受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2022年10月のBooks

 10月の第2月曜日は「スポーツの日」です。2020東京オリンピック・パラリンピックを機に、かつての「体育の日」が名称変更されました。2回前の2012年の大会はロンドンで開かれましたが、このとき大きな出来事がありました。義足のアスリートがパラリンピックではなく、オリンピックに出場したのです。結果はリレーで8位入賞でした。今月紹介する『義足の研究』は、医療のイメージが強い義足を、スポーツの側面から追究した本です。テクノロジーの幅広い可能性を伝える一冊としてお薦めです。

だれよりも速く走る 義足の研究』

  • 遠藤謙=著

  • 偕成社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

「障害」ということばを テクノロジーの力で なくしたい!

注目の一冊

 それは2008年、著者の遠藤謙さんがアメリカ留学中のことでした。北京夏季パラリンピックの陸上競技を見ていた遠藤さんは、あるシーンに大きな衝撃を受けました。義足のランナー、オスカー・ピストリウス選手が走る姿が美しく、かっこよく、そして何よりとても速かったからです。
 それから5年後、2020年の東京開催が決定したとき、彼はそのニュースを高校の後輩と富士登山をしている最中に耳にしました。骨肉腫で足を切断した後輩は、義足での富士登山にチャレンジしていたのです。もともと二足歩行のロボットを研究していた遠藤さんが、この道に進むきっかけになったのが、この後輩の存在でした。パラリンピックの東京開催決定は遠藤さんの背中を大きく押しました。「2020年、義足アスリートであるパラリンピックチャンピオンが、オリンピックチャンピオンより速く走る」。そんな大きな目標を掲げて会社を立ち上げたのは翌年のことでした。
 スポーツ用義足研究の世界を、プロが自身の経験を通して見せてくれます。インドの貧しい人のために取り組んだ安価な義足づくり、失敗を重ねた試作品づくり、特殊装置を使った走り方の研究など、多くのエピソードがチームで困難に挑戦し続けるすばらしさを伝えます。視力が悪くても眼鏡をかければ生活できるのと同じように、自由自在に動かせる義足ができれば「障害」ということばもなくなるかもしれない。その日をめざして開発を続ける遠藤さんの姿は、テクノロジーの無限の可能性を教えてくれます。

『かみなり』

  • 武田康男=監修・写真

  • 小杉みのり=構成・文

  • 岩崎書店=刊

  • 定価=1,430円(税込)

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

きれい?こわい? 迫力満点の写真が とらえた雷の不思議

 蒸し暑い夏の日の午後。空にぽっかり浮かんだ綿のような雲が、湿った風を吸い込んで大きな入道雲になります。入道雲がさらに大きくなったとき、急に冷たい風が吹き、太陽が隠れて雲が空を覆いつくします。「ゴロゴロ、ドーン」。雷が発生しました。
 空の奥で不気味にうなったり、強烈な光線が空を引き裂いたり。雷とは何なのでしょう。迫力満点の写真を通して、雷の不思議を解き明かす写真絵本です。雲の中で氷の粒どうしがぶつかって生まれた電気の光線は、通り道を探します。空を横に走ったり、海に一直線につながったりもします。雷のさまざまな表情が、雷の仕組みを教えてくれます。

『とんぼの ぎんちゃん うまれたよ!』

  • ねもとまゆみ=作

  • たけがみたえ=絵

  • 須田研司=監修

  • 童心社=刊

  • 定価=1,430円(税込)

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

ヤゴからトンボへ 子どもからお母さんへ ギンヤンマの命の物語

 夏の日差しが差し込む池の中を、卵から生まれたヤゴがふわりふわり。からだが大きくなってきたら、きつくなった皮を脱ぎ捨てます。大人になるまで何回も何回も。そして寒くなってきたら、からだの色と似ている枯れ葉に隠れて冬越しをします。やがて待ちに待った暖かい季節がやってきて、水から顔を出し始めたヤゴ。空での生活がもうすぐ始まります。
 生まれたばかりのギンヤンマのぎんちゃんが、池から飛び立ち、やがて池に戻って卵を産むまでの命の物語です。すみか、暮らし、獲物の捕え方など、ページをめくるたびに、柔らかいタッチの絵が、トンボの不思議を見せてくれます。

『はじめましてのダンネバード』

  • 工藤純子=作

  • マコカワイ=絵

  • くもん出版=刊

  • 定価=1,540円(税込)

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

外国人だから わかるわけがない? 本当にそうなのかな

 蒼太のクラスに転校生がやってきました。名前はエリサちゃん。ネパールから来たばかりの外国人で、日本語があまりわかりません。みんなが話し掛けても毎日黙ったまま。授業中は指されないし、宿題もできるところまででいい。しかも給食を食べずに、午前中で帰ってしまいます。やがてみんなは言い始めました。「外国人はずるい」。
 隣の席のエリサちゃんが気になるのに、恥ずかしがり屋で気が弱い蒼太は、何もできません。でも勇気を奮って行動に出てみると…。ことばがわからなくても、相手の気持ちになって考えることは大切です。エリサちゃんとの交流を通じて、蒼太もみんなも大切なことに気づいていきます。

『この空のずっとずっと向こう』

  • 鳴海風=作

  • おとないちあき=絵

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

西洋で学びたい! 激動の幕末期は 夢が膨らむ時代でもあった

 町医者の娘、そらはある日、子どもたちにいじめられている小さな男の子を助けます。大六と名乗るその子は、津山藩に仕える学者の子で、外国の書物を訳す蕃書調所で英語を習っているとのこと。そらは、いじめられていた大六が「ストップイット!」と叫んでいたのを思い出しました。
 外国との交流が始まる一方、これに反対する攘夷派の襲撃事件が相次ぐ幕末期。そらは大六との出会いをきっかけに、女性の留学など考えられなかった時代に、その夢を実現させていきます。モデルは津田梅子らと共に岩倉使節団に同行して渡米した吉益亮子。史実を軸に、新しい時代に向かって夢を膨らませていく人々の姿を生き生きと描き出します。

『生き物が老いるということ 死と長寿の進化論

  • 稲垣栄洋=著

  • 中央公論新社=刊

  • 定価=902円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

進化の過程で獲得した 最強戦略としての 「死」そして「老い」

 イネは土中の肥料が多過ぎると、秋になっても葉が黄色くならず、青々とさせているといいます。本来、この時期のイネに肥料は不要です。葉は枯らしながらも、今まで蓄えた栄養分を集めて、枯れながら米を実らせていくからです。「老いる」とは、人間にとってそういうことではないだろうか、と著者は言います。
 子を産み、育てた後は、すぐに死んでしまう生き物が多いなか、なぜ人間はその後も長く生き続けるのでしょうか。実は人間にとって「老い」とは、必要なものとして獲得した特権なのです。中学入試問題にその文章が頻出の植物学者が、植物や動物の成長を例に、人間が老いることの意味を説き明かします。

『地球のしくみと環境問題 地球で起きていることがわかる本

  • 北原義昭・菅澤紀生=監修

  • メイツ出版=刊

  • 定価=1,727円(税込)

過去から現在、未来まで 流れをたどりながら 理解する環境問題


横浜校 校舎責任者

 地球温暖化の話を中心に、地球で起きている環境問題をわかりやすく説明しています。特徴は地球誕生の話から始まり、過去から現在までの変化、現状、そして未来の可能性まで、流れを追って理解できるようになっているところです。
 最初に地球の成り立ち、生物の誕生と進化、地球の気候変動、太陽と地球の関係などについて説明し、わたしたちが住んでいる地球がどんな星かを解き明かします。そこから温暖化とは何か、どんな影響が出ているのか、さらに酸性雨、生態系の変化、砂漠化など、地球で起こっている温暖化以外の環境問題も解説していきます。また、地球で活用できる再生エネルギーについても詳しく触れられていて、どんなものがあって、どう利用できるか、この先の未来を見せてくれます。
 環境問題は、中学入試の社会や理科の問題としてよく出題されています。関連する長めの文章を読ませたうえで設問に答える形式も多いので、単に知識としてだけではなく、背景や流れをつかんでおくことが大切です。また「自分だったらどうしますか」といった、自分でできるエコな生活について記述させる問題もよくあります。本書では、ごみを減らすための工夫や省エネの工夫など、身近な生活のなかでの取り組みについても紹介されているので、知っておくと役立つでしょう。各ページに掲載されているグラフや表は、そのまま入試問題で取り上げられてもおかしくない重要なものばかりです。コラムとして出ている用語解説も、知っておかなければならないものが多く取り上げられています。
 テーマごとに見開き2ページで完結しているので、家庭学習の合間などに少しずつ読み進めることもできます。各ページの下には、大人でも知らないようなおもしろい一口知識が出ていて、家族で話題にしたり、クイズを出し合ったりして楽しめます。こんなところから、社会や理科が好きになってくれたらうれしいです。

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