受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2023年7月のBooks

 古い学校には古い用具があります。骨格標本・とび箱・そろばん・振り子時計…。今月紹介する『えんぴつはだまってて』は、学校に落ちていた古い鉛筆の妖怪「つくも神」が活躍する楽しいお話です。「つくも神」はもともと古い物に宿る精霊。漢字では「九十九神」と書き、100年を経た物に宿るとか。皆さんの学校は創立何年ですか。精霊が宿りそうな物はありますか。想像を膨らませながら読んでください。

たびする 国境こっきょう

  • クドル=文

  • ヘラン=絵

  • なかやまよしゆき=訳

  • 文研出版=刊

  • 定価=2,750円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

国境をこえて つながる未来に向けて─ 世界の国境の今を紹介

注目の一冊

 世界地図を広げると、いくつもの国がジグソーパズルのピースのように地球上の土地を分け合っています。その国と国とを分ける線が国境です。兵士が見張っている国境もあれば、ベンチや木のくいがあるだけの自由に行き来できるところもあります。高い壁が突然つくられることもあれば、つくられた壁が人々の手で壊されることもあります。隣り合う二つの国の考え方や、その時々の関係性で、国境の在り方はこんなにも変わるのです。
 韓国の作家と画家とのコンビによる、世界の国境を紹介する絵本です。国境にはいろいろな表情があります。そこは隣の国の人々と出会える場所であり、違う文化や違うことばと出会える場所です。仕事を求める人、学びたい人などが行き来する一方、自国に住めなくなった人々が命がけでこえる場所にもなっています。そうしたさまざまな角度から世界中の国境を、大胆な構図と細やかなタッチの美しい絵でていねいに描き出していきます。
 わたしたちは国境をこえて運ばれてきた物を食べ、国境をこえて伝えられた音楽を楽しんでいます。オンラインで地球の反対側の人と顔を見ながら話すことだってできます。昔から文化も芸術も技術も科学も国境をこえてやってきました。だから今があるのです。「国境は国と国とを分ける線ですが、この本はその線をこえて生まれる『出会い』に光を当ててつくりました」。そう語る作者のことばは、自身の故国にも自由な往来を妨げる「軍事境界線」があるだけに重く響きます。

『しんかい6500 深海のひみつをさぐれ!

  • 山本省三=作

  • 友永たろ=絵

  • くもん出版=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け

船の構造から内部のメカ、 岩石の取り方まで 深海調査は工夫がいっぱい

 「しんかい6500」の白い船体が、母船「よこすか」からクレーンで海に降ろされていきます。重りとなるタンクの空気を抜き、水を入れると船体が潜り始めます。潜り始めて1時間。いよいよ水深3500mの海底です。真っ暗な深海では障害物ソナーが大活躍。音の跳ね返りで障害物を探知しながら進んでいきます。
 日本が誇る有人潜水調査船「しんかい6500」。空気もない、光も届かない深海で、どうやって水圧に押しつぶされずに調査ができるのか。その謎をわかりやすい図や絵を使って解き明かします。潜り方、浮き上がり方、操縦室の様子、岩石の採集のしかたなど、どれも厳しい環境で調査するための技術の工夫がいっぱいです。

『えんぴつは だまってて』

  • あんずゆき=作

  • たごもりのりこ=絵

  • 文溪堂=刊

  • 定価=1,540円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

鉛筆の妖怪は言った 「おれさまを使えば テストはいつも百点!」

 学校にある使われていない教室の前で短い緑色の鉛筆を拾ったエリカ。家に持ち帰って捨てましたが、夜中にくずかごから「こんなとこ、いやや」という声がします。飛び起きたエリカの前で、くずかごから捨てた鉛筆が転がり出て、緑色の生き物に姿を変えました。その生き物の正体は、古い物にとりつく妖怪「つくも神」。不気味がるエリカに妖怪は言いました。「おれさまを使ってテストを受けたら絶対百点やし」。エリカの心は揺れ動きました。
 鉛筆から出てきたおしゃべりな妖怪が、学校のがらくた整理に大活躍します。でも鉛筆だけに、活躍するたびに体が短くなっていくのがちょっと心配です。物を大事にするすばらしさが伝わる楽しいお話です。

『ハーベスト』

  • 花里真希=作

  • 講談社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

「いつもここじゃない どこかを探してる感じ」 ぼくもそうだった、でも…

 中1の朔弥は人と話すことが極端に苦手。話しかけられるとどぎまぎしてしまいます。そんな朔弥が入部したのは園芸部。といっても部員は同級生の西森くんと中2の帰国子女アズサの3人だけです。活動初日、朔弥たちは学校の花壇を、花や野菜を寄せ植えにしたフランス風家庭菜園にしようと決めます。ところが園芸部には種も農具もそれを買うお金もありませんでした。
 「なんではっきり話さないの」と言われ続けてきた朔弥の人生。でも西森くんもアズサもからかうことなく普通に接してくれるのは、学校で居場所がないという共通点があるからかもしれません。悩みを抱える3人にとって、園芸部が大切な場所になっていく日々を描きます。

『シタマチ・レイクサイド・ロード』

  • 濱野京子=作

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

わたしはみんなのように 好きなことへの情熱がない 自分は何をしたいのだろう

 高2の希和子が文芸部に加入したのは、友だちに「部員が少ないから」と頼まれたから。ほかの部員はそれぞれ個性的で、自分が書きたい小説や詩に熱い思いがあります。希和子は書くことは好きですが、特に書きたいものも情熱もなく、文芸部にいる意味を見いだせずにいました。意欲満々の新1年生部員が入ってくると、希和子はますます自信をなくすのでした。
 希和子の高校があるのは上野公園の近く。不忍池や千駄木、本郷など、かつて文豪たちが行き来した街の空気が物語を豊かに包みます。悩む希和子が幼なじみの異性と再会したのもまた不忍池でした。文芸部の人間模様を横糸に、希和子のラブストーリーを縦糸に描く青春物語です。

『増えるものたちの進化生物学』

  • 市橋伯一=著

  • 筑摩書房=刊

  • 定価=880円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け・一般向け

「なぜ生きるのか」 人間が悩むのは 生物としての生存戦略に由来

 人は悩みながら生きています。自分の性格や能力、健康、家族や友だちとの関係など悩みは尽きません。でも人間を生物の一つととらえたとき、悩むことには、必然性があるのだとしたら、その悩みの重さも変わるかもしれません。生物の本質は自分の性質を受け継いだ子孫を残すことです。人間がほかの動物より悩むようになったのは、増えるための戦略として「少産少死」を極めたからだと、著者は言います。
 進化合成生物学の研究者が、多様な生物を例に挙げながら「人はなぜ生きるのか」という疑問を科学的に解明します。「生きることに目的や使命はないが価値と生きがいはある」と著者。生命の起源と未来を見つめながら、生の悩みからの解放に科学の光を当てていきます。

『即動必遂 東日本大震災 陸上幕僚長の全記録

  • 火箱芳文=著

  • マネジメント社=刊

  • 定価=1,760円(税込)

感じ取ってほしい いざというときの 「判断」「決断」の重さ


海浜幕張校 校舎責任者

 2011年3月11日午後2時46分。東京の防衛省庁舎で会議中だった著者は、東北で大地震が起きたことを知り「戦が起きた」と直感します。一刻も早く現地対応すべく部下に部隊を集めるよう指示。11階から階段を駆け下りながら、頭の中では細かな作戦計画がフル回転していました。本来なら防衛大臣の災害出動命令が出る前に、部隊を動かすことは規律違反です。それでも国民の命を救うために「やるしかない」と覚悟したのです。その背景には初動の遅れで十分な役割が果たせなかった阪神・淡路大震災での苦い経験がありました。
 東日本大震災発生当時、陸上自衛隊のトップだった著者が残した、歴史的な大災害に対処した自衛隊の記録です。同時に、未曽有の大災害のときに、全責任を負う覚悟で決断した人がどんな思いでいたかも、この本は教えてくれます。
 覚悟を持って判断や決断をしても、すべて結果がうまくいくとは限りません。中学受験にも通じるものがあります。中学入試の問題は、特に難関校の場合は、すべて時間内に解くことは、ほぼできません。どの問題を解いてどの問題を捨てるか、判断しなくてはなりません。このように勝負する以上、どこかで自分で判断や決断をしなくてはならない場面は、人生において何度もあります。著者はまた、災害救助のために部隊を動かす一方で、日常の国防がおろそかにならないように注意しました。受験勉強に置き換えると、たとえばマンスリーテストがあるからといって、ふだんの勉強をおろそかにしてはいけない、ということです。日常のことをきちんとしながらイレギュラーなことに対応していく必要があります。
 周りの人は結果だけを見て、「あの判断はおかしかった」などと批判をします。でも判断に至るまでにはさまざまな経緯があります。結果がどうなるかもわかりません。それでも自分の判断で動かなくてはならないときがある。そんな決断の重さを感じ取ってもらえたらうれしいです。

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