【２月１日】
　早稲田実業の試験を終えた娘の表情が冴えない。娘に悟られまいと精一杯の平静を保ち、午後の東農大の試験に集中しようと声を掛ける。夜、東農大の合格を確認し、ひとまず胸を撫でおろす。

【２月２日】
　この日の試験は吉祥女子のみ。夜、吉祥女子の合格を確認し、寝付けずにいた娘に伝えると、喜んでベッドに飛び込みそのまま就寝。

【２月３日】
　慶應中等部の一次試験。最も厳しい戦いになると考えていた学校だ。朝、気負わずに力を出し切ろうと伝える。中等部の試験終了直後の13時、早実の合否を確認し、結果は不合格。家族３人が奈落の底に落とされた様な気分だ。しかし娘は夜には平静を取り戻してくれた。元々立ち直りが早い性格であるのに加えて、１日午後と２日の合格が効いたのだろう。

【２月４日】
　15時、慶應中等部１次試験の合格発表。家族３人がＰＣの前に集合し、妻が恐る恐るマウスをクリック。結果は何と合格！ ３人が抱き合って喜ぶ。ここまで来たら絶対にやり切ると心に誓う。

【２月５日】
　体育実技試験の後、面接が行われた。面接は娘への質問から始まり、次に父親と母親それぞれへの質問と続く。その後、娘の趣味に関する質問があり、「ダンスをきれいに踊るには心もきれいでなければならないと教わってきた」との娘の回答に先生方が一様に頷く。ダンスの先生に思わず感謝。面接が終わり、娘の好回答は良いとして、私たち両親の回答は問題なかったか、確信が持てない。しかし、持てる力の全てを出し切ったとは思う。

【２月６日】
　娘は久々に学校に、妻は仕事の為、私が自宅で発表を確認することに。起床から終始落ち着かないまま15時となり、勇気を出して合否を確認。画面にはなんと「合格」の文字が！ 緊張からの反動で一気に歓喜が弾ける。即座に妻とサピックスの担当の先生に連絡。先生から「お子さん本当に頑張ったんだと思いますよ」との言葉を頂き、柄にもなく目が潤む。最高に嬉しい瞬間だ。その後、娘がいつもより遅れて帰宅。久しぶりに会ったお友達と話すことが沢山あった様だ。それはとても良いのだが、合否の結果を気にする素振りはほぼない。このあっけらかんとした所も良かったと思う。合格したことを伝えると、テンションを少しだけ上げて「うそー！ やったー！ 慶應生だ」。こうして私たちの戦いは終わりを迎えた。
　折しも１月、私が大ファンであるイチローさんが大リーグの殿堂入りを果たした。選出の際の記者の投票が満票に一票足りなかったことについて、「足りないからこそ人は努力できるのだから、むしろ良かった」との、いかにもイチローさんらしいコメント。私は、早実の不合格と、このエピソードを重ねる。これで良かったのだ。足りなかったところを埋める為、また努力すれば良いのだから。

　入室から２年間、ご指導下さったサピックスの皆様、そして共に戦ってくれた娘と妻に感謝します。本当にありがとうございました。