受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

やりたいことはすべてやれる!
「経験」を「学び」にして
世界に羽ばたく人になる

洗足学園中学高等学校 校長 宮阪 元子 先生

「女子教育に命をかける」
創設者の思いを受け継ぎ100年

聞き手1
サピックス
教育情報センター所長
神田 正樹

神田 洗足学園は今年でちょうど創立100周年を迎えられました。初めに、学園の沿革についてご紹介いただきたいと思います。

宮阪 本校は1924(大正13)年、前田若尾によって創設されました。若尾先生は1923年9月の関東大震災で、多くの人々と共に屋根の下敷きとなり、はりに右足をはさまれてしまいました。その間、苦しむ人々を救うことができず、ただただ祈るばかりでしたが、その祈りが天に通じたのか、再度の大揺れで足が抜け、九死に一生を得た若尾先生は「残る半生を女子教育にささげよう」と誓いました。就学の機会を失った娘たちのため、自宅の2階を開放して夜間の私塾を開き、やがて敷地内に校舎を建て洗足学園を創立します。その志を継いだ女性たちによって学校はどんどん大きくなり、現在は幼稚園から大学院まである総合学園となりました。

神田 震災直後の創設ですから、先生方は大変なご苦労をされたと思います。宮阪先生はどのような経緯で学園とかかわることになったのですか。

宮阪 わたしは大学卒業後、教職に就きましたが、夫の転勤が多かった関係でしばらく教職を離れていました。しかし、もう一度教育に携わりたいという気持ちが強くなり、幸運にも洗足学園にご縁をいただき、国語の教員として着任しました。ちょうど本校の学校改革が始まった時期で、教員も大きく入れ替わり、「これから洗足学園は変わっていくんだ。みんなでがんばろう」という時代でした。

神田 その改革が実を結び、大きな発展につながったわけですね。ホームページに、教育理念のなかで大切にしていることが四つ挙げられています。一つ目が「LEARN FROM EVERYTHING」。これは、ありとあらゆる経験が学びになるということですね。

宮阪 どんな経験にも失敗がつきものですが、どんどん経験して、どんどん失敗してほしいと思っています。その失敗が次への活力になることをわたしたちは何度も見て、知っています。

神田 二つ目の「EMBRACE YOUR COMMUNITY」は、周りの人を大切にするということですね。考え方や価値観が違う人がいても、それを受け入れ、尊重する気持ちを持ってほしいということでしょうか。

宮阪 入学式ではいつもこんな話をします。「あなたの人生が大事なように、隣の人にも大事な人生があります。価値観はそれぞれ違うのが当たり前で、それを認めて、思いやりの心を持って6年間を過ごしてください」と。繰り返しそのような話をしていたら、毎年、高校進学を控えた中3生全員に行っている校長面接でも、「高校では、友だちの価値観を受け入れて、思いやりを持って過ごしたいと思います」と言う生徒が増えてきました。

神田 皆さんがそう思ってくれているとしたら、とてもうれしいことですね。三つ目は、「THINK FOR YOURSELF」。自分で考えることが大切だという意味ですね。

宮阪 卒業後、海外に行く生徒が増えてきましたが、世界に出ると、必ず「あなたはどう考えるか」と聞かれます。今この場にいて、このことについて、あなたはどう思うか、あなたのパーソナルな意見を聞きたいと問われます。そこで発言するためには、知識や語学力はもちろん、表現力、コミュニケーション力なども必要です。それを中学・高校のうちにできるだけ身につけてもらい、高等教育機関に送り出すのがわたしたちの使命だと思っています。

神田 四つ目が「SOAR」。これは「飛び立て」といった意味でお使いになっているのですね。

宮阪 以前、ニュージーランド語学研修の引率に行ったとき、アルバトロスが大空を雄大に舞う姿を見て、大変感動したことがきっかけです。ばたばたと羽ばたくのではなく、大空を雄大に滑空する、その姿が、生徒たちが将来、世界中で貢献するイメージにつながったのです。そんな思いを込めたことばです。

メインビジュアル校舎1階の「TEA LIBRARY」

24年6月号 さぴあインタビュ ー/全国版:
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