受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

第66回 ピアニスト

イメージ画像 88鍵、7オクターブを超える音域を持つ鍵盤楽器のピアノは、身近な楽器のなかで最も広い音域を持っています。皆さんのなかにも、習っている人は多いでしょう。今回はそんなピアノを演奏するピアニストの仕事を紹介します。どうしたらピアニストになれるのでしょうか。全日本ピアノ指導者協会を訪ね、専務理事の福田成康さんにお聞きしました。 イメージ画像

ピアニストは
どんな仕事をしているの?

 ピアニストは、鍵盤楽器の一つであるピアノを表現力豊かに演奏して聴衆に感動を与える演奏家です。クラシックをはじめ、ジャズ、ポップス、ロックなど、さまざまな音楽ジャンルで多くのピアニストが活躍しています。

 目の前に聴衆がいるピアニストの演奏活動としては、まずコンサートを開いてソロで弾く、バイオリンやチェロといった弦楽器の演奏者と一緒に室内楽の演奏をするといったことが挙げられます。また、企業や結婚式などのイベント、ホテルやレストランなど、さまざまな空間で演奏する機会もあります。1台でオーケストラ並みの音域を出せるピアノは、バレエ・ミュージカル・合唱などの伴奏や練習、ドラマ・映画の音楽作りなど、幅広い場で活躍しています。さらに、演奏を録音してCDを発売する人、演奏している動画をYouTubeなどで配信する人もいます。

 そんなピアニストのなかには、ピアノ教室や大学、専門学校などで生徒の指導をしながら、演奏会などに出演している人も少なくありません。

 そのほかに、どんな仕事がピアニストの収入になるのか、人気ピアニストである赤松林太郎さんに尋ねてみました。赤松さんによると、年に数十回、ピアノの先生向けのセミナーなどで話すため、その講演料も収入となります。それに加え、新聞や雑誌に掲載される原稿の執筆料や、出版された本の印税もあるそうです。このように、ピアニストとして人気が出て著名になると、演奏や指導だけでなく、そうした付随する仕事もして収入が増えていくのです。活動場所も、日本だけではなく海外を拠点にしているピアニストもいます。

ピアニストになるには?


一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)
専務理事
福田 成康 さん

 たとえば、音楽大学に進学してピアノを専攻するなど、音楽を専門に学べる大学や短大、専門学校で理論を学ぶとともに、演奏家として必要な技術や楽曲を理解する力、表現力などを磨くのが王道です。また、高校から音楽やピアノを専門的に学べる学校も全国にあります。学生時代から国内外で開催されるコンクールに参加して優秀な成績を収めると、クラシック曲を中心に演奏するピアニストになれる道が開けるでしょう。

 しかし、なかには音楽大学などには進学せず、一般の大学で音楽とはまったく異なる専門分野を究めつつ、ピアノのレッスンを続けてピアニストになる人もいます。

 たとえば、電子ピアノのテレビCMなどにも出演している角野隼斗さんは、開成中学校・高等学校、東京大学を卒業。東京大学大学院情報理工学系研究科に在学中の2018年8月、日本最大級のピアノコンクールであるピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリを受賞したことをきっかけに、本格的にプロの道を歩み始めました。

 また、先ほど紹介した赤松林太郎さんも、音楽大学ではなく神戸大学を卒業した後、パリのエコールノルマル音楽院に留学しました。2000年のクララ・シューマン国際ピアノコンクール第3位入賞を機に、ピアニストとして本格的に活動を始めたのです。

 以上のように、ピアニストになるために必要な資格はなく、コンテストで優秀な成績を収めることが、ピアニストとして活躍する近道なのです。このように音楽大学に進学しなくてもピアニストになることはできますが、クラシックは伝承音楽(古くから伝わる伝統的な音楽)のため、一般の大学を卒業した人は、海外の音楽学院などに留学して学ぶことが多いです。いずれにせよ、プロの演奏家として必要な高度な演奏技術は、短期間では身につかないため、幼少期からレッスンを受けて、音感や、ピアノ演奏のテクニックを養ってきた人がほとんどです。

 同様に、ピアノの先生になるための資格もありません。しかし、ピティナが主催している指導者ライセンス制度や、楽器メーカーなどが独自に行っている検定試験などがあり、指導者をめざす人の多くが、そうしたライセンスや検定の取得に挑戦しています。

 一方、クラシックではなく、ジャズのピアニストやセッション・ミュージシャン(自分では演奏しない歌手などが音楽スタジオでレコーディングする際に、楽器を演奏するミュージシャン)などをめざすなら、有力な演奏家から教えを受けたり、ほかの楽器の演奏者とセッションしたりしながら演奏技術を磨きます。そうした活動を通じて実力が認められれば、音楽事務所や有力演奏家などから声が掛かり、プロへの道が開ける場合もあります。

ピアニストに求められる資質は?

 ピアノを弾くのが好きなことが第一です。ピアニストに必要な卓越した演奏テクニックを身につけるには、長年にわたって、日々練習を重ねる必要があります。それができるのは、何よりピアノの演奏が好きという気持ちがあり、音楽を演奏することに喜びを感じられる人でしょう。そして、ピアノが好きになったきっかけとして、いい先生や仲間と出会ったことを挙げるピアニストは少なくありません。

 それがピアノであるかどうかにかかわらず、小学生の皆さんは興味を持ったことを一生懸命にやってください。そうすれば、「好きだから、得意。得意だから、好き」というように、好循環になるはずです。

全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)とは

 ピティナは1966年に発足した、ピアノを中心とする音楽指導者の団体です。ピアノの先生をはじめ、大学の先生やプロの演奏家、調律師、音楽研究者、そしてピアノ学習者とその家族など、さまざまな立場の会員が約1万7000人所属しています。
 ピティナは、日本最大級のピアノコンクール(ピティナ・ピアノコンペティション)の運営や、ピアノ指導者の育成など、ピアノにかかわるさまざまな事業を行っています。そのなかの一つ「ピティナ学校クラスコンサート」は、ピアニストを小学校の音楽室に派遣して行う演奏会です。派遣先の小学生は、間近でプロの演奏が聴けるほか、音楽に関する話を聞いたり、一緒に演奏したりもでき、豊かな音楽体験の機会になっています。

ピティナ・ピアノホームページ
https://www.piano.or.jp/

「第66回 ピアニスト」:
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