実学を通じて知的好奇心を刺激
植物の不思議を体で感じる
この日、中1生たちは事前に採取したショカツサイのスケッチに取り組んでいました。「輪郭の線は1本で描こう」とアドバイスするのは、生物教諭の武中豊先生です。実物投影機を使って解剖の実演をする武中先生の説明に耳を傾けながら、生徒たちは花の細部まで観察し、離弁花の特徴を確認しました。
続いて武中先生は、生徒たちを教室の外へと誘い出しました。「雑木林の植生を知る」をテーマに、広大なキャンパスに広がる雑木林を歩き回り、さまざまな植物を五感で味わいます。
国蝶オオムラサキの食草であるエノキ、「生きた化石」として知られるメタセコイアを観察した後、背の高さまでぐんぐん伸びたタケノコと背比べをしました。生徒たちはサンショウや月桂樹の葉の匂いを感じたり、「ハガキの木」と呼ばれるタラヨウの葉の裏に文字を書いたりして、植物の不思議を体で感じます。こうした雑木林でのフィールドワークは一人ひとりの知的好奇心を大いに刺激します。チャイムが鳴り、教室に戻っていく生徒たちからは「ずっとここにいたい」という声が聞こえてきました。
生徒たちは竹林に生えたタケノコを観察しながら、「背丈くらい伸びているね」と成長のスピードに驚いていました
“Wonder”が学びの入り口
驚きと発見の連続が成長を促す
武中先生が大切にしているのは、「Wonderを引き出すこと」です。「ただ『観察しなさい』と指示するのではなく、興味・関心を先に引き出せば、生徒たちは自然と学びに入っていきます。そして、驚きと発見の連続が成長を促すのです」と語ります。たとえば、生徒一人につき1個ずつニワトリの有精卵を温め、胚が成長していく過程を観察する「いのち」の取り組みもその一つです。なかには「ヒナが誕生するまで温めたい」と願う生徒もいて、そのままクラスで育てることになったニワトリもいます。
生徒たちの研究は学外にも広がっています。卵の殻を使って金魚のヒレを再生する研究発表がきっかけとなり、大手食品メーカーとの共同研究に発展しました。武中先生は「敷地内の竹林で収穫したタケノコでたけのこご飯を作ったり、竹を割って流しそうめんを楽しんだりするのも実学の一環で、保護者の方からも『農大らしい』と好評です」と話します。4月中旬に富士河口湖で行われる宿泊研修では富士山原生林で洞窟を探検し、5月には総合学習として稲作(田植え)を実施するなど、中1生の研究はこれから本格化していきます。
2023年から大規模な新校舎建設工事が行われている同校。2026年冬には理科実験室や図書室などが整備され、実学教育を体現する実習・実験環境がさらに充実します。
キャンパス内で採取した中国原産のショカツサイを観察。薄紫色の十字形花や特徴的な葉の形状をスケッチで表現します