さぴあインタビュー/全国版
視野を広げ、「気づき」を促す
主体的な学びを通して
“For Others”を心に刻む
フェリス女学院中学校・高等学校 校長 阿部 素子 先生

学内では出合えない世界を知る
広島研修旅行と地歴公民科講演会
神田 貴校では本物の学びを体感させることを大事にされています。各教科とも体験学習の機会が多く、たとえば先生のご担当である社会科では地歴公民科講演会や広島研修旅行を、理科では海に出掛けて磯の研究を行うフィールドワークを、国語科では歌舞伎の鑑賞教室を行うなど、教科ごとにさまざまなプログラムが組まれていますね。
阿部 5月中旬に、理科のフィールドワークがありました。中3生が長野県の上高地に行って、3日間、環境を守る大切さを考えるなど、問題意識を持ってさまざまな体験をしてきました。最終日は豊かな自然のなかで自己を振り返って、それぞれが何かを生み出すような時間をとっています。絵を描いたり、詩を書いたり、写真集を作ったり、作曲して演奏したり、何でもいいのです。それまではみんなで一緒に行動しますが、最後は一人で、五感を使って感じたことを何らかの形に残そうという取り組みです。

校長 阿部 素子 先生
西山 いわゆるフィールドワークとは少し違いますね。高1の広島研修旅行では、具体的にどのような体験をするのでしょうか。
阿部 現地に行って被爆者の声に耳を傾け、被爆者の治療をしてきた医師や研究者、ジャーナリストの話を聞きます。広島のミッションスクールである広島女学院との交流もあります。広島女学院の生徒さんが平和公園にある碑を案内して、自分たちで調べたことを説明してくれます。その後の交流会では、両校の生徒が発表を行い、たとえば「核兵器禁止条約」といったテーマでグループディスカッションをします。
広島女学院は、中国地方では最も歴史の古いミッションスクールです。原爆によって多くの生徒や先生方が犠牲になっているだけに生徒たちはしっかりとした平和教育を受けています。本校の生徒も一生懸命に調べてから現地に行きますが、それでも「平和のために高校生ができることなんて何もないのではないか」と思ってしまいがちです。でも、広島女学院の生徒や卒業生の方たちは、署名を集めたり、被爆者の方の証言を集めてアーカイブを作ったり、当時の写真をカラー化したりと、いろいろな活動をしています。そういう姿を見ると、本校の生徒たちもとても刺激を受けるようです。
昨年、本校の高2の生徒が「高校生平和大使」の一人に選ばれました。高校生平和大使とは、核兵器の廃絶と平和な世界の実現を求める署名を集めて、毎年、夏のジュネーブ軍縮会議に合わせて、スイスのジュネーブにある国連の欧州本部に届ける活動をしています。その生徒は広島研修旅行に参加したのをきっかけに、「自分も何かできることをしたい」と思って調べ、平和大使のことを知って応募したそうです。国内でさまざまな活動を行い、ジュネーブでは英語でスピーチをしてきました。実は今年も別の生徒が選ばれています。

上/カイパー記念講堂の美しいステンドグラス。ヨハネによる福音書10章11節の「良き羊飼い」を表しています
下/関東大震災で校舎は倒壊しましたが、当時の門柱が中庭に残されています
神田 大人は政治的な駆け引きや経済的な利害関係にとらわれますが、子どもたちは純粋にそうした問題に対して向き合うことができます。そして、「自分にできることは何か」と真剣に考えます。とても貴重な機会だと思います。
西山 地歴公民科講演会はどのような内容なのでしょうか。
阿部 地歴公民科講演会は昔からあったのですが、しばらく中断していて、7年ほど前に復活させました。身の回りのことだけでなく、もっと広い、自分たちの知らない世界にある問題にきちんと目を向けてほしいという思いが社会科の教員たちのなかに強くあったからです。最初はフォトジャーナリストの安田菜津紀さんをお招きしました。それから「マザーハウス」の方が来てお話をしてくださったこともあります。マザーハウスは、「発展途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念の下、発展途上国の人たちと一緒にアパレル製品や雑貨の企画・生産・販売などを行っている企業です。本当にすてきな商品を作っていて、わたしも愛用しています。今年は放射線の研究者を招き、原発事故後の放射性物質による土壌汚染について話していただきました。生徒たちはいつも熱心に話を聞いています。毎回、質問が次から次へと出て、最後は時間がなくなり、打ち切るのが大変なくらいです。そのように、授業で紹介できないような仕事をなさっている方たちと生徒たちを出会わせたいという趣旨で開催しているのが、この地歴公民科講演会です。
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