受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

最新中学入試情報

2025年度中学受験  サピックス小学部第36期生/親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 渋谷教育学園渋谷中学校

雨のち晴れ

A.Eさん お子さんの名前 Kさん

 「ないね。帰ろう。」
 2月2日の合格発表、幕が開いてすぐに分かった。息子の受験番号はなかった。逃げるように体育館から出てきた。私達のすぐ近くに朗らかな笑顔の校長先生がいた。私は先生を直視できなかった。また発表の瞬間、叫び声を上げて走り出した少年がいた。私はその少年のことが羨ましくも疎ましかった。「お祝いしようね」と言っている家族連れがいた。私はこれ以上彼らの会話を聞けなかった。
 意気消沈の私達は気がつくと家にいて、 サピックスに電話していた。息子は5日の第3回入試に向けて、4教科全ての先生と話し込んでいた。夕飯時、自分の志望校に通う姉を見て息子は「ずるいなぁ」と何回も言っていた。それを聞いて私は一層切なくなった。
 2月3日、私達は祈るような気持ちで第2回の合格発表を見た。そこには見慣れた受験番号があった。長かった受験生活がやっと終わった。
 息子は第一志望の渋渋に入ることを切望していた。ある男子校の文化祭に行った時のこと。校門をくぐるとがっしりした体格の男子高校生が輪になり拳を上げて雄叫びを上げていた。ぬいぐるみ男子の息子は5分程で学校から出てきてしまった。その足で大好きな渋渋の文化祭を見に行った。「やっぱりここがいい」と言い、購買でグッズを買い込み、帰ってくると家中に学校のポスターを貼り始めた。何故かさぴあから切り取ったサピックスの先生の顔写真まで貼っていた。こんなに熱い想いがあるなら、成績も上がっていくはずだと私達は信じていた。
 しかし、秋頃から息子の成績はずるずると落ちて行った。ケアレスミスをしたから今回は悪かっただけとテストの度に思い込もうとしたが、看過できない状況になってきた。合格力判定SOの試験会場に迎えに行くと、息子はいつも暗い顔をして開口一番「ボロ」と言っていた。ボロボロの意味である。合格力判定SOの結果が出る日の午後一時が憂鬱でしょうがなかった。授業内の点数も悪かったのか、帰ってくると毎回「(クラス)落ちたな」と言っていた。聞いているだけで辛かった。最後のマンスリーではブロック落ちどころか6コースも落ちてしまい、底のない沼に沈み込んでいくような思いだった。
 そんな息子を救ってくれたのはサピックスの先生だった。秋以降、授業後はほぼ毎回質問教室に行き、自分一人で理解できない問題は全て教えてもらっていた。巷ではサピックスはドライな塾という人もいるそうだが、日本一温かい塾だと私は思っている。「求めよ、さらば与えられん」ではないが、自ら聞きに行けば何でも教えてくれる。息子は直前期にやるべきことを細かく指導してもらい、それらをこなすことで何とか合格できたのだと思う。
 4年間を通して熱い想いがあればどん底からも這い上がれること、サピックスの先生方もしっかり応えてくれることを知った。
 2月3日、前日の雨は上がっていた。

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