ぼくは間違いなく、サピックスの先生たちの考える「こういうヤツは絶対落ちるリスト」に全部当てはまる受験生だった。だってぼくは、本当にやる気がなかった。
　４年生や５年生のころは、まだ家庭学習をがんばっていたと思う。だけど、受験勉強に飽きたぼくは６年生になると、親の目を盗んで手を抜く技を身につけた。「基礎力トレーニング」は何か月分もためた。「コアプラス」も「言葉ナビ」も「漢字の要」もただ眺めたらおしまい。ページの間に漫画を隠して読んだりもした。朝型どころか、本番前夜まで布団の中にスマートフォンを持ち込んで夜更かしもした。
　そんなぼくが唯一がんばったのは、サピックスの授業、特にＳＳ特訓だ。第一志望の麻布中の対策だけはおろそかにしないように必死に取り組んだし、解説も真剣に聞いた。麻布は問題がおもしろいので、家でもＳＳ特訓の教材や過去問をやり込んだ。特に１月受験の後は、急にすごくやる気が出たので、集中して解きまくった。
　ぼくが合格できたのは、やはりＳＳ特訓のおかげだと思う。あとは、麻布対策なら誰よりもがんばった自信があったので、あまり緊張せずに平常心で本番に臨めたことだ。２月１日、ぼくの頭はいつになく冷静に冴えわたっている感覚があった。たぶんそのおかげで、いつもならやらかすばかみたいなケアレスミスもなかったと思う。だから、ぼくの考える合格への一本道は、とにかく志望校対策教材にたくさん取り組んで自信をつけること、それだけだ。
　ただし、「基礎力トレーニング」「コアプラス」「言葉ナビ」「漢字の要」については、ぼくの真似をせず、しっかりやることをお勧めする。きちんとやれば、たぶん安心材料になって合格への距離が縮まるはずだ。ぼくも最後には、もっと真面目にやっておけばよかったと、ちょっとだけ後悔した。
　そして、いちばん大切なのは言霊を信じること。成績が下がろうが、周囲に何を言われようが、ぼくは「必ず麻布に受かる」と信じ、そう言い続けた。願望は確信として口に出し続けるべきだ。そうしたら必ずかなう。ぼくはそう思っている。