと語り合える、そんな世界へ入っていくのです。キャンパスにたどり着くまでの道のりそのものに、少しずつ神戸女学院生になっていくプロセスがあるのだと思います。

加藤ウィリアム・メレル・ヴォーリズが手がけた校舎群もとても美しいですね。ここまできれいに維持されているのは奇跡的ではないかと感じます。

大門ヴォーリズが手がけた建物はやはり特別です。建物が人を育てるという理念が生きていて、2014年には12棟が国の重要文化財に指定されました。卒業生が来ると、全然変わっていないと喜んでくれます。変えてはいけないものが何なのかを確かめるのも、われわれの使命だと思います。

自然環境の面でも恵まれています。希少な動植物も生息する岡田山キャンパスは昨年、環境省の「自然共生サイト」に認定されました。理科の授業ではフィールドワークも頻繁に行っています。「もっと学んでみたい」と思える環境が学校のなかにあることは、生徒の知的好奇心を刺激する大きな要素だと思います。日常的に自然に触れることで、教科書で得た知識が実際の体験と結び付き、生きた知識へと変わっていくのではないでしょうか。

加藤学校行事も活発に行われています。代表的なものを教えてください。

大門特徴的なのは、新入生を迎えるJ1デイキャンプです。これは新入生に良いスタート切ってもらうために上級生がつくりあげる2日間のプログラムで、神戸女学院がどんな学校なのかを伝えてくれています。

1学期には体育祭があります。中1から高3までが縦割りで六つのチームを組むのですが、とにかく練習が多いです。中1生は、最初は面倒だと思うようですが、本番が終わると、先輩たちと一緒に大きい声を出したり、泣いたり、喜んだりできたことがとても幸せだったと言います。あんなに楽しかった理由は何かと考え、やはり一生懸命に取り組むことが大事なのだと気づきます。体育祭の後、中1生が「神戸女学院に入学できて本当によかった」と話すのを聞いて、そこまでの思いが持てる行事はなかなかないとあらためて感じました。このように、生徒たちは行事を通して多くを学んでいます。新型コロナの流行期には伝統の騎馬戦や棒上帽子争奪戦が中止になったこともありましたが、再開したときは卒業生までが喜んでくれました。

英語で英語を学ぶ授業
卒業後は3分の1が医学部へ

加藤独自の英語教育にも定評がありますね。オールイングリッシュの授業を初めてご覧になったときは、どのように感じましたか。

大門うらやましいと思いました。わたし自身もそうでしたが、英語らしく発音することが冷やかされるような環境もあると思います。でも、ここではきれいに発音できるほうがかっこいいという雰囲気があり、自然な形で英語力を伸ばしていけます。卒業生に聞くと、「英語の授業が楽しく、好きだったからこそ、力を伸ばすことができた」と話していました。また、外資系企業で働く卒業生は、神戸女学院で身につけた英語の発音を職場で認められ、海外からの電話が自分に回ってくることが多いと話していました。現在もビジネス英語を学び続けているそうです。英語力が人生の大きな財産となり、自身の可能性を広げていることをうれしく思います。

加藤さまざまな分野で活躍している卒業生がたくさんいるのも貴校の教育の成果ですね。

大門最近では、法律の世界で活躍する卒業生が「KC法曹会」という同窓会組織を立ち上げたほか、医師となった卒業生による「KCメディカル」という同窓会組織もできました。在校生を応援したいと、KC法曹会が模擬裁判に参加する生徒の指導に来てくれたり、KCメディカルが医療に関する講演を開いてくれたりしています。少しおこがましい言い方かもしれませんが、伝統校には長い歴史のなかで築かれた人のつながりがあるのだと感じます。神戸女学院に入学することは、そうした人脈のなかに加わることでもあるのだと思います。

加藤卒業生の大学進学実績は公表されていませんが、医学部や理系学部に進む生徒が多いのでしょうか。

大門約3分の1が文系で、約3分の2が理系です。理系のうち半分以上が医歯薬系で、その大半が医学部です。1学年約140人のうち、1クラス分が文系、1クラス分が工学部や理学部などの理工系、あとの1クラス分が医学部というような割合です。

中1生のホームルーム。大きな黒板が前後に二つ設置されています

中1生のホームルーム。大きな黒板が前後に二つ設置されています

ヴォーリズの建築による美しさと伸びやかさが感じられる噴水のある中庭。奥にある大学の図書館は中高生も利用できます

ヴォーリズの建築による美しさと伸びやかさが感じられる噴水のある中庭。奥にある大学の図書館は中高生も利用できます

全人教育を掲げているからこそ
入試では4科と体育実技を課す

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加藤中学入試では4科と体育実技を課しています。その目的についてお聞かせいただけますか。

大門体育実技については、小学校でも成績がつきますし、中高でも10段階で評価するので、試験があってもおかしくはないと考えています。「なぜ入試に体育実技があるのですか」とよく聞かれますが、「なぜ入試に算数があるのですか」とは問われません。神戸女学院の教育とは何かを受験生や保護者の方にも一緒に考えてもらいたいと思っています。体育が苦手な子もいると思いますが、全人教育を掲げている以上、体育実技の試験は続けたいと考えています。

社会科を必修にしているのも同じ理由です。4科をしっかり学ばなくては気づけないこともありますし、すべてを学んできたからこそ抱ける好奇心もあるでしょう。そのために、やはり社会科の入試も続けていきたいと考えています。大学進学実績を公表していない理由についてもよく質問されますが、これもまた教育とは何かを一緒に考えるきっかけにしたいと思っています。

加藤最後に、貴校をめざす受験生にメッセージをお願いします。

大門神戸女学院の生徒たちには中学受験をがんばったという自負があるので、学校生活を楽しいものにしたい、幸せなものにしたいという思いがとても強いです。学校生活や友だちを大事にしますし、行事も大いに楽しみ、一生懸命に取り組みます。それは後輩たちへの優しさにもつながっています。これから入ってくる後輩のために、すでにJ1デイキャンプの準備を始めていますし、体育祭の次の組長も決まって、来年の中1生も楽しめるようにするための準備が進んでいます。中学受験の努力は中学・高校の楽しさにつながり、その後の大学入試や大学入学後の世界を楽しむことにも必ずつながります。ぜひがんばってください。

加藤本日は、貴重なお話をありがとうございました。

集合写真
女子校 私立 兵庫

神戸女学院中学部・高等学部

〒662-8505 兵庫県西宮市岡田山4-1 阪急今津線「門戸厄神」駅より徒歩15分(中高部まで)
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